大魔王バーン(ダイの大冒険)に学ぶ働き方 - 魔王軍カリスマ創業者

この記事は、マンガ『ダイの大冒険』に関する重大なネタバレを含みます。

『DRAGON QUEST―ダイの大冒険』は、原作を三条陸氏、作画を稲田浩司氏が担当し、1989年から1996年まで『週刊少年ジャンプ』上で連載された人気マンガです。

作品を未読の方は、以下をご参照いただき、ご興味のある方はぜひお読みください。
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DRAGON QUEST―ダイの大冒険― 1 (集英社文庫(コミック版))/三条 陸、稲田 浩司モンスターが平和に暮らすデルムリン島。その島で唯一の人間・ダイは、魔法が苦手だが勇者に憧れている少年。ある日、島を訪れた“勇者育成の家庭教師”アバンに才能を認められ、ダイは勇者になる特訓を開始! だが、そこへ復活した魔王が出現し!?

連載当時、子どもたちは主人公である勇者ダイ氏の必殺技アバンストラッシュをこぞって傘でまねしていたものです。

その勇者ダイ氏に倒されることになる最大の強敵が大魔王バーン氏になります。

主人公側に敵対する悪の親玉として描かれることになる大魔王バーン氏ですが、その強さと威厳は最後の敵にふさわしい存在感を放ち、魔王軍という巨大組織の創設者、運営者としての手腕も目を見張るものがありました。

今回は、そんな大魔王バーン氏の組織運営者としての顔に着目し、会社経営者のあるべき姿について考えていきたいと思います。

大魔王バーン氏の経営者としての魅力

大魔王バーン氏の経営者としての優れた点は、作品をとおして随所に確認することができます。今回は、その中でも以下の3点にしぼってご紹介していきたいと思います。

  1. 目標が壮大であり、それに見合う実力がある
  2. 部下の失敗に寛大である
  3. 完全実力主義で、出自などで差別をしない

1. 目標が壮大であり、それに見合う実力がある

大魔王バーン氏の目標は壮大です。魔物たちを使って地上を征服することが目標だと見せかけて、実のところは地上そのものを物理的に消滅させ、はるか地底に存在する自らの故郷である魔界に、太陽の光をもたらすことが目標でした。

人も魔族も、壮大な目標をかかげるリーダーについていきたくなるものです。作中では、その壮大な目標を、太陽を手中におさめる最高にかっこいい絵面で語るなど、演出面もばっちりです。

そして、大魔王バーン氏は、折れない心が持ち味の勇者ダイ氏を、圧倒的な実力差で一度は戦意喪失に追い込むなど、壮大な目標を語るにふさわしい実力も兼ね備えています。

壮大な目標とそれに見合う実力こそが、組織全体を牽引するカリスマ性を生み出すのです。

2. 部下の失敗に寛大である

大魔王バーン氏は、部下の失敗に寛大でもあります。作中で、失敗をして戻ってきた部下に対して、三度までの失敗は許す考えであることを明言しています。

しかし、この場面において、魔王軍事業の事業部長である魔軍司令ハドラー氏は、三度目の失敗をして帰ってきたところでした。絶体絶命です。

ここで大魔王バーン氏は、三度目の失敗をとがめつつも、勇者アバンを葬ったという以前の功績を持ち出し、再度のチャンスを与えます。

人間も魔族も、誰しも失敗をすることはあります。大きな事業を請け負っていれば、なおさら難しい局面も多いことでしょう。部下に対して直情的に罰を与えるのではなく、組織への貢献度を公平に判断する、大魔王バーン氏のふところの深さが見てとれます。

3. 完全実力主義で、出自などで差別をしない

ダイバーシティ

組織運営にダイバーシティ(多様性)の必要性が説かれている昨今ですが、魔王軍においては当時から出自で差別をしない、完全実力主義の人材登用を、CEOである大魔王バーン氏自らが率先して進めていました。

事業部長ハドラー氏からの反対を押し切り、魔王軍に6人しかいない団長(部長)のうちの1人に登用したのは、なんと抹殺対象の種族である人間であり、敵である勇者アバン氏の弟子でした。

また、本来は自身の敵となるはずだった竜の騎士バラン氏もその実力を見込み、苦労の末に口説き落とし、団長(部長)として招き入れました。

さらには、宿敵である勇者ダイ氏との決戦時には、今まさに戦っている相手である勇者ダイ氏への勧誘も、かかさず行っています。

その勧誘は、人間と違い自分は感情的な差別を行わない、実力主義による評価をきちんと実行すると相手に語りかけるものでした。

まさに完全実力主義を地で行き、組織の人材補強に余念がない理想的な経営者だと言えるでしょう。

なぜ大魔王バーン氏は勇者に敗れたのか

しかし、そんな大魔王バーン氏も、最後には勇者ダイ氏に討ち果たされてしまいます。

完璧な組織運営を行っていたかに見えた魔王軍CEO、大魔王バーン氏の敗因はいったい何だったのでしょうか。

その答えは、「ただ単に相手が悪かった」の一点につきるでしょう。

勇者ダイ氏の脅威の人心掌握術

勇者ダイ氏のたぐいまれな能力の一つが、その人心掌握術です。勇者ダイ氏と戦っていたはずの魔王軍の幹部の多くが、気がつけば次々と大魔王バーン氏に造反し、勇者ダイ氏に味方する結果となりました。

以下のとおり、魔王軍事業部幹部7名のうち最終的には4名が裏切り、その造反率は驚異の57.1%となりました。組織は当然維持できません。

  • 魔軍司令(事業部長)ハドラー→[造反]
  • 不死騎団長(部長)ヒュンケル→[造反]
  • 氷炎魔団長(部長)フレイザード
  • 妖魔士団長(部長)ザボエラ
  • 百獣魔団長(部長)クロコダイル→[造反]
  • 魔影軍団長(部長)ミストバーン
  • 超竜軍団長(部長)バラン→[造反]

一度、部下に黙って部下の体に爆弾を仕込んでしまったことはありますが、基本的に大魔王バーン氏が部下に対しての対応を誤り、造反を誘発してしまったという事実はありません。圧倒的な人心掌握術を持つ勇者ダイ氏が、大魔王バーン氏のカリスマ性と組織運営術を上回ったのです。

造反した部長の一頭であるクロコダイン氏は、裏切った理由を、勇者ダイ氏が自分にとって太陽だったからだと語っています。太陽なら仕方がない。

魔王軍幹部以外にも、元は敵であった、ハドラー氏の部下であるヒム氏、バラン氏の部下であるラーハルト氏、伝説の名工であり魔界随一の剣の達人であるロン・ベルク氏なども味方につけた勇者ダイ氏に、大魔王バーン氏は追いつめられることになります。

きちんと計画を練って、万全に事を進めたとしても、予期せぬ外部的要因で失敗してしまうこともあるのが現実の社会です。それでも、成功を収めるためには、堅実にやるべきことをやっておく必要があります。

大魔王バーン氏は、物語をとおして、そんな社会の光と影を教えてくれているのではないでしょうか。

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