部下が辞めないためのマネジメント術6選 - 上司が知らない部下の本音

退職届を出す部下

部下の退職は突然です。人が誰しも、自身の不満をわかりやすく見せてくれているとはかぎりません。部下は、日々の不満や不安をため続け、辞めるかどうかを悩み続け、何かのきっかけでふいに退職を決意します。

上司が、部下の退職の気配に気づくころには、部下はすでに退職することを心に決め、転職活動を行っていることでしょう。その段階からリカバリーを行うのは難しいと言わざるを得ません。

部下を退職させないために、上司としてできることは、日ごろから、部下への接し方、マネジメントを適切な形で行い、不満や不安の芽を摘んでおくことです。

それでは、部下が辞めない適切な接し方、マネジメントとは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

今回は、部下が会社や上司に求めていることに目を向け、部下に今の職場で働き続けてもらうために必要なマネジメント方法について考えていきたいと思います。

部下が会社を辞めようと思うとき

まずは、部下の気持ちになって考えてみたいと思います。いったい、部下はどのような瞬間に、会社を辞めるか悩み始めるのでしょうか。

そのきっかけは、以下の6つに分類することができます。

  • 給与や評価に対しての不満
  • 仕事内容とキャリアプランのミスマッチ
  • 仕事内容や環境の心身への負担
  • 会社の将来性への不安
  • 会社や上司への嫌悪感
  • 魅力的な他社からの誘い

これらが単独で原因となることもあれば、複合的に重なり合って影響することもあるでしょう。

それぞれについて、詳しく見ていきたいと思います。

給与や評価に対しての不満

「思ったように給与が増えていかない」、「思ったように評価をしてもらえない」などといった悩みは、退職を考え始める理由としては一般的なものでしょう。

人は、自身の能力を、実際よりも過大に評価する傾向にあります。また、仕事ができない人間ほど、自分は仕事ができると思い込んでいるものです。例え、会社や上司が妥当な評価を部下に下していたとしても、部下は現状の待遇に不満をつのらせている可能性があります。

仕事内容とキャリアプランのミスマッチ

真面目な部下は、自分のキャリアプランを持っているものです。現在担当している業務の延長線上に、キャリアプランとの合致点が見いだせなければ、転属か退職を検討することでしょう。

また、明確なキャリアプランを持っていない部下であっても、「現在担当している業務が自分の将来のためになっていない」、「このまま続けても何の技術も知見も得られない」と感じているならば、同様に転属か退職を検討することでしょう。

仕事内容や環境の心身への負担

「業務量が多すぎる」、「自身の能力に対して業務の難易度が高すぎる」、「仕事でかかわる人間との関係性が劣悪すぎる」、「肉体への負担が大きすぎる」など、心身への負担が大きい場合は、自分を守るために転属か退職を検討することでしょう。

何がつらいか、何を耐えがたいと感じているかは、人それぞれであり、外から見ていても気づけないことが多くあります。

会社の将来性への不安

優秀な部下は、会社を冷静に見ています。将来性がない会社に長く居続けることは避けたいと考えるでしょう。

また、実際には会社の将来に心配がない状態だったとしても、若手から見る経営層はいつだって頼りなく見えるものです。

経営層が会社の大きな問題を解決するためには、多くの調整と長い下準備が必要となります。その動きが見えない従業員からは、経営層が会社の根本的な問題をいつまでも放置しているように見えることでしょう。

会社や上司への嫌悪感

人間は感情の生き物です。会社や上司、または職場そのものが嫌いで仕方なくなることがあります。

多くの場合は、ここまでご紹介してきた内容が原因となって引き起こされるものですが、上司の顔が生理的に受けつけないなど、本当にささいなことがきっかけとなって、退職を考えるほどの嫌悪感を抱くに至ることもあります。

魅力的な他社からの誘い

優秀な部下は、業務でかかわる様々な会社の人たちと、将来につながる人間関係を形成し、幅広いネットワークを構築していきます。

そのような人材は、他社からしても、のどから手が出るほどほしい人材です。熱烈なラブコールの末、転職することは不思議なことではないでしょう。

部下が辞めない上司のマネジメント術6選

それでは、それらの部下の不満や不安などに対して、上司はどのようなマネジメントをしていけば良いのでしょうか。

「給与や評価に対しての不満」への対処法

前提として、部下への評価を、合理性を持って、正当に行うことが何よりも大切だと言えます。その上で、評価面談などの際に、その評価に至った理由を部下にきちんと説明することが必要です。

