フリーランスとは、特定の企業、組織、団体には所属せず、仕事ごとに依頼主と契約を結び、業務を請け負って収入を得ている人のことを意味します。または、そのような働き方のことを指します。
英語の「freelance」をそのまま使ったカタカナ語です。直訳すると「自由な槍」となりますが、中世における自由契約の騎士が語源だと言われています。
フリーランスのうち、法人を設立せずに、個人として事業を営んでいる人のことを、税務上の所得区分で「個人事業主」と言います。
フリーランスと個人事業主は意味を近しくする言葉ですが、その定義には細かな違いがあることに注意が必要です。
今回は、そんなフリーランスの職種の具体例や、税金、確定申告、保険、年金といった制度面、その身を守ってくれる法律、混同されがちなフリーターとの違いなどについてご紹介します。
目次
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フリーランスが活躍している職種の例
近年は、日本でも働き方の多様化が進み、以前に比べてフリーランスとして活躍する人が増えたと言われています。
特にフリーランスの方が活躍されている職種としては、以下のようなものが挙げられます。
- デザイナー
主に、企業のWebサイトや出版物、商品パッケージなどのデザインの作成を請け負います。 - イラストレーター
主に、企業のWebサイトや出版物、ゲームなどに使用されるイラストの作成を請け負います。 - ライター
主に、企業のWebサイトや出版物、ゲームなどに使用される文章の執筆を請け負います。 - カメラマン
主に、企業のWebサイトや出版物、商品パッケージなどに使用される写真の撮影を請け負います。 - エンジニア
主に、企業から依頼を受け、プログラミングやシステム設計、動作テストなどを行います。
他にも、通訳や、士業、インストラクター、各種コンサルタントなど、自身が保有するスキルで企業相手に単身で渡り合っている人たちがたくさんいます。
フリーランスの税金と確定申告
特定の企業などに所属する働き方とフリーランスの大きな違いの一つに、税金を納めるために行う確定申告があります。
企業に所属していれば、面倒な税金の計算や支払いに必要な手続きの多くを企業が代わりに行ってくれますが、フリーランスの場合は自分で収支の計算と確定申告を行い、税金を納めなければなりません。
確定申告の基礎知識
確定申告とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間の収入と支出から所得を計算し、そこから所得税の金額を算出、税務署に申告する作業を意味します。
フリーランスとして専業で事業を行っている場合、収入から必要経費を除いた所得が年間で38万円(副業なら20万円)を超えた際には、確定申告が必要となります。逆を言えば、収入が年間1,000万円あったとしても、必要経費として980万円を支出していれば、所得は20万円となり、所得税はかからず、確定申告の必要はありません。
確定申告は、原則として毎年2月16日から3月15日の間に、税務署に必要書類を提出して行います。提出開始日や最終日が土曜日、日曜日と重なる場合はその日程が変更されます。申告や納税が遅れると、税金を規定よりも多く支払わなければならない場合があります。期日には十分注意する必要があると言えます。
確定申告は、慣れないうちはとても面倒で、大きな負担となるものです。お金はかかってしまいますが、税理士に依頼してしまい、削減できた手間を本業に費やすのが賢明と言えるかもしれません。
フリーランスの保険と年金
特定の企業などに所属する働き方とフリーランスでは、保険や年金にも違いが出てきます。
ただし、フリーランスであっても法人を設立した場合などには、企業などに所属した場合と同じ制度が適用されることがあります。
ここでは、法人を設立していない個人事業主のフリーランスを前提として、ご紹介していきたいと思います。
フリーランスの保険
基本的な仕組みとして、企業などに所属している人は「社会保険」に加入し、フリーランスなどそれ以外の人は「国民健康保険」に加入することになっています。
社会保険は保険料の半分を企業側が負担してくれるなど様々な違いがありますが、国民の健康を等しく維持するために内容面に大きな差異は設けられていません。
フリーランスの年金
基本的な仕組みとして、企業などに所属している人は「国民年金」に加えて「厚生年金」に加入し、フリーランスなどそれ以外の人は「国民年金」のみに加入することになっています。
