上司が仕事ができない、無能な人物で困った経験がある方も多いのではないでしょうか。
一般的に考えれば、仕事ができる、有能な人物が出世し、管理職として上司に抜擢されるのが健全な組織です。しかし、実際にはそのようになっていない職場が数多く存在しています。いったい、なぜなのでしょうか。
今回は、なぜ仕事ができないのに出世する人物がいるのか、上司が無能なときに具体的にどのように対処したら良いのかについて、考えていきたいと思います。管理職の方は、自身が部下に無能だと思われていないかのチェックにお使いください。
目次
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無能な上司が誕生する5パターン
そもそも、なぜ無能な上司は誕生してしまうのでしょうか。その誕生パターンには、主に以下の5つがあります。
- 実力はないが勤続年数で出世
- 実力はないが評価者との仲の良さで出世
- 実力はないがプレゼン力で出世
- 優秀なプレイヤーだがマネジメント適性がなかった
- 異動で専門外の部署を任された
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
実力はないが勤続年数で出世
出世の基準に、勤続年数や年齢を考慮している日本の企業はいまだに多く存在しています。
順番に出世できることでの労働者の生活の安定や、後輩が上司になった場合のやりにくさへの配慮など、様々な理由によりこのような方針がとられています。
しかし、勤続年数や年齢が能力と結びつくのは、その人物が、日々努力をし、経験を自分の糧にし続けてきた場合に限られます。ただなんとなく日々を過ごしてきた中年は、数年必死に努力した若手に劣ります。
このような出世基準は、実力が伴わない、やる気がない人物が、管理職、上司となる可能性を大いにはらんでいます。
実力はないが評価者との仲の良さで出世
誰を出世させるかを決める評価者も人間です。意識的か無意識的かを問わず、よく知っている人物や、仲の良い人物をえこひいきするのは自然なことです。
その結果、黙々と、むだなく仕事をこなす有能な人物よりも、仕事を二の次にし、評価者にこびへつらい、ごまをすり、ひんぱんに一緒に飲みに行くような人物の方が出世していくことはめずらしくありません。
実力はないがプレゼン力で出世
誰を出世させるかを決める評価者は、評価対象者の仕事の全てを、毎日見ているわけではありません。評価時期にまとめられた報告書や評価シート、評価対象者との面談で決めるのが一般的です。
そのため、現場において全く仕事を行っていなくても、現場で何の成果も上げていなくても、一時的な伝え方や見せ方で、高評価を得ることも不可能ではありません。
それを可能とするのが、自分をより良く見せる力、自分の意見を効果的に伝える力であるプレゼン力です。
社会人の必須スキルの一つだと言えるプレゼン力ですが、その能力だけが秀でており、他の能力が劣っている人物がいる場合、その人物は、実力に見合わない出世を遂げてしまう可能性があります。
優秀なプレイヤーだがマネジメント適性がなかった
実力はあるのに、無能な上司となるパターンもあります。その一つが、プレイヤーとしての能力は高かったが、マネジメントの適性がなかった場合です。
現場の仕事で優秀な成績を収めて、出世をするのは、一見自然なことだと思われます。しかし、現場でプレイヤーとして成果を上げるのに必要な能力と、管理職としてマネジメントを成功させるのに必要な能力は、全く異なるものです。
よくある失敗例として、かつて優秀なプレイヤーだった上司が、部下に自分が行っていたことと一挙手一投足まで同じことをさせ、成果を上げさせようとする指導があります。これは、自分と部下が違う人物であり、能力が異なっていることを理解できていない指導方針だと言わざるをえず、多くの場合、うまく行きません。
部下それぞれの能力や個性を見極め、それぞれに合った指導を行うことが、管理職には必要となります。優秀なプレイヤーが、優秀な上司になるとは限らないのです。
異動などで専門外の部署を任された
実力はあったのに、無能な上司となるパターンとして、異動などで専門外の部署を任された場合があります。
例えば、営業部門で辣腕を振るってきた社員が、IT部門の責任者を突然任された場合、いったい何ができるでしょうか。
