モチベーションとは、「やる気」、「意欲」、「動機(づけ)」などの意味で使われているビジネス用語です。
英語の「motivation」をそのまま使ったカタカナ語です。省略して「モチベ」とも呼ばれています。
今回は、その「モチベーション」について、自分のモチベーションを上げるための具体的な方法や、部下のモチベーションを上げるためのマネジメント術など、仕事で役立つモチベーションのコントロール方法をご紹介していきたいと思います。
自分のモチベーションアップ方法
社会人は、一日の大半を仕事をして過ごします。仕事に対して、モチベーションが高い状態で臨める人と、嫌々臨まざるを得ない人とでは、人生のトータルの幸福度が大きく変わってきてしまいます。
また、会社で成果を上げ、評価されるために、仕事に対するモチベーションは重要な要素となります。
しかし、多くの人にとって、仕事は嫌なものです。会社には行きたくないものです。どのようにして、モチベーションを上げ、維持すればよいのでしょうか。
脳をやる気にする必要がある
人間のモチベーションを決めているのは、脳です。各種、脳内物質の分泌量の多寡です。
どんなに気が乗らなくても、脳のスイッチを入れ、モチベーションが上がる脳内物質を出すことさえできれば、人はやる気になることができます。
ようするに、いかにモチベーションが上がる方向に、脳を刺激できるかが大切なポイントとなります。その場の自分の意思とは関係なく、脳さえだますことができればよいのです。
ここからは、脳をやる気にする代表的な方法をご紹介します。
得られるものを具体的にイメージする
「メリット」、「報酬」は、モチベーションを上げるために重要な要素です。
モチベーションが上がらない原因となっている仕事を行った結果として、自分にとってどのようなメリットが生じるのか、どのような報酬を得ることができるのかを具体的にイメージし、脳を刺激することで、モチベーションを上げることが可能です。
また、その「メリット」、「報酬」を目標とすることで、モチベーションの維持もある程度は可能となります。
逆を言えば、そういった「メリット」、「報酬」を感じられない仕事だからこそ、モチベーションが上がらないとも言えます。誰しも無駄なことはしたくありません。
そのようなとき、人は「自分へのご褒美」を設定し、むりやりにでもモチベーションを上げようとします。これも「報酬」の一つとして有効な方法です。
作業工程を具体的にイメージする
「メリット」、「報酬」があったとしても、やりたくないことはやりたくありません。「メリット」、「報酬」でも、脳をやる気にできないことがあります。
そのようなときは、そのやりたくない作業の工程を、具体的に頭の中でイメージ、シミュレーションしてみることで、モチベーション向上につながることがあります。
イメージ、シミュレーションにより、とりあえず脳を働かせることで、脳を刺激し、人を行動的にする脳内物質を分泌させる効果が期待できるのです。
また、脳内で作業をシミュレーションすることで、作業を開始する心理的なハードルを下げる効果や、頭の中のイメージを実際に形にしたい欲求を生み出す効果も期待できます。
とりあえず行動する
作業工程の脳内シミュレーションを経ても、やる気が出ないことは多いものです。やりたくないことはやりたくありません。
そのようなときは、歯を食いしばってでも、とりあえずその作業を始めてみることをお勧めします。
モチベーションが上がらないことであっても、始めてみると意外と普通に、苦痛を感じずに作業を進められることはめずらしくありません。
それは、実際に行動をすることにより、脳が刺激され、人を行動的にするポジティブな脳内物質が分泌されるためです。
開始するまでは億劫でも、始めてみればすんなりと進められてしまう、そんな経験は誰しもあるのではないでしょうか。
体を動かしてみる
歯を食いしばってでも始められない、そんなときはいったんその仕事から離れて、適度に体を動かしてみることをお勧めします。
ランニングなどの適度な運動を行うことで、脳内麻薬であり幸せホルモンとも呼ばれるエンドルフィンが脳内で分泌され、気持ちが上向く効果が期待できます。
運動だけではなく、家族や動物と触れ合ったり、おいしいものを食べたりすることでも、ポジティブな脳内物質の分泌を促すことができます。
直接仕事と関係がなくても、まずは脳の環境をよい方向に整える、脳のコンディション作りが大切だと言えるでしょう。
最悪、モチベーションがなくても成果は上げられる
ときには、何をしてもモチベーションが上がらないこともあるでしょう。それでも仕事で成果を上げなければならない、そんなときは、感情を完全に捨て去るのも一つの選択肢です。
仕事というものは、突き詰めれば、以下の要素に集約されます。
- 今、その時点でやるべきことを整理する
- 整理した内容を作業ごとに細分化、タスク化する
- タスクにプライオリティ(優先度)を設定し、スケジューリングする
- タスクを一つずつ消化していく
この工程を、感情をはさまずに、機械的に、黙々と処理していけばよいのです。モチベーションとは関係なく、成果を上げられることでしょう。
このような人は、職場において「不愛想だけど仕事のできるクールキャラ」として認知されるようになるでしょう。
どうしても働けない場合
これまでご紹介してきたいずれの方法でもモチベーションが上がらず、感情を捨ててでも仕事に向き合うことができない場合、もはや今の仕事内容や今の職場がどうしようもなくその人に向いていないと言わざるを得ません。
