コンプライアンス(コンプラ)とは? 意味と使い方と違反事例と遵守対策

コンプライアンス

コンプライアンスとは、企業が、法令や社会的規範、企業倫理に従った行動を心がけることを意味するビジネス用語です。

英語では「compliance」と表記し、「企業コンプライアンス」や「ビジネスコンプライアンス」とも呼ばれます。省略して「コンプラ」と呼ぶこともあります。

今回は、その「コンプライアンス」について、ビジネスシーンにおける位置づけから、具体的な違反事例、社員として気をつけるべきことなどを、ご紹介していきたいと思います。

ビジネスシーンにおけるコンプライアンス

企業の目的は利益の追求です。

そして、往々にして、法令や社会的規範を逸脱した方が、簡単に利益を手にすることができるため、今日も多くの企業が法令や社会的規範を無視した傍若無人な経営に手を染めています。

しかし、そのような企業の不正行為は、短期的に企業単体の利益になることはあっても、長期的には消費者や社会全体の不利益へとつながってしまいます。

そのため、現在のビジネスシーンにおいては、企業が、法令や社会的規範、企業倫理に従った行動を心がけるコンプライアンスを遵守することが、強く求められています。

なお、法令を守るのは当たり前という意見もあるかと思いますが、法令を守っていない企業は驚くほど多く存在しています。特に、社員の働き方などを規定している労働基準法を完全に遵守している企業がどれほどあるのか、甚だ疑問です。

コンプライアンスに関連したビジネス用語

コンプライアンスに近しい概念として、「CSR」という考え方があります。

CSRとは

英語の「Corporate Social Responsibility」を省略した言葉で、「企業の社会的責任」と訳されます。企業が、利益を追求するのみでなく、自社の組織的な活動が社会に与える影響に責任を持ち、全てのステークホルダーからの要求に適切に応えることを意味します。

また、企業が、利益を追求しながら、コンプライアンスを遵守していくための仕組みや考え方として、「コーポレートガバナンス」や「サステナビリティ」という言葉もあるので、合わせて押さえておくことをお勧めします。

コーポレートガバナンスとは

「企業統治」と訳されます。経営層が利己的な決定を行わないように、監視、統制の仕組みを構築し、ステークホルダーの利害を考えた経営を目指すことを意味します。企業の不正行為を防止し、その競争力と収益力の向上を持続的なものとすることを主な目的としています。英語の「corporate governance」をそのまま使ったカタカナ語です。

>>「コーポレートガバナンス」の詳しい説明はこちら

サステナビリティとは

「持続可能性」と訳されます。企業においては、利益を上げながら、持続的に顧客に商品やサービスを提供できる状態を保ち続けることを意味します。また、利益を追求するのみでなく、環境保全や社会的貢献など、企業の社会的責任(CSR)を果たすことで、将来に渡り事業を持続していくことができるという考え方である「コーポレート・サステナビリティ」を省略した言葉としても使われます。英語の「sustainability」をそのまま使ったカタカナ語です。