経営層としては、IT部門の問題を、別の分野のスペシャリストの視点で改善することを望んでいるのかもしれません。しかし、多くの場合、専門知識が豊富な部下たちにマウントをとられ、やりたいことを何もできない状態に陥ってしまいます。
卓越した能力と努力と根性があれば、打開できる可能性はありますが、打開できなかった場合、そのチームは見るも無残な状態になるでしょう。
ご紹介してきた5つのパターンに共通して言えることは、会社の経営層が、その屋台骨となる管理職の任命について、重要性を理解し、先見性を持ち、真剣に向き合うことができていないということです。
そのような会社は、無能な上司のもと、有能な人材が次々と逃げ出し、次もまた無能な人材が管理職へと抜擢され、組織が徐々に弱体化していく悪循環に陥ります。先人たちの残した遺産で事業を続けることはできますが、さらなる発展は難しいでしょう。
無能な上司への4つの対処法
無能な上司を持った部下たちには、対処法として以下の4つをお勧めします。
- 上司には何も期待しない
- 上司を特定の機能を果たすだけの道具として使う
- 上司にまだ期待できる部分があれば教育する
- しかるべき相手に上司の異動を要望し続ける
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
上司には何も期待しない
まず、遺憾ではありますが、上司に期待するのをやめることから始めましょう。
今現在、自分の上司が無能である事実は変えられません。そのことで、がっかりしたり、腹を立てたりすることは、損になるばかりです。精神衛生上、ときに諦めは立派な対応策です。
上司には何も期待せず、自分がやるべきことを一つひとつこなしていくことが、自らの利益の最大化につながると言えるでしょう。
上司を特定の機能を果たすだけの道具として使う
何も期待しないとは言え、上司には組織上、様々な役割があります。重要な決定については、確認と承認をしてもらう必要があるでしょう。
しかし、無能な上司に主体性を持たせて、業務を任せても、進行が滞ってしまいます。とは言え、役割がある以上、無視して進めるわけにもいきません。上司が必要になる場面を切り出し、そのときだけ使う道具として位置づけて、業務の進行を組み立てましょう。
例えば、以下のようなイメージとなります。
- 自分の担当業務の方針について、上司の意向を形だけでも聞く
- 自分が実現したい計画骨子の中に、上司の意向を分解し、問題ない範囲で組み込んだ計画を作成する
- 計画がいかにも上司の意向が実現する内容であるかのように説明し、承認を得る
- 途中途中、上司の意向のおかげで順調である旨を報告し、好きに進行する
ポイントは、上司が自らの役割をこなせていると錯覚させることです。上司が使えないからと、上司を無視して好きに業務を進めてしまうと、役割を果たそうとする上司の介入を招くことがあります。先手を打って、役割を気持ちよくこなしてもらいましょう。
上司にまだ期待できる部分があれば教育する
もし、上司にまだ期待できる部分があるのならば、教育を試みるのも良いでしょう。
なぜ、自分よりも高い給与をもらっている人物を教育しなければならないのかと思うかもしれません。しかし、大切なのは、自分のために、自分が気持ちよく働くことができる環境を築くことです。
上司を教育することで、少しでも仕事が進みやすくなり、ストレスが軽減できるのであれば、試してみる価値はあると言えます。
ただし、無能な上司ほど、馬鹿にされること、マウントをとられることに敏感です。指摘して教えるのではなく、あくまで上司自らが気づいて学ぶようにヒントを与えていく教育が理想だと言えるでしょう。
しかるべき相手に上司の異動を要望し続ける
最後に、最も大切なことは、無能な上司を異動させるための努力を行い続けるということです。
きちんとした会社であれば、定期的に、上司や所属部署に対しての評価を、匿名で行う機会が設けられているはずです。上司の異動を要望できる機会は逃さず使いましょう。
また、無能な上司のさらに上の役職の人間や、人事担当者とコミュニケーションを図る機会を作り、味方につけた上で、上司の相談を行うと良いでしょう。
無能な上司に付き合い、振り回され続けると、最悪、自らが転属願いを出すか、転職活動を行うことになります。自らの幸福な会社生活のために、できることは行っていきましょう。