OJTとは? 意味とメリットとデメリット、実施する際のポイント

OJTのイメージ

OJT(オージェーティー)とは、「On the Job Training」の頭文字を取った略語であり、現場で実務を行いながら社員を育てるという教育方法です。

研修を受ける側の新入社員は「トレーニー」、指導する側の先輩社員は「トレーナー」と呼ばれます。

OJTの起源は第一次大戦時のアメリカであり、当時軍備の拡大を急いでいたアメリカは造船分野において大規模の増員が必要でした。しかし、十分な技能や知識を備えた人材を確保出来なかったため、人材育成を担当していたチャールズ・R・アレンが現場で実務と教育を並行して行う手法を考案したのです。

今回は、そんなOJTについて、その目的やメリットとデメリット、実施する際のポイントなどをご紹介していきます。

目次

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OJTの目的

OJTは漠然と実施するのではなく、明確な目的を持って行うことが大切です。一般的なOJTの目的は以下のようになっています。

即戦力の迅速な育成

OJTは業務における知識と技術の定着を同時進行で行い、新入社員を出来るだけ早く即戦力に育て上げることを目的としています。

実務に必要なスキルをピンポイントで身につけられるので、無駄なく効率的な新人研修が可能です。

リーダー・マネージャー人材の育成

OJTは新入社員だけではなく、研修を行う指導者の教育も大きな目的の1つです。

新人を教育するためには、指導する側が自社の業務内容や企業理念について理解を深める必要があります。OJTを通して指導する側の社員も成長することで、自社の将来を担うリーダーやマネージャー候補を育てられるのです。

採用力の向上

自社での教育体制の強化は、最終的に採用力の向上にも結びつきます。

優秀な人材を育てて業績を伸ばしている企業は、就活生にとっても魅力的に映るものです。スキルアップが期待出来る企業には、積極性や能動性を備えた学生が集まりやすい傾向があります。

OJTとOFF-JTの違い

OJTによく似た言葉にOFF-JTと呼ばれるものがあります。

OJTとは、「やってみせる(Show)」、「説明する(Tell)」、「やらせてみる(Do)」、「評価・指導する(Check)」という4つのプロセスを繰り返す実践型の指導方法です。

これに対して、OFF-JTは一般的に実務を伴わない座学形式の研修会を指します。OFF-JTでは専門的な知識を集中的に、なおかつ各指導を受ける社員に対して均等に行き届けることが可能です。

OJTのメリット

現場での指導方法には様々な形がありますが、OJTが注目を集めているのはメリットが多いという点が大きく影響しています。OJTの主なメリットは次の通りです。

個々人に合わせた柔軟な指導が可能

OJTの基本は新入社員と先輩社員のマンツーマン指導です。そのため、新入社員の理解度や熟達度に合わせてフレキシブルに指導方針やスピードを調整する事が可能となります。

個々人に合わせて適切な指導方法でアプローチすれば無理なく仕事を覚えてもらえるので、新入社員の負担が少なく済むでしょう。こうした環境は新入社員のモチベーション向上にも有効です。

現場のコミュニケーションが活性化する

指導するスタッフは新入社員が一人前に育つまで同じ社員が担当するのが一般的です。そのためお互いにコミュニケーションが活発になり、相互理解が深まるというメリットがあります。

また、指導者側の社員間での情報交換が盛んになる傾向も見られるので、上手くいけば会社全体のコミュニケーション活性化にも繋がるでしょう。

教育コストの削減

OJTは効率的に新入社員の指導を行うことで、教育コストの削減になるという点も大きなメリットです。

例えば、OFFJTのように座学の研修会を行うためには、一旦実務を離れてもらう必要があるため、一時的に社内の生産性が低下します。資料作成や外部講師への依頼など、金銭的なコストがかかることも多いでしょう。

OJTでは通常業務を行う中で徐々に慣れてもらうというスタイルなので、教育コストを最小限に留めることが可能なのです。

OJTのデメリット・注意点

OJTにメリットが多い反面、デメリットや注意しておきたいポイントもあるので、あらかじめ把握しておくことが大切です。OJTにおけるデメリットは以下のようになっています。

体系的・統一的な指導が難しい

OJTは基本的にマンツーマン指導となるため、一度に多くの従業員を教育するのが難しいという点には注意しておきましょう。

現場の業務に追従するスタイルで指導を進めることから、業務プロセス全体を把握しにくいこともデメリットになりえます。

現場の負担が大きい

OJTにおいて指導を行う社員は、通常業務に加えて同時進行で新入社員の面倒を見ることになります。したがって、適切な業務の割り振りが行えていないと現場の負担が大きくなり不満が出てくる可能があるので留意しておきましょう。

「仕事をこなすスキル」と「指導スキル」は別になってくるため、業務内容を理解しつつ指導スキルも備えた人選が肝となります。

指導の質にバラつきが出ることも

マンツーマンで指導を行う以上、指導者側のスキルや考え方によって教育の質にバラつきが生じる可能性は高いです。「あの人にはこう教わったのに、別の先輩には注意された」となれば、新入社員も困惑してしまうでしょう。

そのため、OJTでは指導者側に対してある程度の方針を定めたマニュアルを用意しておくのが有効です。

OJT実施に際してのポイント

OJTは自社の将来を担う人材育成に関わる重要な取り組みです。そのため、実施する際のポイントをしっかり押さえておくことが重要となります。

効果的にOJTを実施するためには、指導者側の準備を十分に整えておくことを意識してください。

例えば、指導を終えた段階で新入社員にどのような人材になっていて欲しいのか、どれくらいの期間でどの程度のスキルを身につけてもらいたいかなど、「目標を明確にしておくこと」が大切です。

具体的な道筋が見えていれば、指導する先輩社員もロジカルに教育方法を策定できるようになるでしょう。

指導スタッフの技量や人数が足りていないようであれば、OJTの実施に踏み切る前に、まずは社内で人材マネジメントスキルの定着を図ってみてください。その上でOJTに適した人材を選出して、適材適所を心がけましょう。

また、OJTはOFFJTとの併用でその弱点を補うことができます。OJTでは個別の技術指導を、OFFJTでは体系的な知識の定着を行って、効率的に運用していきましょう。

横行する名ばかりOJT問題

きちんと行えば、様々なメリットがあるOJTですが、多くの会社で名ばかりOJTが横行しています。

マネージャーが怠慢により新人教育を放棄している、またはマネジメント能力がなくやり方がわからないといった理由から、適当な社員に新入社員の教育を丸投げし、それをOJTだと主張している職場は少なくありません。

そのような職場では、往々にして、新入社員をいきなり現場へと投入し、教えてもいないことをとりあえず任せてみるという無茶ぶりをもって、OJTだとする傾向にあります。

マネージャーの怠慢による名ばかりOJTをOJTなのだと誤解せず、正しいOJTのあり方を知り、自分が指導する側になった際には、新入社員にきちんとした教育をしてあげることが重要だと言えるでしょう。