現場の社員たちにとっての共通の話題と言えば、上司や経営陣の悪口です。
実際、現場の社員たちから見ると、経営陣が何もしていないように見えたり、的外れなことをしているように見えることも多いのではないでしょうか。
しかし、経営陣は、曲がりなりにも、会社を興して大きくしたり、競争を勝ち抜いて出世してきた人たちです。無能なはずがありません。
なぜ、そのような印象と実態の乖離が起きるのでしょうか。今回は、経営陣が無能に見える理由や、彼らが会社の問題を解決する気があるのかいまいちよくわからない理由について考えていきたいと思います。
経営陣の分類
一口に経営陣と言っても、当然、様々なタイプの人たちがいます。
ここからは、経営陣を「無能 or 有能」、「組織型 or ワンマン」で、以下のように分類して話を進めたいと思います。
- 無能な組織型経営陣
- 有能な組織型経営陣
- ワンマン経営者
どのタイプの経営陣であっても、現場の社員から見るとそれぞれ違った理由で無能に見えてしまうのです。
無能な組織型経営陣の場合
まず、無能な経営陣が無能に見えるのは当たり前のことです。それでは、なぜその会社組織で最も優秀なはずの経営陣が無能になってしまうのでしょうか。
その理由には、以下の4つがあります。
- 出世が実力ではなく、政治で決まる
- 会社経営者としての能力適性がなかった
- 時代の変化に対する柔軟性、対応力がなかった
- 経営陣を決めた前の経営陣が無能だった
それぞれについて、詳しく見ていきたいと思います。
出世が実力ではなく、政治で決まる
人間はその性質上、群れると派閥を作り、争いを始めたがる生き物です。中には、会社の全体利益を無視することになったとしても、派閥のパワーゲームをやめない人たちがいます。
そのような人たちを経営陣から排除できない会社は、新しい経営陣を決める際にも、「会社を発展させられる人物」ではなく、「徒党を組んで他者を蹴落とすことが得意な人物」や「権力者に気に入られるのが得意な人物」が経営陣へと上りつめることになります。
会社経営者としての能力適性がなかった
それぞれの役職には、役職ごとに異なった能力が必要となります。
会社組織の特定の部門のマネジメントで優秀な結果を残せた人物であったとしても、会社全体の経営で優秀な結果が残せるとはかぎりません。
多くの場合、特定の分野で優秀な人物は、柔軟性があり、応用力が高く、他の分野でも活躍することが可能です。しかし、不幸にして例外はあります。人間であるかぎり、向き不向きはあるのです。
有能さで出世して経営陣になったとしても、会社経営者としての能力適性がなかった場合、その人物は無能だと判断されてしまうでしょう。
時代の変化に対する柔軟性、対応力がなかった
経営陣として、優秀な結果を残し続けた人たちが、急に無能になってしまうことがあります。
時代の変化やパラダイムシフトによって、今までの勝ちパターンが全く通じなくなってしまったときに、対応が遅れてしまったり、そもそも対応することができない経営陣がそれに当てはまります。
本来は、そのような状況に対応する能力も含めて期待をされているのが経営陣ですが、そこまで上りつめた者が、今までのやり方を完全に捨て去り、新しいやり方を生み出すことは、たいへんに難しいものです。傑物でもないかぎり、まず無理でしょう。
経営陣を決めた前の経営陣が無能だった
前述の3つの理由などで、一度でも経営陣が無能になってしまった際に、その経営陣がその状況を打破できる次の経営陣を選出できるかと言うと、それは難しいと言わざるをえません。
無能な経営陣が、無能な経営陣を指名する負のスパイラルが始まります。
有能な組織型経営陣の場合
一方で、経営陣が実は有能なのに、現場の社員から見た際に、無能に見えてしまうケースが多々あります。
それは、以下の2つの理由によるものです。
- 経営陣が取り組むレベルの会社の改善には時間がかかる
- 経営陣の動きや考えを各管理職が下に伝えられていない
それぞれについて、見ていきたいと思います。
経営陣が取り組むレベルの会社の改善には時間がかかる
