エビデンスとは、「証拠」、「根拠」、「裏付け」、「証跡」、「形跡」、「証言」などの意味で使われているビジネス用語です。
英語の「evidence」をそのままカタカナ語として使っています。
今回は、そんなエビデンスについて、業界ごとの細かなニュアンスの違いや、実際の使い方、例文、そして、混同されがちな「ファクト」との違いなどについてご紹介します。
目次
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一般的なビジネスシーンにおけるエビデンス
一般的なビジネスシーンにおいては、報告や提案などの様々な情報発信に対して、「根拠」や「裏付け」としての「記録」や「データ」を求められることが多く、それらを総称してエビデンスと呼びます。
また、会議や打ち合わせの「証跡」としての「議事録」、契約の「証跡」としての「契約書」、コールセンターなどでの電話応対の「証跡」としての「録音記録」をエビデンスと呼ぶこともあります。
さらに、営業活動における新規顧客開拓のための訪問の「形跡」としての「名刺交換」や「訪問履歴の記録」なども、エビデンスと呼ばれることがあります。
経理処理におけるエビデンス
経理処理上においては、金額や支払いの「証拠」としての「領収書」や「請求書」ことをエビデンスと呼ぶことがあります。
IT業界におけるエビデンス
IT業界においては、開発しているシステムのプログラムなどが想定どおりに稼働するのかの「証拠」となる検証結果を記録した「動作ログ」や「画面のスクリーンショット」などの各種データファイルを指してエビデンスと呼ぶことがあります。
金融業界におけるエビデンス
銀行などの金融業界においては、「証拠」としての各種「公的証明書」のことをエビデンスと呼ぶことがあります。状況に応じて、運転免許証や健康保険証、通帳のコピーなどが該当します。
医療業界におけるエビデンス
医療業界においては、特定の治療方法についての「科学的根拠」や「検証結果」、「臨床結果」などのことをエビデンスと呼んでいます。
医療現場では、科学的根拠の信用度合いを「エビデンスレベル(エビデンスヒエラルキー)」という形で表して運用しています。
エビデンスとファクトの違い
エビデンスと近しい意味を持つビジネス用語として「ファクト」があります。
ファクト(fact)は、「事実」を意味するカタカナ語です。
ファクト単独では単なる「事実」を意味しますが、何かを証明するために用いられる際には、エビデンス、「証拠」となります。
例えば、とある施策で顧客満足度が向上したという客観的データは単独では単なるファクトですが、次回同様の施策を行う際の根拠としてそのデータを提示する際にはエビデンスとなります。
状況による使い分けに注意が必要です。
ビジネスシーンでエビデンスが大切な理由
大部分の仕事は、一人で行うことはできません。組織として、大人数で役割を分割し、意思疎通を図って進める必要があります。
それをスムーズに実現するためには、皆の認識を可能なかぎり統一する必要があります。そこで人々は、要所要所で誰が見ても同じ判断をすることができる客観的事実、証跡を残していくことで対応することにしました。それがエビデンスと呼ばれるものになります。
そのため、あらゆる業界のビジネスシーンで、エビデンスベースで(エビデンスに基づいて)物事を進めることが大切にされています。
それは、職場のルールや法律で規定されることもある、ビジネスシーンで欠かせないものとなっています。
エビデンスがないと、誰も納得してくれず、社内では決裁を得ることはできませんし、顧客は提案を受け入れてくれないでしょう。
特に、人の命を預かる医療現場においては、失敗することは許されず、すべての事柄が客観的に証明された科学的根拠に基づいて行われる必要があります。
実際に、科学的根拠のない迷信や個人の思い込みを基にした治療によって失われている命は数知れません。
どのような仕事に携わっていようと、エビデンスを残し、エビデンスに基づいて進めることが大切だと言えるでしょう。