特に、マイナス評価になった点については、事細かに説明し、どのように改善すれば評価を上げることができるのか、上司として具体的に助言を行う必要があります。そのためには、評価時期だけではなく、普段から部下の仕事ぶりを見ておかなければなりません。上司の役目として、評価と指導がセットであることを忘れてはいけません。

重視すべきは「部下の納得感」です。部下が「わかりました」と言ったとしても、それは表面上だけで、内心では「これ以上、この人と話してもむだだ」と思っている場合が多くあります。注意しましょう。

「仕事内容とキャリアプランのミスマッチ」への対処法

まず、部下がどのようなキャリアプランを描いているのかを、上司として知っておく必要があります。

消極的な性格の部下は、キャリアプランややりたい仕事について、自ら進んで話してはくれないでしょう。上司として、部下から将来的にどのような仕事をしていきたいかを聞き取っておき、その内容を考慮した業務を割り振るように心がけ、指導していきましょう。

キャリアプランが定まっていない部下に対しては、上司として一緒にキャリアプランを考えてあげる必要があります。キャリアプランがない状態で仕事をしていると、「なんのためにこんな仕事してるのかな」、「なんだかよくわからないけどやりたいことと違う気がする」など、漫然とした不満を積み重ねることとなり、対処も難しくなってしまいます。

キャリアプランの作り方については、以下の記事をご参照ください。

20代からのキャリアプランの作り方 - 中年で無能社員と呼ばれないために
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「仕事内容や環境の心身への負担」への対処法

マネジメントの一環として、部下をきたえるつもりで、業務負荷を大きくしていくことはあると思います。しかし、人間は自分自身の限界がわからないものです。部下が、自覚がないまま限界を迎える前に、上司として調整を行う必要があります。

部下が自身の限界に気づいている場合でも、助けを求めたり、ギブアップをすることで、怒られたり、評価が下がることを気にして、自分からアラートをあげてこないことがあります。中には、明らかに限界なのにもかかわらず、大丈夫だと言い張り続ける部下もいることでしょう。

部下の限界を察する上で、部下の残業時間や顔色、普段の様子などに注意を払うことが必要です。

また、普段から、仕事はチームで行うものであり、自分自身の限界を把握して、いち早くアラートをあげることが大切である旨を伝え、上司としてアラートをあげやすい空気を作っておくことをお勧めします。

「会社の将来性への不安」への対処法

上司として部下に行うべきは、経営層と部下の間の役割を担う者として、日ごろから経営層の考えを部下に共有することです。

経営層が部下が抱いている不安と同じ問題意識を持っており、改善に向けて動いていることがわかれば、部下の不安もいったんは解消されることでしょう。

もし、経営層が何の問題意識も持っておらず、改善にも動いていない場合には、上司である自分が、レポートラインを通じて、問題意識を上に伝える必要があります。上司のその行動が、部下にとって多少の気休めにはなるでしょう。

なお、本当に、会社に将来がないのであれば、部下の退職で悩む前に、自身の転職を検討することをお勧めします。

「会社や上司への嫌悪感」への対処法

感情的な好き嫌いの制御は難しいのが現実ですが、今までご紹介してきた対処法を実践する、清潔感に気をつける、各種ハラスメントを行わない、コンプライアンスを順守するなどの行動を心がけることで、多くの場合は対処が可能です。

また、以下の記事もご参照いただければと思います。

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「魅力的な他社からの誘い」への対処法

他社よりも、今いる職場を魅力的にするしか対処法はないと言えます。

しかし、慣れ親しんだ環境を離れる心理的ハードルは高く、実際には、自社の方が有利な状況にあります。今までご紹介してきた対処法をしっかりと行っておけば、問題ないでしょう。

その上で、知らない間に、他社と話をまとめられ、突然退職を告げられないように、普段から転職などについてもオープンに相談してもらえる関係性を築いておくことが大切です。

そうすれば、他社から提案された条件よりも良い条件を提示して引き止めるチャンスも得られます。

完璧な上司にはなれなくても

ここまで、部下を辞めさせないための6つの対処法をご紹介してきました。

しかし、これは理想論であり、実際には上司としての役割を完璧に演じ切ることは難しいでしょう。

それでも、理想を目指すことで、拾い上げることのできる部下の気持ちは確かに増やすことができます。

不満を表に出さない部下は数多くいます。上司として、部下の声なき声を想像し、心身ともに健康に、納得感を持って働ける環境の整備に努めましょう。