人間は完璧ではありません。
誰しもが、大なり小なり失敗を積み重ねながら日々を過ごしています。
そんな失敗の中でも、仕事における失敗は、否が応でも他者からの評価に晒され、ときには厳しい叱責を受けることもある、非常に強い心理的負荷(ストレス)と密接な関係にある出来事です。
仕事で失敗をすることで、「なんでこんなに自分は仕事ができないんだろう…」、「もしかして自分はダメなやつなのでは…」などと、自分に自信をなくし、落ち込んでしまう社会人もめずらしくありません。
今回は、そんな仕事でうまくいかなくてつらくなってしまったときの考え方や対処法などについて、ご紹介できればと思います。
仕事で落ち込む人の3タイプ
仕事がうまくいかなくて落ち込んでしまう人を大別すると、以下の3つのタイプにわけることができます。
それぞれのタイプで、必要となる考え方や対処法は大きく異なってくるので、注意が必要です。タイプごとに詳しく見ていきたいと思います。
(上記のそれぞれのタイプをクリックすることで、該当箇所に移動することができます。)
1. 能力は平均的だけど心が弱いときの対処法
能力は平均的で、普通に仕事ができているのに、誰もがするような失敗をいちいち気に病んで、必要以上に落ち込んでしまう人がいます。
このようなタイプの人に必要な考え方や対処法は以下のとおりです。
- 皆も同じように失敗していることを知る
- 落ち込むことにメリットがないことを知る
- 脳のコンディションを整える
それぞれについて見ていきたいと思います。
皆も同じように失敗していることを知る
まず、ごく一部の例外を除き、人間であれば誰しもが失敗をし、そのたびに落ち込んでいるという事実を知っておくことが大切です。
仕事ができそうに見える先輩であっても、いつも飄々としているように見える上司であっても、日々、大なり小なり何かしらの失敗をし、落ち込んでいるものです。
上司などは、さらに上の上司に呼び出され、皆の見えないところで厳しく叱責されていることもめずらしくありません。
意地やプライドから弱みを他者に見せることができない人や、失敗を周りから失敗と思わせないように取り繕うだけの経験値のある人は、表面上は失敗すらしていないように見えるかもしれません。
しかし、その内実は、皆、同じように失敗を繰り返し、同じように落ち込んでいます。
自分自身に対しての評価が過小評価になってしまっている人は驚くほど多くいます。自分だけがダメなやつなのだという考えは、一度捨ててみることをお勧めします。
それでも、自分は他の人に比べて失敗が明らかに多い、周りに比べて仕事ができない気がするという方は、「2. 実際に仕事ができないときの対処法」の項目もご参照ください。
落ち込むことにメリットがないことを知る
また、失敗をした際に、落ち込むことにメリットがないということを知っておくのも大切です。
人間である以上、失敗からは逃れられません。そのため、社会人として重要となるのは、失敗をした際にどのように行動をするのか、どのようにリカバリーをするのかという点です。
まともな上司であれば、部下の失敗は当然発生するものだと織り込んだ上で、部下が失敗したときに、「正直にすばやく報告ができるのか」、「再発防止策を考えることができるのか」など、リカバリー能力を重要な評価ポイントにしています。
落ち込んで業務の能率を落としている場合ではありません。
失敗した際には、無意味に落ち込むのではなく、「反省」を論理的に行い、組織として同じ失敗を繰り返さないように、業務フロー等の改善方法を考えることをお勧めします。
脳のコンディションを整える
落ち込む必要はないと言われても、落ち込むものは落ち込むという方も多いことでしょう。
そのようなときは、脳のコンディションについて意識してみることをお勧めします。
落ち込む、ネガティブな思考から抜け出せない、元気が出ないといった状態は、突きつめれば脳内物質の分泌のバランスに問題があります。
ノルアドレナリンやドーパミン、セロトニンなどの脳内物質のバランスが適切なものとなるように、脳のコンディションを整えられれば、必要以上の落ち込みから解放される可能性があります。
そのためには、以下を心がけることが大切です。
- 睡眠を十分にとる
- 適度な運動をする
- バランスのよい食事をとる
- 太陽の光を浴びるようにする
生活習慣を整えることが、脳のコンディションを整え、心の健康にもつながっていきます。特に、コロナ禍で在宅勤務が続く環境下では、これらのことがおろそかになりがちです。今まで以上に意識する必要があると言えます。
2. 実際に仕事ができないときの対処法
実際に、自分が周りの人と比べて仕事ができないために、自分に自信をなくして落ち込んでしまう人がいます。
このようなタイプの人に必要な考え方や対処法は以下のとおりです。
- 自分の能力を正しく評価する
- 自分のペースで仕事のやり方を改善する
それぞれについて見ていきたいと思います。
自分の能力を正しく評価する
残念ながら人の能力には個人差があり、仕事ができる人がいれば、仕事ができない人もいます。それは当然のことです。
もし、自分が仕事ができない側の人間だった場合、まずはそれを自覚し、認め、自分の能力を正しく評価することが大切だと言えるでしょう。その上で、改善すべき点を一つひとつ改善していけばよいのです。
しかし、それは難しい作業となります。
人間の正しい認識を阻害する認知バイアスの一つに、「ダニング=クルーガー効果」というものがあります。
一言で説明すると、「能力が低い人は、自分自身の能力を過大評価してしまう傾向にある」というものです。これでは、仕事ができない人は、ずっと自分がどのくらい仕事ができないのかを正しく認識することができず、改善のための適切な行動をとることもできません。
自分で正しく評価ができないのであれば、頼るべきは他人の意見です。
なんだか仕事がうまくいかないなと思ったときは、上司や先輩に率直な意見を伺い、得られた情報を素直に受け入れ、自分自身を客観的に見つめ直す材料にすることをお勧めします。
自分のペースで仕事のやり方を改善する
自分自身をある程度正しく評価できたところで、改善に向けて行動をしていきたいと思います。
仕事ができなくて落ち込むのであるならば、仕事ができるようになるのが最も確実な解決方法です。
社会人として基本的なことも含まれますが、以下を意識して仕事に向かうことをお勧めします。
- わからないことをわからないまま放置しない
- 仕事は一つひとつの作業(タスク)に細分化し、期限を設けて管理する
- 失敗したときは、必ず次から失敗しないための具体的な対策を講じる
人間、できることしかできないのですから、あせらず、あわてず、自分のペースで一つひとつできることを行っていきましょう。他人と自分を比べるようなこともいったんお休みするとよいでしょう。
3. 仕事ができなくて心も弱いときの対処法
実際に仕事ができない上に、気にしなくてもよいことをいちいち気にして落ち込んでしまうような、ここまでご紹介してきた2つのタイプの特徴を兼ね備えてしまっている人もいます。
そのような場合は、「1. 能力は平均的だけど心が弱いときの対処法」と「2. 実際に仕事ができないときの対処法」でご紹介している対処法をすべて実践することをお勧めします。
心を楽にするには諦観も必要
ご紹介している対処法を実践し、努力することによって状況が好転することもあります。しかし、努力が報われないことも当たり前にあるのが現実です。
いくら悩んでも仕方がない、残酷な現実に対しては、希望を持たず、あきらめ、ただ現状をあるがまま無心で受け入れることが心の救いになることもあります。
自分を追いつめすぎない範囲でがんばり、もし努力が報われなかったときには、手に入る範囲の幸せを見つけ出し、そこで妥協するのは決して悪いことではありません。
この生きづらい世の中を、少しでも幸福に生き抜くことこそが最優先事項です。