ニッチとは、もともと、西洋建築で、彫像や花瓶を置くために設けられたくぼみを指し、「隙間」を意味します。一般的に「マニアックな」、「一般的ではなく、小規模な分野」といったニュアンスで使われています。
また、建築用語や地学用語では「くぼみ」、生物学用語では「生態的地位」と、幅広い分野でも使用されています。
ニッチの語源は、英語の「niche」であり、発音は「ニッチ」または「ニッチェ」のように発音します。
語源について、英語のnicheからさらにさかのぼると、フランス語の「niche(ニーシュ)」、ラテン語の「nidus(ニードゥス)」へと行き着きます。
ここでは、ニッチという言葉の活用法を、主にビジネスシーンの観点から解説していきます。
目次
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主なニッチの使い方
まず、ニッチの使い方を、日常とビジネスシーンにわけてご紹介します。
日常におけるニッチとは
ニッチの語源は「隙間」という意味ですが、日常的な「ニッチ」の使い方としては、「ニッチな靴」や「ニッチな時計」というように、形容詞としてよく使われています。
その意味は、おおよそ「マニアック」と置き換えることが可能で、「あまり知られていないが需要のあるもの」というのが、ニッチの基本的な意味になります。
ビジネスシーンにおけるニッチとは
経済や、ビジネスといった分野でもよく耳にするニッチですが、その分野では「隙間市場」という意味を表しています。
隙間市場とは、ニッチの意味にもあるように、マニアックな分野の市場を指します。マニアックな分野とは、市場の中では一般的ではないとされていて、求めている人、つまり需要が限定的である分野と言えるでしょう。
なお、隙間市場は、ニッチ市場と呼ばれることもあります。
隙間市場(ニッチ市場)を攻めるメリット
大企業は、大規模に事業を展開することを目指し、大多数のニーズに応えられる需要の高い分野や競争率の高い分野に、事業を展開しています。逆に、規模が小さく、需要の低い隙間市場は、収益性は低いとされ、大企業は好んで参入をしない傾向にあります。
そこで、大企業が開拓しなかった、俗に言うマニアックな分野を、中小企業やベンチャー企業が開拓していくケースが少なくありません。
そして、企業が隙間市場を攻める最大のメリットが、そのような大企業が参入していない市場において、潜在的な需要を開拓していけることだと言えます。潜在的な需要の開拓とは、読んで字のごとく、潜在、つまり世の中に発見されていない需要を見つけ出すということです。
これに関しては、需要が低いわけではなく、需要に気づいていないだけであるために、うまく潜在的な需要を引き出せた場合には、事業を展開する上で、一定のニーズがある上に、大企業をはじめとした、他社と争うことも少ない、競争率の低い魅力的な市場を得ることができるのです。隙間市場で成功している企業の多くが、潜在的な需要の開拓に成功した企業だと言えます。
また、企業にとって隙間市場を攻めるもう一つのメリットとして、競争率の低く、少ない需要の分野をあえて攻めることによって、その一部の需要に集中して、効果的に自社の資源を投下することができるという点が挙げられます。
ニッチはネガティブな意味ではない
ニッチという意味で間違われやすいのが、需要があるかないかという観点です。ニッチという言葉の意味には、一部需要があるということが前提となっています。
ニッチの類義語や言い換えとして、需要がなく、知名度が低いことを表す「マイナー」という言葉を用いるのは誤りだと言えます。つまり、ニッチという言葉は、完全に否定的な要素を含んでいるわけではなく、基本的には良い意味として使われているのです。
ビジネスシーンにおけるニッチの関連用語
ここからは、ビジネスシーンにおけるニッチの様々な関連用語についてご紹介していきます。
ニッチ戦略(ニッチマーケティング)
ニッチ戦略とは、大企業が手をつけない、需要の低い分野に着目し、他社との競争をできるだけ削減させ、円滑に自分たちの事業を進めるという戦略のことです。
他社に先駆けて、潜在的な需要の見込める分野の開拓を始めれば、その需要を求める特定の顧客を集中的に狙うことが可能となります。実際に、ニッチ戦略によって成功を収めている企業も、数多くあります。
なお、ニッチ戦略はニッチマーケティングとも呼ばれます。
ニッチャー
ニッチャーとは、ニッチ戦略によって成功を遂げた企業を表します。
グローバルニッチ
グローバルニッチとは、世界市場における隙間市場を意味します。
国内で少ない需要の分野であっても、世界規模ならば、隙間市場の唯一の欠点ともいえる、需要の低さを解消できるのではと知られるようになったのが、グローバルニッチです。
また、グローバルニッチに進出しようとする戦略を「グローバルニッチ戦略」と呼びます。
ニッチ商品(製品)
ニッチ商品とは、ニッチ戦略によって生み出された商品、製品のことを表します。
例えば、洋服や電化製品など、もともと競争率の高い商品を作るのではなく、料理をするときにピンポイントで役立つ、今までにはなかった便利グッズといった、需要が少ない、あるいは潜在的な需要を引き出した商品のことを、ニッチ商品と呼びます。
また、ニッチ商品を提供するビジネスのことを「ニッチビジネス」や「ニッチ産業」と呼んだりします。
ニッチトップ(グローバルニッチトップ)
ニッチ戦略によって、成功を遂げたトップ企業のことを「ニッチトップ」と呼びます。
また、グローバルニッチ戦略によって、成功を遂げたトップ企業のことを「グローバルニッチトップ」と呼びます。
ニッチの対義語のマスとは
ニッチの対義語としてよく使われているのは「マス」という言葉です。マスとは、マスマーケットの略称で、マスの意味は「大きなかたまり」や「集団」として使われています。
ニッチ市場と同じように、マス市場という言葉もあり、マス市場とは、ニッチ市場とはそっくりそのまま真逆で、大多数のニーズに合わせて、大量生産されている商品の市場を表します。