マストとは、「必須」、「必要不可欠」、「義務」、「しなければならない」などの意味で使われているビジネス用語です。
英語の「must」をそのまま使ったカタカナ語です。
今回は、その「マスト」について、ビジネスシーンにおける位置づけや、仕事を進める上でマスト条件を確認することの重要性、言葉としての使い方などを、ご紹介していきたいと思います。
ビジネスシーンにおけるマスト
仕事とは、相手方の指示や要望を正しく理解し、適切な成果物を返す作業だと言えます。
しかし、人間同士のコミュニケーションはどうしようもなく不完全なものです。「言わなくてもわかるだろう」と思っていることは、だいたいわかってもらえていません。「ちゃんと伝えたからだいじょうぶ」と思っていることでさえも、実は正しく伝わっていないなどということは日常茶飯事です。
仕事の相手方から指示や要望を伝えられた際に、自分が認識した内容と、相手が伝えようとした内容にずれがないか、きちんと確認しておくことは、基本かつ大切な作業だと言えるでしょう。
そして、その際に、最も重要な確認事項となるのが、「マスト条件」、「マスト事項」です。
相手に満足してもらうために必要な条件は何なのか、相手が絶対に達成してほしいと考えている必須項目は何なのか、それがずれていては意味がありません。
相手の要望の中の、
どの部分が「ベター(better/できたらより望ましいこと)」で、
どの部分が「ウォント(want/してほしいこと)」で、
どの部分が「マスト(must/絶対にしなければならないこと)」なのか、
その仕事のゴールを具体的に把握することから仕事は始まります。
多くの場合、指示したり、お願いしてくる側の人間は、不十分な要件しか伝えてきてくれません。しかし、一度引き受けてしまったら最後、その仕事を完遂する責任を担うのは自分です。自ら進んで、その仕事の足りていない要件を確認しにいく必要があるのです。
マスト条件を言わない無能な上司
特に、無能な上司や厄介な顧客は、指示があいまいです。
彼らはいつも、不十分な情報だけを与えて、「あとは任せるから」と去っていき、上がってきた成果物に対して一方的に文句を言い、幾度となく再提出を要求します。
作業者は、再提出を繰り返す中で、フィードバック内容の断片からその仕事のマスト条件を想像し、いつしかゴールにたどりつくことはできますが、ここに時間の大いなる無駄が発生します。
仕事を「任された」場合であっても、指示者は作業者がすべてを自由に進めることなど望んではいません。そこには、指示者が望んでいる「ベター」と「ウォント」と「マスト」が内在しています。再提出の繰り返しという無駄な時間を減らすために、作業を開始する前に、丹念に指示者の要望をヒアリングしましょう。
指示者が仕事ができない人物である場合、ヒアリングをしても、「いちいち言わないとわからないのか」、「そんなことは自分で考えて進めてくれ」などと言われることもあるでしょう。
確かに、作業者が自分で考えるべき部分もあります。しかし、まずは、「作業者が自分で考えるべき部分」と「作業者が勝手に変えてはいけないマスト条件部分」をはっきりとさせる必要があります。必要なヒアリングを行った結果、否定的なことを言われたとしても、あなたは悪くはありません。
プライオリティを考える際にも重要なマスト
マストは、スケジュール、期日に対しても使われます。そして、それは仕事のプライオリティ(優先度)を左右する重要な要素となります。
例えば、明日までに行ってほしいと言われた仕事のその期日が、ベターなのか、マストなのかによって、仕事のプライオリティは大きく変わります。
その期日がベターであれば、プライオリティの高い他の仕事を優先して進めることができます。一方で、マストであるならば、その仕事を最優先で進めなければなりませんし、場合によっては他の仕事のリスケ(再調整)も検討しなければなりません。
その仕事の期日がマストなのかどうかは、きちんと確認しておく必要があるでしょう。
マストを使う際の注意点
マストは、命令に近い、強制力のある言葉です。
立場が上の人間や、顧客相手に安易に使ってしまうと、失礼にあたる場合があります。
相手との関係性や間柄を考慮して使うようにしましょう。
ビジネスシーン以外のマスト
マストという言葉は、ビジネスシーン以外でも使われています。
ファッション誌などでよく使われる「マストアイテム(must item)」という言葉は必需品を意味します。近しい言葉として、「マストバイ(must buy)」、「マストな一品」という言い方もあります。
命令に近い、強制力のある言葉として、人々に強い印象を与えるため、キャッチーな言葉としてポジティブな方面でも使われています。
マストの使い方、例文
最後に、「マスト」の使い方、例文をご紹介します。