インバウンドとは、「外国人が日本に旅行に来ること」や「顧客が企業に直接の訪問や、電話、メール、Webサイト、SNS等で自発的に接触してくること」などを意味するビジネス用語です。
英語の「inbound」の「内向きに入ってくる」という意味合いから派生して使われているカタカナ語です。対義語として「アウトバウンド」があります。
外国人旅行者による日本国内での消費を「インバウンド消費」または「インバウンド需要」、顧客が自発的に企業に接触してくるように施策を行うことを「インバウンドマーケティング」と言います。
今回は、インバウンドが持つ二つの意味について、それぞれ詳しく見ていきたいと思います。
目次
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外国人が日本に旅行に来るインバウンドの解説
まず、外国人が日本に旅行に来ることを意味するインバウンドについて、詳しく見ていきたいと思います。
観光用語としてのこちらの使い方は、ニュース番組などでも聞いたことがあるのではないでしょうか。
インバウンド消費(インバウンド需要)とは
外国人旅行者による日本国内での消費を、インバウンド消費、またはインバウンド需要と言います。
日本国政府は、2003年、小泉純一郎政権のもとで、当時年間500万人に留まっていた訪日外国人旅行者数を、2010年に1,000万人にまで増加させ、「観光立国」を目指すという構想を発表しました。
内需の拡大が見込めない日本経済において、その活路をインバウンド消費に求めた形です。
その後、リーマンショックに連なる世界金融危機や東日本大震災などの苦境に見舞われながらも、様々な施策を実行し、ここ十年は以下のように訪日外国人旅行者数とインバウンド消費の額を伸長させてきました。(出典:観光庁『訪日外国人消費動向調査』)
- 2010年|861万1,175人|1兆1,490億円
- 2011年|621万8,747人|8,135億円|東日本大震災による落ち込み
- 2012年|835万8,105人|1兆846億円
- 2013年|1,036万3,904人|1兆4,167億円|安倍晋三政権下で1,000万人突破
- 2014年|1,341万3,467人|2兆278億円
- 2015年|1,973万7,409人|3兆4,771億円
- 2016年|2,403万9,053人|3兆7,476億円
- 2017年|2,869万1,073人|4兆4,162億円
- 2018年|3,119万1,856人|4兆5,189億円
- 2019年|3,188万2,049人|4兆8,135億円|過去最高値を記録
2020年の東京五輪や2025年の大阪万博による更なる成長が期待されていました。
ポストコロナにおけるインバウンド
しかし、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、人々の自由な往来は制限され、インバウンド消費は壊滅的な打撃を受けます。
政府観光局の発表によると、2020年4月から7月の訪日外国人旅行者数は、前年同月比99.9%減という数値が続いています。
新型コロナウイルス感染症のワクチンが開発され、一般に行き渡るまで数年はかかると言われており、もし、ワクチンが行き渡ったとしても、ウイルス自体が根絶されるわけではなく、旅行は感染リスクとともにあり続けることでしょう。
99.9%減の状況からは徐々に回復していくことは間違いありませんが、ポストコロナ(コロナ禍以降)の世界において、残念ながら以前と同水準のインバウンド消費が戻ってくることはないでしょう。
言葉の使い方、例文
観光用語としてのインバウンドの使い方、例文をご紹介します。
顧客が企業に自発的に接触してくるインバウンドの解説
次に、顧客が企業に自発的に接触してくることを意味するインバウンドについて、詳しく見ていきたいと思います。
マーケティングに関わる仕事をしている方以外は、あまり聞いたことがないのではないでしょうか。
インバウンドマーケティングとは
顧客が企業に直接の訪問や、電話、メール、Webサイト、SNS等で自発的に接触してくるように施策を行うことをインバウンドマーケティングと言います。
企業側からあらゆる媒体を駆使して広告、宣伝で売り込みを行っていくアウトバウンドマーケティングとは逆に、顧客側から企業が提供する商品やサービスを「見つけてもらう」ために、企業が自社のWebサイト上やSNSアカウント上で、顧客が興味を持つであろう情報を発信していくマーケティング手法を意味します。
具体的には、ターゲットとなる顧客が抱えているであろう課題の解決につながる情報を、以下の手段などを用いて発信していくことになります。
- オウンドメディア(自社Webサイトのメディア化)
- SNS(Twitter、Facebook、Instagramなど)
- 動画配信(YouTube、TikTokなど)
- セミナー
- メールマガジン
- ホワイトペーパー(課題解決方法などをまとめた資料)
顧客側からすると、押し付けられた情報ではなく、自ら探して見つけ出した情報だと感じることができ、企業側としては、発信した情報を顧客に抵抗なく受け入れてもらえるメリットがあります。
一方で、この施策を行うには、顧客に興味を持ってもらうための良質な情報コンテンツが必要となり、一定の制作コストがかかってしまいます。
また、顧客にコンテンツを見つけてもらい、ファンになってもらった上で、商品やサービスの購入に至ることが前提の施策となるため、成果が上がるまでに一定の時間が必要となるのが一般的です。
短期視点のアウトバウンドマーケティングと、長期視点のインバウンドマーケティングをうまく組み合わせて、マーケティング施策を進めていくことが大切です。
なお、Webサイト上でインバウンドマーケティングを行う上で知っておきたいのがSEOです。SEOについて解説した以下の記事もあわせてご参照ください。
コールセンターにおけるインバウンド
コールセンターの業務においては、電話で顧客が自ら企業側に接触してきてくれているという意味合いから、電話での受信や着信のことをインバウンドと呼びます。
言葉の使い方、例文
マーケティング用語としてのインバウンドの使い方、例文をご紹介します。
対義語のアウトバウンドとは
アウトバウンドとは、「日本人が海外に旅行に行くこと」や「企業が消費者に対して、店頭や展示会においてのセールストーク、電話、ダイレクトメール、Web広告等で、消費者の意思に関係なく接触を図っていく宣伝」などを意味するビジネス用語です。
英語の「outbound」の「内から外に出ていく」という意味合いから派生して使われているカタカナ語です。
消費者の意思に関係なく、目や耳に勝手に情報が入ってくる形の広告、宣伝を行うことを「アウトバウンドマーケティング」と言います。