LGBT(LGBTQ+)とは? 意味と企業に求められる対応を解説

レインボーフラッグを背負った二人

LGBT(エルジービーティー)とは、Lesbian(レズビアン、女性の同性愛者)、Gay(ゲイ、男性の同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、出生時の性別と性自認が異なる人)の頭文字をとって作られた性的マイノリティの人々を表す総称です。

LGBTQ(エルジービーティーキュー)は、それに加えてQueer(クイア、規範的な性のあり方以外)やQuestioning(クエスチョニング、自分の性のあり方がわからない)という人も含めた表現となります。また、さらにそれ以外の多様な性の形も内包することを意味する+(プラス)を加えて、LGBTQ+(エルジービーティーキュープラス)という呼称も使われるようになっています。

LGBTという概念は、1990年代の半ば以降北米や欧州から広まり、現在では日本でも一般的に使用される言葉となりました。様々な個性を持つ従業員を雇用する企業としても無縁ではいられません。

今回は、そのような多様な性のあり方と企業に求められる対応についてご紹介していきます。

LGBT(LGBTQ+)と多様な性のあり方

LGBT(LGBTQ+)は、性的マイノリティを指す言葉ですが、性的マイノリティとはどのような人たちのことを指すのかを具体的に知っておくことは、性的マジョリティである人が自分と異なる性のあり方を持つ性的マイノリティの人たちと関わっていく上で大切なことです。

しかし、多くの人は、男性として生まれると身体も心も男性で恋愛対象は女性、女性として生まれると身体も心も女性で恋愛対象は男性という、いわゆるストレートな性のあり方をしています。そのようなストレートな性を持つ人にとって、LGBT(LGBTQ+)の性のあり方に真の意味で共感することは難しく、知識を得て想像して理解を深めるしかありません。

ここからは、LGBT(LGBTQ+)の多様な性のあり方について、ご説明します。

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルとは

レズビアンやゲイは、自分の身体の性別と心の性別は一致していますが、恋愛対象が異性ではなく同性です。バイセクシャルは、自分の身体と心の性別が一致しており、恋愛対象は男女を問いません。異性も同性も両方を恋愛対象として好きになることがあります。

日本では同性婚が法律によって認められていないこともあり、恋愛や結婚において悩みを抱えることが多いのが現状です。

海外では同性婚を認めている国もあり、日本でも2015年以降同性パートナー証明書の発行という同性の関係を認めるための取り組みがはじまっている自治体や企業もあります。日本もさらに同性婚の議論を前に進めていく必要がありますが、法律だけでなく日本で暮らす人々の中で同性婚や同性愛への理解を広めていくことが求められています。

トランスジェンダーとは

トランスジェンダーは、自分の身体と心の性別が一致していない人たちのことです。

たとえば、男性として生まれてきて男の子として扱われて育てられたけれど、自分のことを女の子だと思っているという場合はトランスジェンダーにあたります。また、女性として生まれてきたけれど心は男女の枠にとらわれない中性だったり無性だったりと、トランスジェンダーには様々な形があります。

性同一性障害という同じような意味の言葉がありますが、自分の性が身体と一致していなくても、それを障害や病気と捉えずに生きようと考えているトランスジェンダーの方も多くいらっしゃいます。性同一性障害という表現は失礼にあたる場合があるので、使わないことが望ましいでしょう。

クイア、クエスチョニングとは

クイアは、風変わりな、奇妙なという意味を持ち、性的マイノリティへの理解がなかった時代に侮蔑的な意味で使われていた言葉です。

本来使うべきでない言葉のようですが、かつては侮蔑されてきたマイノリティの人々の一部が、自らを指す言葉としてクイアをあえて使うことで自分たちの権利を主張し、同じマイノリティ同士の連帯感を強めてきたという経緯があります。

クエスチョニングは、自分の性についてまだわからない、どのセクシャリティもしっくりこない、もしくはあえて決めない方が生きやすいという人たちのことです。

セクシャリティは、同じ人であっても、その時々によって変わることもあるので、固定する必要はなく、決めないことで自分が生きやすいなら決めなくてもいい、これは、これからの時代に私たち全員が取り入れるべき考えなのかもしれません。

LGBT(LGBTQ+)が受けてきた差別

人間は、自分や世間一般と違うマイノリティな人を差別してしまう傾向にあります。LGBT(LGBTQ+)の人々も、これまで差別に傷つけられてきた人が数多くいます。

差別の具体例としては、「オカマ」、「ホモ」、「変態」、「気持ち悪い」などの自尊心を傷つけるような暴言が吐かれることもありますし、世間が求める恋愛や結婚ができないために家族や親戚から批判されたり、同性カップルであることを理由に住居の入居を断られたというケースもあります。マイノリティであることが知られると差別を受けるため、家族や友人にもカミングアウトできずに一人で悩み続けているという人も少なくありません。

また、トイレや更衣室の利用でも身体と心の性が一致していないと自分の思うようには使えないなど、周りが差別をしているつもりがなくても日常生活でマイノリティであるがゆえの問題が発生することもあります。病気で入院するときにも、身体が男性だからという理由で心は女性なのに男性用の病室にしか入院させてもらえないなどの事態が発生してしまいます。

マイノリティの人々が抱える問題や悩みを少しでも減らしていくためには、マイノリティでない人々が差別や偏見をなくし、どのような性を持っている人も平等に暮らせる社会を作るよう心がけなくてはなりません。

企業に求められるLGBT(LGBTQ+)への対応

LGBT(LGBTQ+)の人々は、仕事においてもマイノリティゆえの不安や悩みを抱えていることが少なくありません。

LGBT(LGBTQ+)の人が誇りをもって働くために企業に求められる対応として、PRIDE指標というものがあります。以下の5つの評価基準があるガイドラインを参考に、職場環境の整備に取り組まれることをお勧めします。

  • Policy(行動宣言)
    会社としてLGBT(LGBTQ+)に関する方針を明文化し、社内外に公開する
  • Representation(当事者コミュニティ)
    すべての従業員が性的マイノリティに関する意見を言える機会や場を提供する
  • Inspiration(啓蒙活動)
    従業員に対してLGBT(LGBTQ+)への理解を促進するための取り組みを行う
  • Development(人事制度・プログラム)
    会社の福利厚生に関して、LGBT(LGBTQ+)への制度適用に関する規定を作る
  • Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)
    LGBT(LGBTQ+)への社会の理解を促進するための社会貢献活動や渉外活動をする

これらの5つの項目について取り組むことで、社内の人間関係や働く環境が整います。カミングアウトがなくても一緒に働いている従業員の中にも性的マイノリティの人がいるかもしれない、その人にもみんなと同じように誇りをもって働いてほしいという気持ちを忘れずにいることが大切です。

このようにLGBT(LGBTQ+)の人々に対して温かく開かれた状態のことを「LGBTフレンドリー」といいます。今は企業にとって「LGBTフレンドリー」であるための努力をすることは義務だといえます。従業員の一人ひとりが自分らしく、そして互いを認め合い尊重し合って働くために「LGBTフレンドリーな企業」を目指す必要があるのです。