そのような状態で日々を過ごし続けても、人生の貴重な時間をただ浪費することになってしまいます。部署異動か転職を検討することをお勧めします。
もし、仕事内容や職場に関わらず、働くこと自体に拒否反応が出てしまっている場合、それは心療内科などにかかるべき事案となってしまいます。
食べ物を得るために、人は働かなければなりません。しかし、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が国民に認められている現在、働くことがどうしてもできない病気であると診断されたならば、様々な公的支援が受けられることでしょう。
部下のモチベーションアップ方法
部下が、モチベーションが高い状態で仕事に打ち込めるように、環境を整え、可能なかぎりメンタルコントロールを行うことは、上司の務めです。
しかし、部下のモチベーションアップを図る際は、自分のモチベーションアップを試みるのとは異なる注意点が数多くあります。
ここからは、部下のモチベーションアップのポイントを、一つずつ見ていきたいと思います。
基本はまともなキャリア指導と正当な評価
部下のモチベーションを上げるための基本要素は、自分のモチベーションアップと同様、「メリット」、「報酬」です。
ここで注意しなければならないのは、部下ごとに、仕事に求めている「メリット」、「報酬」が異なるということです。上司は、部下それぞれが仕事を通じてどのような「メリット」、「報酬」を得たいと考えているのかを適切に把握し、与え続けなければなりません。
部下が仕事に求める「メリット」、「報酬」の代表的な例として、以下のようなものが挙げられます。
- 褒められたい・賞賛されたい
- 評価・出世・昇給
- キャリアアップ・スキルの習得
- 成長の実感
- 問題なく終わらせて安心を得たい
結局のところ、部下に対して、きちんとキャリアの相談に乗り、可能なかぎり希望のキャリアパスに沿った仕事を任せ、仕事内容に合わせた正当な評価を行い、褒めるべきときには褒め、うまく行かないときには改善できるように導く、マネージャーとして当たり前のことをしっかりと行うことが大切だと言えるでしょう。
働きやすい環境整備
部下は人間です。働きやすい職場の環境整備も、モチベーションアップとその維持には欠かせません。
働きやすい職場環境に必要なものとしては、以下のものが挙げられます。
- 円滑な人間関係
- ストレスのないパソコン作業環境
- コンプライアンス遵守姿勢
それぞれについて、詳しく見ていきたいと思います。
円滑な人間関係
大人になっても、嫌いな人間、合わない人間はいるものです。部下同士の相性をよく考えて、チームを編成することをお勧めします。
ただし、まともな部下ほど、社会人として、誰が嫌いだとか、誰と仕事をしたくないだとかいった本音を、上司に言うべきではないと考えています。建前の発言をそのまま受け取らず、日ごろから部下たちの人間関係、相性を自分の目で観察しておくことが必要となるでしょう。
また、部下は、上司の見えないところで、瑣末な理由で仲たがいをしていることもめずらしくありません。社会人も小学生も根底は変わらないと心得て、教室を預かる学校の先生のように、チームの円滑な人間関係の構築を目指しましょう。
たかが人間関係、されど人間関係、人間関係悪化によるモチベーションの低下が原因の退職は少なくありません。
ストレスのないパソコン作業環境
部下が行っている業務内容に対して、パソコンのスペックは十分でしょうか。必要なツールはそろっているでしょうか。
最低限の業務ができれば十分なのではなく、効率的にストレスなく業務が行える環境整備が望まれます。
部下の「Excelがいつも重い」、「あのツールがあればもっと早くできるのに」などの声を、わがままと切り捨てずに、一度真面目に受け止めることをお勧めします。
特に、専門技術職の人間にとって、作業環境が整備されているか否かはとても重要な問題です。
せっかく採用した専門技術職の人間を、作業環境の整備不足によるモチベーションの低下で逃がすことだけは避けなければなりません。
コンプライアンス遵守姿勢
どんなによいところがある職場であっても、ハラスメントが存在するだけですべてが台無しです。
詳しいコンプライアンスの意味や違反事例、遵守対策については、以下の記事をご参照ください。
正解かどうかは表面的にはわからない
部下のモチベーションアップにおいて最も難しい点は、上司として行っている対応が、部下にとって本当に正解かどうかが表面的にはわからないことです。
部下が上司に本音を言ってくれるとはかぎりません。むしろ、建前で会話することがほとんどでしょう。
上司としてできることは、「部下が話してくれた話を完全に信じるのではなく、自分の目でも確認すること」と、「部下に本音を話してもらえる関係性を日ごろから築いておくこと」の二点だと言えます。
部下のモチベーションを下げる上司の一言
部下と日ごろからよい関係性を築いていくという点では、上司のよかれと思って発した何気ない一言が、逆に、部下のモチベーションを下げてしまうケースが後を絶ちません。
尊敬されていない、嫌われている上司の言葉は、どのような内容であっても悪く受け取られ、部下のモチベーションを下げてしまうのです。
そのような上司は、関係性を改善しようとあらゆる発言を試みますが、すべてが逆効果となります。尊敬されていない理由、嫌われている理由をしっかりと見つめ直し、言葉ではなく行動で示すことをお勧めします。
モチベーションの使い方、例文
最後に、「モチベーション」の使い方、例文をご紹介します。