転職をして、転職前よりも状況が悪化することは、決してめずらしいことではありません。
転職の最大の問題は、実際に働いてみるまで、その職場が本当に自分に合っているのかどうかわからないところです。事前に面接で話を聞いたり、インターネット上で会社の評判を調べてみても、ミスマッチを完全に防ぐことはできません。
転職は、多かれ少なかれギャンブルの要素が伴うものです。それでも、自分の身や心を守るため、夢をかなえるため、転職を決断しなければならないことがあります。
今回は、転職に失敗してしまったところから、どのように行動するのが最善手なのか、どのようにすれば失敗を挽回できるのかについて、ご紹介したいと思います。
状況を改善するための下準備
まず、最も大切なことは、「転職しなければよかった」、「会社選びに失敗した」などという後悔の気持ちを、いったん隅に追いやることです。
苦境に立たされている状態において必要なのは、冷静な判断力です。気分の落ち込みは、脳内物質のバランスを狂わせ、思考に悪い影響を与えます。
過去のことは全て保留し、済んだことだと無理やりにでも割り切り、「今ここからどうするか」だけを考えることに集中しましょう。
そもそも、状況がただでさえ悪いのに、延々と落ち込むことで、さらに疲弊するのは二重の損です。その上、失敗を挽回するための冷静な判断力まで失ってしまっては、将来に渡って続く深刻な損失となってしまいます。後悔の気持ちを封印し、損失を最小限に押しとどめることが、この時点での最善手だと言えるでしょう。
問題を整理し、分析する
冷静な判断が可能となったところで、「今ここからどうするか」、具体的な問題の解決について考えていきましょう。問題を解決する上でまず始めに行うべきことは、現状の正確な把握です。現状の何が問題なのか、その原因は何なのか、解決の道筋はどこにあるのか、一度書き出して、整理してみることをお勧めします。
例えば、転職時に発生しがちな問題としては、以下のようなものが挙げられます。
- 新しい職場の人間関係になじめない
- 前職よりも給料が下がってしまった
- 思っていたよりも残業が多い
- やりたかった仕事ができない
- パワハラやセクハラなどがあり職場環境が劣悪である
このような問題の原因は何なのでしょうか。解決の道筋はどこにあるのでしょうか。
例えば「新しい職場の人間関係になじめない」場合
以下のような視点で考えることができます。
- そもそも、なじむ必要はあるのか、ないのか
- なじめないのは、特定の相手に限るのか、職場全体なのか
- 原因は、自分にあるのか、同僚にあるのか
- 時間が解決してくれる問題なのか、してくれない問題なのか
- 自分の努力で解決できる問題なのか、できない問題なのか
例えば「前職よりも給料が下がってしまった」場合
以下のような視点で考えることができます。
- 給与の代わりに得るものはあるのか、ないのか
- 給与は、評価されなかった自分だけが低いのか、会社の業績が悪く皆も低いのか
- 自分だけが低い場合、その評価は妥当なのか、会社側がおかしいのか
- 自分の努力で解決できる問題なのか、できない問題なのか
例えば「思っていたよりも残業が多い」場合
以下のような視点で考えることができます。
- 残業はやりがいをもたらしてくれるのか、つらいだけなのか
- 残業が多いのは、所属している部署だけなのか、会社全体なのか
- 原因は、自分の仕事が遅いからなのか、与えられる仕事量が多いからなのか
- 残業が多いことを、会社は是正しようとしているのか、是認しているのか
- 自分の努力で解決できる問題なのか、できない問題なのか
例えば「やりたかった仕事ができない」場合
以下のような視点で考えることができます。
- 入社前の会社側の説明に落ち度があるのか、自分が勘違いしただけなのか
- できる可能性がまるでないのか、いずれ任せてもらえる予定なのか
- 任せてもらえない場合、自分の実力が足りていないのか、その他に理由があるのか
- 他にやりたい仕事はありそうなのか、なさそうなのか
- 自分の努力で解決できる問題なのか、できない問題なのか
例えば「パワハラやセクハラなどがあり職場環境が劣悪である」場合
以下のような視点で考えることができます。
- パワハラやセクハラはどこの会社でもあるレベルなのか、許容できないレベルなのか
- パワハラやセクハラがあるのは、所属している部署だけなのか、会社全体なのか
- パワハラやセクハラを会社は是正しようとしているのか、是認しているのか
- 内部通報制度は整備されているのか、されていないのか
問題の解決方法を考える
以上のように、問題を整理し、分析することによって、その問題の解決方法が見えてきます。
冷静に考えれば、時間が解決する問題もありますし、再度転職しなければ解決しない問題もあります。それらの解決方法を大別すると、以下のようになります。
- 時間の経過を待つ
不慣れなだけであったり、そのうち自然と解消されていく場合は、深く考えずに日々自分ができることを誠実に行うことをお勧めします。 - 努力をする
問題が理不尽なものではなく、自分のスキル不足や環境へ適応するための努力が足りていないことが原因であれば、問題解消に向けて努力をするしかありません。ただし、間違った努力は無駄となってしまいます。良識ある先輩に意見を求めてから始めることをお勧めします。 - 内部通報制度を利用する
パワハラやセクハラなど、理不尽な目にあっている場合で、会社に是正する意思があり、制度が整っている際には、有効な手段です。 - 部署異動を願い出る
所属部署や直属の上司が原因である場合に有効です。ただし、入社後一年間は部署異動ができないなど、期間に決まりがある会社もあります。 - 転職をする
他に解決方法がない場合、もはや再度転職するしか解決ができないこともあるでしょう。 - 我慢する、許容する
人間の組織である以上、どこの会社であっても何かしらかの問題はあります。解決とは言えませんが、現実として耐えなければならない問題もあります。
問題の解決に動く
問題の解決方法が見えたなら、あとは実際に行動するだけです。人生を左右する決断となりますので、慎重に進めましょう。
再度の転職を決断した際には、短い在職期間が転職の不利にならないように、我慢できる範囲でよいので在職期間を伸ばし、具体的な経験や実績を積んでおきましょう。
また、同じ失敗を繰り返さないために、転職エージェントや応募先の企業に対しては、自分が許容できないことを素直に伝えるようにしましょう。「こんなことを言ったら選考が不利になる」と思い、本音を伝えないことはミスマッチの原因となります。
選考は、会社側が求職者の合否を決める試験ではありません。お互いの相性を確認するお見合いです。表面ばかりの選考対策を行い、合わない会社に内定をもらっても、何の意味もありません。
失敗をただ後悔するのではなく、失敗から学び、より良い人生とする糧にしていきましょう。