まず、経営陣が取り組む仕事は、会社全体の戦略の策定や組織構造の大幅な見直しなど、規模の大きなものとなります。発案から完了まで、長いもので数年から10年単位で時間がかかることもめずらしくありません。
現場の社員からすれば、「そんなことすぐに改善できるだろ」と思うようなことであっても、予算的な問題、人員的な問題、法律的な問題など、調整事項は多岐に渡り、さらに、苦労の末に固まった施策を、いざ会社組織に反映させようとしても、役員から部長、部長から課長、課長から現場社員へと、組織全体に浸透させるのには多くの時間を要します。
また、施策の意図を理解できない管理職や、施策に意図的に造反する管理職はどこかしらかの部門で必ず発生し、浸透のさまたげとなります。邪魔者を一人一人片づけ、現場社員に意図を啓蒙し、組織として新しい体制に移行する頃には、現場の社員は待ちくたびれ、悪感情を限界までためこんでいることでしょう。
そして、実施された施策もはじめから完璧であることはほとんどなく、実施後、現場の実態に合わせた調整が必要となります。どのようなことにもトライアンドエラーは付き物であり、計画上、実施後の調整も織り込み済みなものです。しかし、散々待たされた現場社員からすると、「対策は遅いし、的外れだ」との印象が残ってしまうのです。
経営陣の動きや考えを各管理職が下に伝えられていない
前述のように、経営陣が己の職責を全うしていても、現場の社員にはなかなか伝わらないものです。
そして、本来、それを伝えるのが各部門の管理職の役割となります。
経営陣が今何を考えているのか、会社が今後どのように変わっていくのかなど、会社の方針を各管理職が自身の預かる部署内で周知することで、経営陣と現場社員の間の行き違いを防ぐのが本来あるべき姿となります。
しかし、多くの組織で、管理職はそのような役割を全うすることができておらず、仕方なく経営陣が全社員に向けて直接メッセージを発信するなどの対策を行っています。
そのような苦肉の策も、現場社員の心には響いていないのが実態です。経営陣の会社全体に向けた言葉は、現場社員に実感が伴った形で届くことはありません。各管理職がそれぞれの現場の状況や抱えている問題に合わせ、経営陣の言葉を現場社員に伝わりやすい言葉に翻訳して伝えることで、はじめて現場社員は納得いく内容として受け取ることができます。
経営陣がいくら有能でも、役割を全うしない無能な管理職はまぎれこみます。現場社員は、自分の会社の経営陣がきちんと仕事をしているのか、自分の目と耳で確かめてみることをお勧めします。
無能な管理職にお悩みの方は、以下の記事もご参照ください。
ワンマン経営者の場合
ワンマン経営者の場合は、組織型の経営陣とは分けて考える必要があります。
彼らは、今までに挙げてきた経営陣とは異なり、多くの場合、自身で会社を興し大きくした有能な経営者であり、自身の施策を細かい調整を経ずに会社全体に反映することができ、会社全体へのメッセージ発信力も強力に保持しているためです。
そのような彼らが、なぜ現場の社員から見ると無能に見えてしまうことがあるのでしょうか。
その理由は簡単で、人間が未来永劫、永遠に完璧でいることはできないからです。
どのような人間も必ず失敗はします。判断を間違えます。時代の流れについていけなくなります。
組織型の経営陣は、集団の力で個人の失敗に対してのリスクヘッジをしていますが、ほとんどのワンマン経営者には、失敗を止めてくれる、方針に異を唱えてくれる人が存在していません。
ワンマン経営者は、いずれ必ず訪れる、経営上の失敗、判断ミスのときに、無能と言われる運命なのです。
経営陣が無能に見えるときに
経営陣が無能に見えるときに、現場の社員にできることはただ一つ、周りの意見に左右されず、冷静に、客観的に、事実だけを持って、自分の会社の経営陣を見つめることです。
経営陣に対しての周りの意見が批判一辺倒だったとしても、ときには会社の将来は明るく、ときにはやはり転職の必要があるかもしれません。
経営陣の有能、無能は社員全員の将来を左右します。自分自身の生活を守るために、正しい状況判断をしていきたいものです。