新田義史(ヒナまつり)に学ぶ働き方 - 今どきの反社と企業の関係

この記事は、マンガ『ヒナまつり』に関する重大なネタバレを含みます。

『ヒナまつり』は、大武政夫氏により『ハルタ(連載開始時はFellows!)』上で2010年6月から2020年7月まで連載され、アニメ化もされた人気マンガです。

作品を未読の方は、以下をご参照いただき、ご興味のある方はぜひお読みください。
(※書籍の画像やタイトルをクリックすることで、Amazonのサイトに移動します。)

ヒナまつり 1 (ハルタコミックス)/大武 政夫芦川組の若手ホープ・新田の部屋に落ちてきた奇妙な楕円形の物体。それが全ての始まりだった!物体のなかに居たのは、無表情な少女・ヒナ。強力な念動力で新田を脅し、ヒナは新田家に住みつくことに。かくしてヤクザとサイキック少女の危険な共同生活が始まった!漫画誌Fellows!にて、読切から連載化、そして一躍人気作に。読者の熱い支持が押し上げたネオ・ユニバース、遂に単行本刊行!

ヤクザの新田義史(にったよしふみ)氏とサイキック少女のヒナ氏の日常を、良質なボケとツッコミでつづり続けた名作です。

新田義史氏は、その『ヒナまつり』の主人公であり、もう一人の主人公であるヒナ氏の親代わりとなる人物です。

今回は、そんなヤクザで反社会的勢力(反社)である新田義史氏による会社経営の様子をとおして、今どきの反社会的勢力と企業の関係を考えていきたいと思います。

新田義史氏のプロフィール

新田義史氏は、王道会傘下の暴力団である芦川組に所属する若手ヤクザです。作中で若頭に出世しています。

職業にふさわしく、金髪オールバックの気合の入った見た目をしています。

新田氏は、娘として面倒を見ているヒナ氏の成長とともに、作中で以下のように年を重ねていきます。

  • 単行本1巻~9巻
    ヒナ氏:中学一年生/新田義史氏:33歳(推定)
  • 単行本9巻~19巻
    ヒナ氏:高校一年生/新田義史氏:36歳(宣伝資料上の記載)
  • 単行本19巻
    ヒナ氏:専門学校生/新田義史氏:39歳(推定)

仕事の面では、貸金業、不動産業、コンサルティング業、飲食業など、様々な事業を社長として手がけており、紆余曲折はありつつも、大きな成功を収めています。ヤクザでありながら通常の企業活動でも収益を上げることができる、いわゆるインテリヤクザです。

趣味は、壺を始めとする美術品の収集です。作中では、集めるだけでは飽き足らず、陶芸用の工房を構え、自ら壺の制作をするまでになりました。最終的には、壺の声が聞こえるなど、趣味の範疇を逸脱する様子が見てとれます。

家事全般が得意で、円満な近所付き合いも行うこともでき、常に家族のことを気にかける面倒見の良いヤクザです。

新田義史氏が反社会的勢力になった理由

新田義史氏は、作中でのテレビの取材に対して、ヤクザになった理由を以下のように語っています。

聞き手:新田さんはどうしてヤクザになったんですか?

新田氏:大学生の時に会社を立ち上げたくてバイトしてたんだが、そこがヤクザとつながりあってね

いろいろ関わってくうちに、ヤクザになってやったほうが儲かるんじゃねぇかって思ってね

聞き手:なるほど金儲けのため と

新田氏:まぁ金儲けになるけど、金が全て…ってわけじゃねぇ

義理も人情もあるさ、ウチは親父が早くに亡くなってたから何とかしたくてな

(出典:大武政夫『ヒナまつり』ハルタコミックス 6巻)

元々、反社会的勢力になろうとしてなったわけではなく、自らが進めたい事業を効率的に推進するために、実益を考えて、ヤクザになったことが語られています。

新田義史氏にとってヤクザとは、目的を達成するための手段に過ぎなかったのです。

社会的な善も悪もなく、目的の効率的な達成のためにアクセルを踏み込むその姿勢には、一種の格好良さが存在しています。真似してはいけません。

新田義史氏による会社経営

そんなクレバーかつクレイジーに効率を追い求める新田義史氏は、前述のとおり、いくつもの会社を経営し、成功に導いています。

10代で総資産5,000億円を超える作中屈指の傑物である三嶋CEOも味方につけ、短期間で事業規模を倍にしたとの記述も見受けられます。

しかし、そんな新田義史氏も、反社会的勢力の一員であるがために、取引先に多大な迷惑をかけてしまうことになります。

取引先の黒い交際相手として週刊誌に掲載されてしまうのです。

このときは、新田ver.5.0氏のおかげでなんとかピンチを切り抜けた新田氏ですが、会社経営において、反社会的勢力に所属していることで得られるメリットなど、とうの昔になくなっていることに、賢い彼ならば気がついていることでしょう。

今どきの反社と企業の関係

拒否するビジネスパーソン

新田義史氏が事業の効率的な推進のためにヤクザになる道を選んだ時代とは異なり、現在の社会は、企業が反社会的勢力といかなる関係を持つことも許容していません。時代は変わったのです。

2007年に政府が策定した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」では、企業とその従業員を反社会的勢力による被害から守るため、反社会的勢力の資金源を断つために、企業に対して反社会的勢力との「取引を含めた一切の関係遮断」など、様々な対応を求めています。

この指針やそれに続く各都道府県の暴力団排除条例に基づいて、多くの企業が約款や契約の中に「反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)」を盛り込むこととなり、世論も企業と反社会的勢力の関係に厳しい目を向けるようになっていきました。

2019年の閣議決定で反社会的勢力を「限定的かつ統一的に定義することは困難である」との見解が示されるなど、企業としては実務的な対応が難しい状況ながら、企業コンプライアンスを重視する各企業の努力によって、指針は社会に浸透したと言えるでしょう。

今や、反社会的勢力の構成員は銀行口座を作ることすらままなりません。満足のいく会社運営など夢のまた夢です。

新田義史氏のこれから

会社運営上の実益を考えてヤクザになった新田義史氏であれば、社会情勢を鑑みて、ヤクザから足を洗い、会社をより発展させる道を選んでも不思議ではありません。

しかし、一方で、新田義史氏は知らない子どもを預かって育てるほどの人情家です。

一度関係を持ってしまった仲間を切り捨てることはできず、これからも、折り合いをつけながら、ヤクザと企業経営者の二足の草鞋を続けることになるのは想像に難くありません。

参考マンガ(Amazonリンク)
ヒナまつり 全19巻セット