部下や後輩の正しい叱り方 – 一歩間違えると即パワハラに

時代の流れとともに、今まで黙認されていたことがハラスメントと言われるようになり、部下や後輩への叱り方に困っているという声を多く聞きます。

しかし、それは正しい叱り方、教育のあり方がわかっていない場合に起こる問題であり、正しい叱り方がわかっていれば、パワハラ(パワーハラスメント)などと言われることなく、効果的な教育を行うことが可能です。

今回は、パワハラ認定されない、本来あるべき部下や後輩の正しい叱り方について、ご紹介していきたいと思います。

叱る目的

そもそも、部下や後輩を叱るのは教育のためです。今後のために、その間違いを指摘し、同じ過ち、ミスを犯させないために、正す行為です。

自分の怒りの感情を発散するために叱っている上司や先輩がいるとすれば、それは叱る目的自体を理解していない、業務遂行能力が欠如している状態だと言えるでしょう。

叱る目的を達成するために必要なこと

叱る目的を達成するためには、以下の点を押さえておく必要があります。

  • 部下や後輩の過ちを、叱る側が正しく把握する
  • 部下や後輩の過ちを、部下や後輩が理解できる形で伝える
  • 部下や後輩の過ちの再発防止策を、部下や後輩と合意する

部下や後輩の過ちを、叱る側が正しく把握する

叱る側は、部下や後輩の犯した過ちの詳細と、その過ちを犯すに至った経緯及び理由を正しく把握する必要があります。

「今度からちゃんとやっておけよ」と言うだけでは、なんの問題解決にもなりません。どのような単純ミスであったとしても、そこには発生した理由が必ずあります。フローが煩雑でわかりにくかったのであれば、フローを改善した方がよいでしょう。部下や後輩の注意不足であれば、業務過多などによる注意散漫や、なにかしらかの理由による意欲の低下を疑い、改善を検討する必要があるでしょう。

叱る立場の人間には、問題を改善する責任があり、そのための正しい状況把握と原因分析は必須となります。

部下や後輩の過ちを、部下や後輩が理解できる形で伝える

正しい状況把握と原因分析ができた上で、部下や後輩が理解できる形でそれを伝える必要があります。

部下や後輩は、自分の行った行為のなにがどのように間違っていたのかを自覚しない限り、今後も同じ過ち、ミスを繰り返すことでしょう。論理的に、納得感のある形で、相手が理解するまで伝えなければなりません。

部下や後輩の過ちの再発防止策を、部下や後輩と合意する

叱ることの最終的な目的は、過ち、ミスの再発防止です。

「なぜ、問題が発生したのか」、「再発を防止するためにはどうしたらよいのか」、「再発防止策をどのように実行していくのか」を、部下や後輩と話し合いながら、一緒に考え、合意し、履行していく必要があるでしょう。

叱る行為がパワハラになりやすい理由

それら叱る過程の中で、パワハラは日常的に発生しています。いったいなぜ叱る行為がパワハラにつながってしまうのでしょうか。

パワハラについて、2019年5月現在、厚生労働省は以下のように定義しています。

職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義をしました。

この定義においては、

  • 上司から部下に対するものに限られず、職務上の地位や人間関係といった「職場内での優位性」を背景にする行為が該当すること
  • 業務上必要な指示や注意・指導が行われている場合には該当せず、「業務の適正な範囲」を超える行為が該当すること

を明確にしています。

叱られることは、ほとんどの場合、精神的な苦痛を伴います。「業務の適正な範囲」と認められないかぎり、それはパワハラとなってしまいます。

それでは、「業務の適正な範囲」とは、具体的にどのような範囲なのでしょうか。その範囲は誰が決めるのでしょうか。通常は、良識の範囲内で、理不尽な叱り方、教育をしていなければ問題ないでしょう。しかし、基準が明確化されていないため、被害者側からパワハラだと訴えられてしまえば、そのままパワハラだと認定されることもあるのが実情です。

会社側では、問題が起こらないように、精神的、身体的苦痛が発生する行為のすべてを行わないように指示しているところもあるほどです。

パワハラにならない正しい叱り方

そのようなリスクが存在する中、叱る側の人間は、どのように部下や後輩を叱ればよいのでしょうか。以下の四つのポイントが重要となります。

感情的にならない

人間は、自分の期待している状態から異なる事態に陥った際に、怒りの感情を芽生えさせがちです。部下や後輩が期待どおりに動いてくれずに、ミスを犯した際に、怒りの感情をあらわにする上司や先輩は多いことでしょう。

怒りの感情は、相対する人間に、恐怖の感情を抱かせ、相当の圧力、精神的苦痛を与えます。最悪、暴力、身体的苦痛に発展することもあるでしょう。それらは、パワハラの認定条件に該当します。

しかし、怒りの感情は、前述のとおり、叱る目的には必要のないものです。どのようなときでも冷静に、感情的にならないことが大切です。

論理的に、納得感を与える

感情的に言われなくても、部下や後輩は、自身のミス、至らない点を指摘され、その行為を否定される際は、どうしても精神的苦痛を感じるものです。

それらの精神的苦痛を感じさせる教育的指導を「業務の適正な範囲」とするためには、指摘や否定を論理的に、相手に納得感がある形で伝える必要があります。これは、前述の「叱る目的を達成するために必要なこと」をきちんと押さえておくことで可能となるでしょう。

人前では叱らない

また、人前で叱られる、注意されることに大きな精神的苦痛を感じる人たちがいます。感情的ではなく、やさしく注意する状況ならば問題ないかもしれませんが、念のため、可能であれば、周りに他の人の目がない二人きりの場所で指導を行う方が好ましいでしょう。

時代の流れもあり、注意され慣れていない、否定され慣れていない、叱られることに耐性のない人たちは、これからも増え続けることが予想されます。パワハラかどうかは、受け止める側の感じ方次第なところも大きく、叱る際は、相手の性格を注意深く気にかける必要があるでしょう。

日ごろから信頼関係を構築しておく

そして、なにより大切なことは、日ごろから、部下や後輩と信頼関係を構築しておくことでょう。

怒りの感情を使って叱る人たちが一様に言う「こうやって強く言わないと重大さが伝わらない、言うことを聞かない、効果がない」というセリフがあります。これは、普段のマネジメント業務がきちんとできておらず、部下や後輩と信頼関係が構築できていないと自白してしまっているようなものです。

普段から、褒めるときには褒め、好意的に接し、良識的な上司、先輩として信頼関係を構築できていれば、いざ叱るときに感情的にならずとも、真剣に向き合うだけで、相手はその重大さを認識してくれることでしょう。逆に、普段から理不尽に、高圧的に接していれば、叱るときに感情的になったとしても、またいつものことだとその重大さを認識してくれないのではないでしょうか。

パワハラという言葉に過剰に反応して、必要以上に委縮する必要はありません。部下や後輩のために、そして、自分のために、信頼関係に基づいた教育的指導を続けていきましょう。