会社におけるコミュニケーション手段は、時代とともにその種類を増やしていき、現在では、対面、電話、メール、チャットの4つが主な手段となっています。
Z世代などの若手社員の皆さんは、コロナ禍によるリモートワークの推進にも適応し、対面を必要としない、メールやチャットを主要なツールとして業務を進める働き方にも比較的抵抗が少ないことでしょう。
一方で、上の世代になるほど「対面>電話>メール>チャット」の順番で丁寧であり、好ましいものだという価値観を持つ傾向にあります。
結果として、会社によっては、「管理職以上には対面で話をしに行かなければならない」、「メールをしたあとに電話もするのが丁寧でよい」などの合理性に欠けると言わざるをえない不文律も存在しています。
世代間ギャップも見え隠れする会社におけるコミュニケーション手段、コロナ禍を経た今、その理想的な形とはいったいどのようなものなのでしょうか。わかりやすく解説していきたいと思います。
目次
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4つの手段の特徴を知ることが大切
会社における理想のコミュニケーションの形を考える上で、まず知っておきたいのは、対面、電話、メール、チャットの4つのコミュニケーション手段のそれぞれの特徴です。
それぞれのメリットとデメリットを確認しておきましょう。
対面のメリットとデメリット
- 表情と声色の分、感情的なニュアンスを伝えやすい
- 顔を見せることで、相手に親しみを感じさせられる
- 相手を捕まえられれば、その場で確実に情報を伝えられる
- 口頭伝達であるため、テキスト形式より要件の齟齬が多くなる
- 伝達した事実と内容の証拠が残らず、あとから参照ができない
- 相手の空いている時間を見繕って確保しなければならない
- 出社の必要があり、リモートワークではできない
- 新型コロナウイルスの感染リスクが高まる
電話のメリットとデメリット
- 声色の分、感情的なニュアンスを伝えやすい(対面には劣る)
- 声を聞かせることで、相手に親しみを感じさせられる(対面には劣る)
- 相手に受電させれば、その場で確実に情報を伝えられる
- 口頭伝達であるため、テキスト形式より要件の齟齬が多くなる
- 伝達した事実と内容の証拠が残らず、あとから参照ができない
- 相手の空いている時間を見繕って確保しなければならない
メールのメリットとデメリット
- テキスト形式であるため、口頭伝達より要件の齟齬が少なくなる
- 文章校正の過程で、伝えたい内容をわかりやすくまとめることができる
- 伝達した事実と内容の証拠が残り、あとで参照することができる
- 相手の予定にかかわらず、任意のタイミングで情報を送れる
- 表情と声色がない分、感情的なニュアンスを伝えづらい
- 相手に事務的な印象を与えがちである
- 相手が閲覧しない可能性がある
- ビジネス定型文のせいで、くどくなりがちである
チャットのメリットとデメリット
- テキスト形式であるため、口頭伝達より要件の齟齬が少なくなる
- 伝達した事実と内容の証拠が残り、あとで参照することができる
- 相手の予定にかかわらず、任意のタイミングで情報を送れる
- 表情と声色がない分、感情的なニュアンスを伝えづらい
- 相手にラフな印象を与えがちである
- 相手が閲覧しない可能性がある
- 長文を送るのに適していない
手段を好き嫌いではなく合理的に使い分ける
ご紹介してきたように、対面、電話、メール、チャットにはそれぞれ異なるメリットとデメリットがあり、一概にどれが優れている劣っている、丁寧だ無礼だという考え方ではなく、相手に伝えたい情報の種類や内容によって合理的に使い分けていくことが重要だと言えるでしょう。
シゴトコでは、それぞれの手段の特徴から、以下のような使い分け方を推奨しています。
- 提案(プレゼン)で熱意を伝えたいなど、相手の感情に訴えたい場合は、「対面」(状況に応じてリモート会議を活用)
- 急ぎ伝えたいことがあり、確実に連絡を取りたい場合は、「対面」か「電話」
- 情報の内容を正確に伝えたい場合で、情報量が多い場合は、「メール」
- 情報の内容を正確に伝えたい場合で、情報量が少ない場合は、「チャット」
- 簡易的なコミュニケーションは基本的に「チャット」
社内でちょっとした用事でコミュニケーションをとる際に、かつては対面で話しかけたり、内線電話をかけたりしていたことと思います。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行にともない、その感染リスクやリモートワークの推進などから、チャットツールの活用が推奨される世の中になったと言えるでしょう。
そもそも、対面や電話といったコミュニケーション手段は、話しかける方からすれば、手軽で手っ取り早い手段かもしれませんが、話しかけられる方からすれば、対応するためにいったん仕事の手を止める必要があり、一方的に時間を搾取される行為に他なりません。
内線電話に関して言えば、本人が不在の場合は、他の人間が仕事の手を止めて対応し、電話があった旨を伝言する必要も出てきます。
内線電話によるコミュニケーションは、日々、対象者を含むあらゆる人間の時間と集中力を奪っており、すべてをチャットによるコミュニケーションに置き換えられれば、長期的に見てかなりの業務効率化を達成することができるでしょう。
非合理的な価値観を押しつけてくる相手には
役職が上の人間になるほど、「対面や電話でないと気持ちが伝わらない」、「忙しくてメールやチャットをいちいち見ていられない」などと発言し、自らが好むコミュニケーション手段をチームに強要しようとします。
「対面や電話でないと気持ちが伝わらない」というのは、気持ちを伝える必要性の有無や他条件をもとに手段を使い分けることが推奨されますし、「忙しくてメールやチャットをいちいち見ていられない」というのは、忙しいのはその人物のリソース管理の問題であり、見ない人間が悪いだけの話です。
なお、管理職の忙しいアピールが恥ずかしい理由については、以下の記事にまとめています。ご参照ください。
しかし、そのような自己都合の非合理的な価値観を押しつけてくる相手に対して、自分の方が正しいからといって、合理的なやり方で真っ向から対応しても、不興を買ったり、伝えたいことを伝えられなかったり、損をするのは自分の方となることがほとんどです。
まずは社内やチーム内で、コミュニケーション手段についてコンセンサスを取ることが重要だと言えるでしょう。
特に、チャットツール導入時などは、基本のコミュニケーション手段として用いる旨をトップダウンで周知しないことには、ツールを起動すらしない人員が多数に上ることでしょう。
人は、他者に新しいやり方を押しつけられると面倒だと思う生き物です。可能であれば、今まで慣れ親しんだやり方を続けたいと思う生き物です。その傾向は、年を取れば取るほど顕著なものとなっていきます。
コミュニケーション手段について社内やチーム内でコンセンサスを取るには、実際に困ってる現場から声を上げ、役職者に訴えかけていく必要があるでしょう。
コンセンサスさえ確立できてしまえば、役職者にチャットだけで連絡をして無礼だと理不尽な言いがかりをつけられることもなくなるでしょう。
地道な活動が必要となってしまいますが、組織で仕事をする上で避けては通れない問題です。効率的な業務遂行のために、日々のストレスの軽減のために、努力する必要があります。