控除とは? 意味と所得控除と税額控除の違い、損をしないための注意点

確定申告のイメージ

控除(こうじょ)とは、あるものから一定の金額や数量を差し引くという意味です。ビジネスで使う場合には、納税額を減らすための制度という意味合いをもっており、所得税や法人税、消費税、相続税など様々な税金の申告で適用されています。

税金に関する控除は非常に多くの種類がありますが、大きく分けると課税対象になる所得金額を減らす所得控除と、納税額そのものを減らすことができる税額控除の2種類です。

こちらでは、それぞれの控除の概要や確定申告における具体例を見ていきます。

所得控除とは

所得税の確定申告では、課税対象となる所得額に、その額に応じた税率をかけることで納税額を算出します。所得控除とは、条件に応じて、もとの所得額から一定の金額を差し引いた上で、納税額を算出する制度です。

年収の額が同じ人であっても、所得控除の適用額によっては、節税できる金額は変化し、最終的な納税額が異なってきます。逆に、所得控除の適用額が同じであっても、もとの年収の額が異なれば、納税額が異なってきます。

ただし、控除は申告をしなければ認められません。本来納める必要のない税金を納付することがないように、要件を確認して正しく申告することが重要です。法改正などによって変更になることもありますが、2021年9月時点で所得控除は以下の15種類があります。

  1. 基礎控除
  2. 医療費控除
  3. 生命保険料控除
  4. 地震保険料控除
  5. 社会保険料控除
  6. 配偶者控除
  7. 配偶者特別控除
  8. 扶養控除
  9. 雑損控除
  10. 小規模企業共済等掛金控除
  11. 寄附金控除(ふるさと納税を行った際など)
  12. 障害者控除
  13. 寡婦控除
  14. ひとり親控除
  15. 勤労学生控除

誰でも対象となるのは基礎控除ですが、従来は控除額が一律38万円だったものが、合計所得額によって金額が変わるようになっているため注意が必要です。

また、医療費控除や生命保険料控除、地震保険料控除などは該当するケースが多いため、領収書や控除証明書をきちんと保管しておきましょう。

社会保険料控除は給与所得者ならば天引きされるので無関係ですが、副業をしていて住民税を自分で納付する場合、確定申告する必要があります。

配偶者控除や扶養控除は会社勤めの方は毎年の年末調整でよく目にする言葉だと思いますが、毎年それほど内容が変わるものではありません。

災害や盗難等で被害があったときは、雑損控除の申告を忘れずに行いましょう。

所得控除は、給与所得者でも該当する項目が多いため、年末調整で届け出を忘れた場合などは忘れずに申告しましょう。会社勤めとは別に副業をしている場合にも、青色申告特別控除を利用すれば節税につながりますし、ふるさと納税やiDeCoなどの恩恵も申告しなければ得ることはできません。

税額控除とは

税額控除とは、課税所得金額から算出された所得税額から、控除額を差し引く制度です。所得控除は課税対象となる所得額が減額されるのに対して、税額控除は算出された納税額から直接差し引かれるため、節税効果で言えば税額控除の方が大きいと言えます。

税額控除は、条件を満たすケースが所得控除に比べて少なく、外国で所得が生じた場合や特定の団体へ寄付をした場合、中小企業等が要件を満たした場合などがほとんどですが、住宅借入金等特別控除は増改築も含めて住宅ローンを組んでいるほとんどの人が該当するものです。

住宅ローンに関する控除は、2年目以降は年末調整で手続き可能ですが、初年度のみ自ら確定申告をしなければならないので忘れずに手続きを行いましょう。

また、1981年5月以前の住宅に耐震改修をした場合は住宅耐震改修特別控除が受けられます。その他にも、バリアフリーや省エネ化の改修工事で条件を満たしたものは住宅特定改修特別税額控除の対象となりますし、長期優良住宅の認定を受けた場合や低炭素建築物を新築した場合などは認定住宅新築等特別税額控除が利用可能です。住宅関係は控除対象となるケースが多いので、事前に控除を受けられるか確認して必要書類を用意しておきましょう。

総合課税を選択して株式の配当金や投資信託の収益分配金などがある場合には、配当控除を受けることも可能です。損失が出た場合は申告分離課税を選択すると損益通算ができますが、利益が出たときには配当控除を受けることも検討しましょう。

確定申告で注意すべき点

控除の種類はたくさんありますが、中には内容が似通っていてどの項目に該当するのか判断しづらいものもあります。以下に確定申告で迷いやすい点や控除の具定例を見ていきましょう。

まず、前提として、確定申告書にはAとBがあります。Aは簡易的な内容となっている代わりに、申告できる所得が給与所得、配当所得、公的年金、雑所得、一時所得に限定されています。また、その年の所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納付する予定納税がない人しか使うことができません。会社勤めの人が副収入や控除の申告をしたい場合にはAが使えますが、不動産所得や事業所得がある人は汎用的な内容のBで申告をします。

確定申告書には、収入金額と所得金額の欄があります。収入金額というのは給料ならば天引き前、事業所得等で言えば売上等の金額で、所得金額は天引き及び控除後の金額、経費や青色控除等を差し引いた金額です。所得税は所得金額から各種控除を差し引いたものが課税対象になりますので、間違えないようにしましょう。

節税対策としても、資産運用としても注目されているiDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金控除に該当します。一方、国民年金基金は年金の上乗せに該当するため、社会保険料控除になります。

NISAやつみたてNISAは、掛金が控除対象になるわけではありませんが、本来資産運用で発生する20.315%の税金が非課税となり、一部の例外を除いて確定申告の必要もありません。ただし、損失が出た場合も損益通算ができない点に注意しましょう。