上司に心を開かない部下たち - 上司のお客様化とは? どう防ぐ?

上司と部下の間の亀裂

本来、同じ会社に所属する人たちは、同じ目的に向かって働く仲間であり、協力し合う関係にあります。

しかし、実際は、同じ会社の中でも、「同じ目的に向かって働く仲間」と「気を使って接しなければならない“お客様”」がいるものです。

現場の人間からすると、相手の役職が高くなればなるほど、相談相手ではなく提案相手となり、本音は隠して建前で臨む、お客様扱いが進む傾向にあるのではないでしょうか。

逆に、上司の立場からすれば、部下には、不都合な真実が含まれていようと、同じ職場の仲間として、常に本当のことを報告、連絡、相談してもらいたいものです。建前のコミュニケーションにより、不都合な真実が隠されるようなことが続けば、会社組織にとっては大きなリスクとなることでしょう。

そこで今回は、なぜ同じ会社内で仲間意識がなくなりお客様化が進むのかや、上司が部下に仲間だと思ってもらうために必要なことなどについて、ご紹介できればと思います。

目次

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職場で頻発する社内の人間のお客様化

社内の人間が仲間ではなく、お客様化する現象について、少し詳しく説明できればと思います。

例えば、とある施策を実施する予算を得るために、上司に相談が必要だとします。
このときに…

  • 上司が仲間であれば、部下は、施策のメリットだけではなく、デメリットや懸念点も正直に伝え、よりよい施策にするための相談をした上で、予算の確保についても相談することでしょう。
  • 上司がお客様化していれば、部下は、施策のメリット部分を強調し、デメリットや懸念点は隠すか、矮小化して伝え、予算を確保することを優先してプレゼンテーションに努めることでしょう。

例えば、とある失敗をしてしまい、上司に報告が必要だとします。
このときに…

  • 上司が仲間であれば、部下は、自分の非や反省点を正直に話し、必要な事後対応や再発防止策について相談することでしょう。
  • 上司がお客様化していれば、部下は、自分の非を隠すか、矮小化して状況を伝え、自分の立場が可能なかぎり悪くならないように弁明に努めることでしょう。

どちらの例も、相手を信頼できているか否か、すべてを正直に話しても建設的な話し合いが望めるか否かが重要な分かれ目となっています。

上司以外にも、異なる部署の人に業務を依頼する場合にも、仲間意識が希薄となりお客様化が発生する傾向にあります。また、逆に、信頼関係が築けた顧客とは、社外の人でありながら仲間として正直で建設的な関係性が築けることでしょう。

仲間として一緒に仕事ができる相手が多いほど、仕事はスムーズに進み、パフォーマンスも上がると言えます。

社内の人間のお客様化の原因と対策

それでは、社内の人間のお客様化はなぜ起こるのでしょうか。主な原因としては、以下の3点が挙げられます。

  1. どんな相手かわからないことによるお客様化
  2. 対話が成り立たないことによるお客様化
  3. 相談しても得るものがないことによるお客様化

それぞれについて、詳しい内容とその対策を見ていきたいと思います。

1. どんな相手かわからないことによるお客様化

社内の人間であっても、相手がまだどのような人なのかわからない段階では、探り探りの状態になってしまうのも無理はありません。

どのようなことを不快だと感じるのか、優しい人なのか怖い人なのか、わからない以上は慎重にお客様扱いから始めるのはむしろ賢い選択だと言えます。

このケースでは、コミュニケーションを重ねていくうちに、自然と仲間意識が芽生えていき、お客様扱いは解消されることがほとんどです。

しかし、常日頃から周りの人に優しく接し、話しかけやすい雰囲気作りをしておくことで、ファーストコンタクトからお客様扱いされないで済む可能性は高まります。どのようなときも、人当たりのよさは大切です。

なお、コミュニケーションを重ねていくうちに、これからご紹介する「対話が成り立たない相手」や「相談しても得るものがない相手」だと認識されてしまうと、お客様扱いが固定化されてしまうことになります。

2. 対話が成り立たないことによるお客様化

社内の人間であっても、対話が成り立たない相手だと判断されてしまった段階で、共に仕事を進める仲間ではなく、仕事を前に進めるためにクリアすべき障害だと認識されてしまいます。

例えば、部下が上司に仕事の相談をした際に、上司がそもそも話をまともに聞こうとしない、聞いてくれたとしても頭ごなしに否定してくる、論理的な返答をせずに感情論で反論してくるなどのことがあると、部下は「この上司は、まともに対話が成り立たない。もう最低限のコミュニケーションで承諾だけ得るようにしよう」と考えるようになるのも自然な流れです。

相談を持ちかけられたら、相手の話をきちんと聞く姿勢を見せる、否定したいときは頭ごなしに否定せずに建設的な対案を出す、自分の好き嫌いや感情論では話さないといった点に気をつけることで、お客様扱いを避け、仲間として一緒に仕事ができる可能性が高まることでしょう。

当たり前の事柄のようにも思えますが、実際にできている人は少ないのではないでしょうか。特に、仕事が忙しい状態が続き、気持ちに余裕がなかったりすると、相談を持ちかけられても邪険に扱ってしまいがちです。気持ちに余裕がないときこそ、気をつけていきたいものです。

3. 相談しても得るものがないことによるお客様化

相手の話をきちんと聞く姿勢を見せ、頭ごなしに否定せず、論理的に対話しているにもかかわらず、お客様扱いされてしまう人がいます。なぜでしょうか。

意外とよくあるケースなのですが、例えば、部下が上司に仕事の相談をした際に、上司が親身に相談に乗ってくれ、部下も始めは上司を仕事を共に進める仲間として認識し、頻繁にコミュニケーションを図るようにしていたとします。

しかし、上司に物事を解決する能力が足りていなかった場合、部下がいくら上司に相談をしても、話を聞いてくれるだけで、有効なアドバイスや必要な決断はいつまで経ってもしてくれません。いつしか、部下は「この人に相談しても得られるものはないし、時間の無駄だな。もう最低限のコミュニケーションで承諾だけ得るようにしよう」と考えるようになることでしょう。

上司は、話をきちんと聞いてくれるいい人であるだけではなく、その役割に応じた実力を持っていなければ、途端に部下からお客様扱いされてしまう可能性があるのです。

相談を受ける役割を担っている以上は、その業務関連の知見をきちんと保有し、有効なアドバイスや必要な決断を行えるように日頃から鍛えておく必要があると言えるでしょう。

部下に心を開いてもらえない上司の5つの特徴

社内の人間のお客様化については、上司にかぎらない話ではありますが、やはり上司がお客様化してしまうケースが多く見受けられます。

最後に、ここまでご紹介してきた内容をもとに、部下にお客様扱いされてしまう、部下に心を開いてもらえない上司の特徴をまとめてみたいと思います。

  1. 話しかけにくい雰囲気を身にまとっている
  2. 部下の話をまともに聞こうとしない
  3. 部下の話を頭ごなしに否定する
  4. 自分の好き嫌いや感情論で話をする
  5. 相談に応じるだけの能力、実力がない

以上の内容を反面教師として、部下に心を開いてもらえる上司を目指しましょう。