企業などに所属している人は「厚生年金」に加入している分だけ、多くの年金を受給することができます。その差額は、個人差はありますが、平均で月額10万円程度にもなります。
フリーランスとして生きていく場合は、会社員として生きていく場合よりも、多くの老後の蓄えが必要になると言えるでしょう。
フリーランスを守る法律
フリーランスは自由な働き方ができる一方、後ろ盾となる組織がなく、労働基準法も適用外なために、企業などとの取引に際して、不当な値下げや報酬に見合わない要求など、不利な立場に追い込まれることがめずらしくありません。
そのため、独占禁止法や下請法などで、フリーランスでも企業などの組織と公正な取引が行えるように、企業側に様々な規制が設けられています。
受け取る約束をしていた納品物の受領を拒否したり、契約締結後に発注金額を減額したり、納品物を受領後に追加費用なしでやりなおしを要求したりするなど、主に外注先の業者の利益を損ねる行為は法律違反に該当します。
長い付き合いの業者との間で、両者が合意の上で上記のような行為を行っていても違法となります。
誰しも、クライアントには逆らいづらいものです。しかし、事業の継続性、将来性を考えて、主張するべきことは主張しなければなりません。
自分の身を守ってくれるせっかくの法律も、その存在を知り、適切に扱わないかぎり、意味はありません。
また、フリーランスが、理不尽なクライアントから自分の身を守る方法について、以下の記事にまとめてあります。ご参照いただければ幸いです。
フリーランスとフリーターの違い
フリーランスと名前が似ていることで混同されがちな働き方として、「フリーター」があります。
フリーランスの人が、フリーターと混同されて憤りを覚えることもめずらしくありません。
この二つの働き方は別のものですので、しっかりと区別ができるようにしましょう。
フリーターとは
フリーターは、使われる文脈によって定義があいまいな部分もありますが、厚生労働省は統計データを作成する上で以下のように定義しています。
- 15~34歳で、男性は卒業者、女性は卒業者で未婚の者
- 雇用者のうち「パート・アルバイト」の者
- 完全失業者のうち探している仕事の形態が「パート・アルバイト」の者
- 非労働力人口で、家事も通学もしていない「その他」の者のうち、就業内定しておらず、希望する仕事の形態が「パート・アルバイト」の者
まとめると、15~34歳で、学生や専業主婦(主夫)ではなく、今現在「パート・アルバイト」といった時間給労働者であるか、それを希望している人がフリーターとなります。
企業などの組織に正規雇用されているわけではないという点ではフリーランスとフリーターは同じであり、定義上はフリーランスのうち、「パート・アルバイト」に従事する人もことをフリーターと呼ぶという考え方もできます。
しかし、社会通念上は、完全に分けて考える方が無難です。
フリーターという言葉には、「安定していない」、「ちゃんとした職に就いていない」など、少なからずネガティブな意味合いが含まれます。
フリーランスの方たちは、自分のスキルにプライドを持ち、単身で企業と渡り合っている自負を持っている人が多く、フリーターと一緒にされることに強い嫌悪感を持たれる人は少なくありません。
相手との人間関係を壊したくないのなら、冗談でも一緒にして語るのはやめましょう。
自営型テレワーク/自営型テレワーカーとは
最近、耳にする言葉として「自営型テレワーク」、「自営型テレワーカー」があります。
自営型テレワーク、自営型テレワーカーと、フリーランスは、何が違い、どのような関係性にあるのでしょうか。
まず、厚生労働省による自営型テレワークの定義は以下のとおりです。
「自営型テレワーク(在宅ワーク)」とは、企業などから委託を受けパソコンを始めとする情報機器とインターネットを中心とする通信技術を活用し、主に自宅または自宅に準じた自ら選択した場所(カフェやコワーキングスペース等)で成果物の作成やサービスの提供を行う働き方を指します。
自営型テレワークで働く人のことを、自営型テレワーカーと呼びます。
そして、自営型テレワーカーは、会社や団体などに所属しない個人事業主だとされています。
定義上、自営型テレワーク、自営型テレワーカーは、フリーランスの中の一形態だと言えます。
- フリーランスの中で、法人を設立せずに、個人として事業を営んでいる人が「個人事業主」
- 個人事業主の中で、ICT(情報通信技術)を活用し、自宅などオフィス以外で働く人が「自営型テレワーカー」
という関係性になります。
日々、次々と新しい言葉が出てきますが、個々の意味をきちんと把握し、適切に用いることが大切だと言えます。