様々なコンプライアンス違反事例

それでは、具体的にどのような行為がコンプライアンス違反とされているのでしょうか。あくまで一例ですが、見ていきたいと思います。

ポイントは、法令違反だけではなく、社会通念上、問題があると認識される行為も含まれる点です。

  • 粉飾決算
    不正経理により、経営状態を実態よりも良く見せることで、資金集めなどに支障が出ないようにする企業は後を絶ちません。違法行為ですが、違反した企業がそこまで大きな制裁を受けていないこともあり、今後も当たり前のように行われることでしょう。
  • 脱税
    あらゆる手を使い、税金の支払いを逃れる企業は後を絶ちません。合法の節税対策と違法の脱税の境目にあいまいな部分があることや、露見しても、多めのお金を支払うだけで済むことが多いため、今後も当たり前のように行われることでしょう。
  • 個人情報流出
    個人情報保護法が整備され、建前上は各企業が個人情報を適切かつ慎重に扱っていることになっていますが、実態はそのようになってはいません。個人情報が、誰でも見られる場所に、パスワードのかかっていないExcelファイルで保管されていることなどめずらしくありません。流出していないのは、ただ単に流出させる気がある人間がいないだけという職場も多いのではないでしょうか。
  • 食品の産地偽装
    食品は、産地ごとに価格が大きく異なってきます。しかも、消費者は、産地ごとの味の違いなど基本的にはわかりません。そのため、食品の産地偽装は、手軽に行える利益増大策として、一世を風靡しましたが、昨今、ようやく是正されつつあります。
  • 建物の耐震基準擬装
    建材を安く済ませるためなどの理由で、多くの建物で行われていることでしょう。一時期大きな話題になりましたが、発覚していないものもまだ数多くあるのではないでしょうか。直接的に人の命にかかわる上に、発覚した際に企業が被る損害額もたいへん大きなものとなります。
  • 虚偽広告
    巷で、いまだに多く氾濫しているコンプライアンス違反です。特に、健康増進や資産増大をうたった虚偽広告が絶えることはありません。SNS上などでは、口コミでの評価を意図的に操作しようとするステルスマーケティングも流行っています。しばらく是正されないと思われるため、消費者側が受け取る情報をきちんと精査し、自衛する必要があります。
  • 過労死
    従業員が過労死するということは、企業の従業員に対する明らかな安全配慮義務違反です。労働時間が法令で定められた基準に沿っていたのかなど、厳しく追及されることでしょう。ただし、厳しく追及されるだけで、基本的に会社が潰れることなどはなく、これからも会社は従業員を不当に酷使し続け、利益を追求し続けることでしょう。
  • 各種ハラスメント
    パワハラやセクハラ、マタハラ、パタハラなど、様々なハラスメントが野放しにされている会社も、社会的規範に照らし合わせて、コンプライアンス違反との指摘を受けることでしょう。会社は、従業員の人格などが不当に貶められることがないように、職場環境を整える必要があります。
  • 環境汚染
    昨今では、企業による経済活動が、環境に悪影響を与えていないか、厳しい目が向けられるようになりました。そのため、原材料費が多少高くついても、環境に優しい会社アピールを行い、消費者に選んでもらおうとする企業も増えてきています。
  • 反社会的勢力との取引
    取引先を精査しないで仕事をしていたら、そこがたまたま反社会的勢力と関係があったなどということがあるかもしれません。担当者がその事実を知らなかったとしても、昨今の社会情報は、企業の責任の追及することでしょう。

法令も、倫理観や道徳観も、時代によって変わるものです。どのような行動がコンプライアンス違反に当たるかは、今後も少しずつ変化していくことでしょう。

コンプライアンス違反のデメリット

企業が、コンプライアンス違反を犯した場合のデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 刑事罰
  • 民事訴訟による損害賠償請求
  • 信用の失墜、ブランドイメージの毀損

場合によっては、経営を左右する事態になりかねません。

一度、コンプライアンス違反を前提としたビジネスモデルで走り始めた企業が立ち止まり、モデルを構築し直すはとても難しいものです。始めから、コンプライアンスを遵守する形で利益を上げるビジネスモデルを構築する姿勢が必要です。

会社のコンプライアンス違反対策

コンプライアンス違反対策としては、就業規則や社内ルールにおいて、コンプライアンスを遵守するように規定し、つど従業員に研修を行い、周知を行うのが一般的です。

会社の中には、コンプライアンスが遵守されているかを厳しく監視し、組織を統率する役職として、チーフ・コンプライアンス・オフィサー(CCO)を置く会社も出てきています。

また、不正や各種ハラスメントなどを事前に検知したり、発生してしまっても早めに是正できるように、内部通報制度を整え、専門部署で対処できるようにする会社が増えています。

人間は過ちを犯す生き物です。経営陣が、コンプライアンスを遵守する気があるのならば、組織として、コンプライアンス違反を是正できる体制を構築しておく必要があるでしょう。

社員が気をつけるべきこと

コンプライアンスの遵守は、経営陣だけの問題ではありません。現場の社員の日々の行動の積み重ねが、会社のコンプライアンスを形作っています。

個人情報の扱いは適切に行っているでしょうか。ハラスメントは行っていないでしょうか。取引先は反社会的勢力ではないでしょうか。

基本的には、就業規則や社内ルールを守っていれば問題はありません。しかし、軽い気持ちで、少しのルール違反を行った際に、それが会社全体の大きな問題へと発展しかねないのがコンプライアンス違反なのです。

自身が担当する仕事の一つひとつが、会社を代表して行っているということを自覚して、日々の業務に取り組むことをお勧めします。

コンプライアンスの使い方、例文

最後に、「コンプライアンス」の使い方、例文をご紹介します。

新任管理職を対象に、コンプライアンス研修を行った。
コンプライアンス違反を撲滅するために、内部通報制度を整えた。
コンプライアンス意識のかけらもないブラック企業に入社してしまった。
うちではコンプライアンスに反してでも売り上げ目標を達成しなければならない。
発注先の選定について、会社のコンプラ部門から指摘を受けた。

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