意識が高い人はえらいのか - 引け目を感じたときの考え方

世界に飛び出す人

今や、一般的に使われるようになった「意識が高い」という言葉。仕事で目を見張る活躍をしている人たちに目を向けると、いわゆる「意識が高い人」が目立ちます。

では、誰もがそのように意識が高い人にならなければならないのでしょうか。意識が高い人を見習うことは、社会人として必須なのでしょうか。

今回は、それらの疑問について考えていきたいと思います。

意識が高い人の本物と偽物

そもそも、「意識が高い」というのは、具体的にはどのようなことを言うのでしょうか。ここでは、以下を兼ね備えている人のことを、「意識が高い人」として話を進めます。

  • 自己研鑽が苦ではない
  • 常に高い目標や志を持っている
  • ためらうことなく行動に移せる
  • 自分に自信を持っている
  • 誰もが努力次第で「意識が高い人」になれると思っている

一方で、自己顕示欲のために表面だけ意識が高い人を模倣する人たちがいます。「意識が高い」が悪い意味で使われるときは、そのような表面だけ繕った偽物の滑稽な姿を馬鹿にしているときか、本物の意識の高い人に対しての劣等感から、レッテル張りをして無理やりにでも相手を貶めようとしているときに限ります。

表面だけ真似ていても、周りから見たらすぐにわかってしまうものです。無理に自分を偽ることは、逆に自分の評価を下げてしまうことにつながるでしょう。決してお勧めできる行為ではありません。

プライベートな時間に勉強をしないといけないのか

意識が高い人は、常に自己研鑽に努めます。それは休日などのプライベートな時間も例外ではありません。

余暇時間にも仕事の勉強を行い、スキルを磨けば、その時間に努力を行っていない人たちに比べて、努力した分だけ差をつけることができるのは、当たり前のことではあります。他の人との差を埋めたい、差をつけたいと思うのであれば、余暇時間に勉強をしたら良いでしょう。

しかし、余暇時間の使い方は、各人が自由に決めるべきことで、強制されてはなりません。会社との関係で言えば、仕事に関わることをするのは、労働契約を結んでいる業務時間内だけで問題はありません。

また、努力をすることに対して、精神的苦痛や抵抗を感じる度合いは人それぞれです。その苦痛が大きい場合は、それが自分の実力だと受け入れ、割り切った上で、余暇時間には何もせず、心穏やかに過ごすのも賢い選択だと言えるでしょう。努力もできないのにただ焦り、他人の過ごし方に対して引け目を感じるのは、愚かな選択です。

意識が高い人は、そもそも自己研鑽に苦痛を感じないか、逆に楽しいと感じるという特性を持った人たちです。自分自身の特性を理解し、ときに諦め、受け入れることが、人生の幸せにつながることもあります。

人脈を広げないといけないのか

意識が高い人の特徴として、豊富な人脈を形成していくことが挙げられます。人脈を広げることは、意識が高い人にとって、様々なメリットがあるからです。

人脈を広げるメリットとしては、以下のようなものがあります。

  • 自己研鑽の助けになる
    自己研鑽の仲間がいることは、お互いを高め合う相乗効果をもたらします。また、有用なセミナーを紹介し合ったり、つながりを広げていくことで、業界の第一人者と知り合う可能性も生まれます。
  • 仕事の獲得につながる
    仕事を依頼する際は、知らない人に依頼するよりも、知っている人に依頼する方が安心できるものです。サービスや商品の品質がそれほど変わらなければ、個人的に親しい相手に発注するのが人間というものです。
  • キャリアアップの助けになる
    知らない会社へ転職するよりも、知っている人から誘われる転職の方がお互い安心感があります。自身の経歴やスキル、志向を知っている他社の人からの引き抜きは、キャリアアップのチャンスとなります。
  • 起業時の助けになる
    起業時には様々な知見が必要となり、自分の知識やスキルだけではまかないきれないものです。知見の提供だけではなく、共に起業してくれる仲間がいれば、スタートアップははかどることでしょう。

魅力的なメリットの数々ですが、平凡に会社勤めをしていく上では、必須なものとも言えません。可能であれば、人脈を広げることを意識して日々を過ごすことをお勧めしますが、それがストレスとなる場合には、通常業務に必要な、最低限度の人間関係の維持に努めれば十分でしょう。

高い目標や志を持たないといけないのか

一般的に、「起業して社会に革新をもたらす」、「事業を通じて人々の生活を豊かにする」など、社会的な貢献が大きい目標は“高い”目標だと言われます。しかし、本来、目標や志に高いも低いもありません。

「うまいこと不労所得で一生寝て過ごしたい」、「老後の資金を確保して早々にリタイアしたい」などの目標を貶める権利は誰にもありません。自分の目標は、自分が幸せになれると思うものを、それぞれが考えて設定すれば良いのです。

一方で、他者からの評価は、“高い”目標や志を持っている人に傾きます。採用面接の場や、起業時に銀行から融資を受ける際などには、その評価の差が、結果に大きく響くことでしょう。

実際に、“高い”目標や志を持っている必要はありませんが、実利を考えるならば、対外用に、他者に評価されやすい目標や志を用意しておくと良いでしょう。

新しいビジネス用語を使わないといけないのか

これはどちらかと言えば、意識が高い人を装った偽物に多い行動ですが、「私もその意見にはアグリーですね」などと、その職場で一般的に使われていないビジネス用語(特に横文字)を唐突に使う人を目にすることがあります。

アグリーとは? 意味と使い方とビジネスシーンで用いる際の注意点
アグリーとは、「同意する」、「賛成する」を意味するビジネス用語です。英語の「agree」をそのまま使用しているカタカナ語になります。今回は、実際に使う際の注意点や例文、コンセンサスとの違いなどについてご紹介します。

これは主に、「自分は勉強熱心で、新しいビジネス用語も知っているし、当たり前のように使えるんだぞ」という他の人よりも自分が優れていることを、目に見える形で示したい気持ちの表れです。いわゆるマウントを取ろうとしての行動です。

本当に仕事ができる人は、相手の年齢、立場、職種などを考慮し、相手に理解できる言葉を選択して発言を行います。決して、自分本位な言葉のチョイスはしないように気をつけましょう。

立派な人物に見られないといけないのか

これもどちらかと言えば、意識が高い人を装った偽物に多い行動ですが、自分の意識の高さをこれ見よがしにアピールしてくる人がいます。

仕事に対して前向きである、一生懸命に取り組む気があるということを、周囲に伝わるように見せるのは、社内で評価されるために大切なことです。

しかし、そのアピールが必要以上なものとなると、逆効果となりかねません。日本社会は、周りから突出したものを叩く傾向にあります。無駄な損失を被らないためにも、自分が本当に突出した逸材でもないかぎり、アピールは空気を読んで行うことが望ましいでしょう。

意識が高い人はえらいのか

意識が高い人は、ただ単に、今まで語ってきた特性、個性を持っている人であるというだけです。そして、その性質が社会で成功を収めるのに向いているというだけのことです。

それを“えらい”と表現し、あこがれ、そのようになろうと努力することは、称賛されるべきことだと思います。しかし、そのような性質を全く持っていない人間が、意識が高い人に引け目を感じ、そうならなければならないと自分を追いつめる行為は、自身を不幸にすることになりかねず、お勧めできません。

“できる”人は、“できない”人ができないことを理解できず、がんばり続けることを強要することがあります。しかし、“できる”人が当たり前にできることであっても、“できない”人にはできないことはできないのです。

人生の幸せにおいて、社会で成功することは必要条件ではありません。自身の性質に合わせた幸せのあり方を見つけていきましょう。