インセンティブとは、自社の従業員のやる気を喚起させ、目標達成意欲を向上させる刺激、報酬のことを意味します。特定の条件を達成することで、報奨金や景品、賞などを与えるのが一般的です。英語の「incentive」をそのまま使ったカタカナ語です。
また、販売促進施策として用いられる、消費者の購買意欲を向上させるための景品やおまけなどの刺激についても、インセンティブという言葉が使われます。
ビジネスシーンでインセンティブという場合には、あらかじめ定められている目標を達成した場合に得られるボーナスなどの報奨金を指すケースがほとんどです。
そのような報奨金は、毎月支払われる給与に上乗せされて支払われることが多いため、従業員としてはより多くの収入を得ようとして一生懸命働くようになるという効果が期待できます。
インセンティブという言葉は、雇用条件の中で目にする機会もあり、ビジネスパーソンとして働く上では、ぜひとも知っておきたい言葉ですので、以下ではその意味や類似する用語などをご紹介します。
インセンティブの2タイプ
報奨金という意味でのインセンティブは、大きく分けて、獲得した契約の件数やその金額をベースに支払われるタイプと、特定の目標を達成した場合に支払われるタイプの2種類があります。
具体例を挙げると、「契約を1件獲得したら1万円の報奨金がもらえる」というのが前者のタイプ、「年間で100件以上契約を獲得したら100万円の報奨金がもらえる」というのが後者のタイプになります。企業によって採用しているインセンティブのタイプは様々ですので、就職や転職の際にはその内容をしっかり確認しておくようにしましょう。
なお、インセンティブは、「報奨金」のほかに、「業績手当」や「出来高給」、「ボーナス」などと呼ばれる場合があります。これらは概ね同じものを指しているので、意味の違いをそこまで深く意識しておく必要はないでしょう。
歩合制とインセンティブ制度の違い
インセンティブ制度と類似している用語として、歩合制というものがあります。
歩合制は、達成した成果に応じて報酬が得られるという制度ですので、基本的にはインセンティブ制度と同じ意味で使われると考えておいてよいでしょう。
「固定給+インセンティブ」or「完全歩合制」
インセンティブ制度や歩合制という場合には、主に2つの種類があるという点を頭に入れておく必要があります。その2つというのは、固定給に加えてインセンティブが支払われるという制度と、固定給がなくインセンティブのみが支払われる完全歩合制(フルコミッション)という制度です。
前者の制度については、固定給とインセンティブの比率は企業によって異なるため、実力次第でより多く稼ぎたいという方はインセンティブの比率が高い企業、逆に安定した収入を得たいという方はインセンティブの比率が低い企業を選ぶようにするのがおすすめです。
一方、後者の制度は、労働基準法に基づいて雇用契約を締結している従業員に適用することはできないので、基本的にはフリーランスで働く個人事業主などと委任契約を結ぶ場合にのみ利用できるという点に注意しなければなりません。
インセンティブ制度のメリットとデメリット
インセンティブのある企業で働くということには、メリットとデメリットの両面があります。
まず、メリットとして挙げられるのは、インセンティブがある企業で働けば、年齢に関係なく実力次第で高い収入を得られるようになるという点です。
また、仕事のパフォーマンスが収入に直結するので、納得感がある評価を得やすいというメリットもあるでしょう。自分の力量に自信があって、若いうちからバリバリ働いてたくさん稼ぎたいというような方は、このようなインセンティブ制度のメリットを享受しやすいと言えます。
一方、デメリットとしては、収入が不安定になりやすいという点が挙げられます。成績が良ければ収入は増えますが、逆に成績がすぐれないと途端に収入は少なくなるので、毎月ある程度の収入を安定的に得たいと考えている方には、インセンティブ制度はあまり適さないかもしれません。
また、各従業員が何とかして成績を上げようとして、顧客を取り合ったりしやすくなるため、職場の雰囲気が殺伐としたものになりやすいという点もデメリットです。
インセンティブ制度に適した職種
インセンティブ制度には、適している職種とそうでない職種があります。インセンティブ制度が適しているのは、営業やコールセンターのように仕事の成果が数字にしやすい職種です。他に、ブライダルコーディネーターやインフラエンジニアなどもインセンティブ制度に馴染みやすい職種であるといえるでしょう。
一方、法務やコンプライアンスのような職種は、仕事の成果が必ずしも定量的に示せるわけではないので、インセンティブ制度にはあまり適していません。例えば、発見した社内ルールの違反件数をもとにしたインセンティブをコンプライアンスに導入しようとすると、何とかして違反を見つけ出そうとするあまりに社内が険悪な雰囲気になってしまう恐れがあります。その他にも、財務や人事、経営企画といったバックオフィス系の職種もインセンティブ制度には向きません。
自分が希望する職種がインセンティブに適しているかどうかはあらかじめ把握しておいた方がよいでしょう。