イノベーションとは? 意味と事例と「イノベーションのジレンマ」

イノベーションとは、「革新」、「刷新」、「新機軸」などの意味で使われているビジネス用語です。

新技術や新製品にとどまらず、革新的な生産方法、新しい販路の開拓、資源調達先の新規獲得、既存の枠組みにとらわれない組織やシステムの構築など、創造性をもって、社会に新たな価値をもたらすことを意味しています。

当初、日本では「技術革新」と翻訳され、定着していましたが、革新の範囲は「技術」に限られないとの指摘もあり、昨今、中小企業庁などは「経営革新」という訳語を使うようになっています。

英語の「innovation」をそのまま使ったカタカナ語です。

今回は、そんなイノベーションの5つの分類とそれぞれにおける事例、重要な理論であるイノベーションのジレンマの解説、ビジネスシーンにおける使われ方についてご紹介していきたいと思います。

目次

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イノベーションの5つの分類と事例

イノベーションは、もともと、オーストリア出身の経済学者であるヨーゼフ・シュンペーター氏が、1912年に発表した著書『経済発展の理論』の中で提唱した概念です。

シュンペーター氏は著書の中で、イノベーションを以下の5つのタイプに分類し、経済の発展には、企業家によるイノベーションが重要だと説いています。

  1. 新しい生産物の創出(プロダクト・イノベーション)
  2. 新しい生産方法の導入(プロセス・イノベーション)
  3. 新しい市場や販路の開拓(マーケット・イノベーション)
  4. 新しい資源やその供給源の獲得(サプライチェーン・イノベーション)
  5. 新しい組織の実現(オーガニゼーション・イノベーション)

それぞれのイノベーションについて、詳しい説明と実際の事例を見ていきたいと思います。

1. 新しい生産物の創出

「プロダクト・イノベーション」と呼ばれる「新しい生産物の創出」とは、それまで市場に類似するものが存在していなかった、革新的、画期的な新製品や新サービスを開発することを意味します。

プロダクト・イノベーションの事例

プロダクト・イノベーションの事例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • パソコンの個人への普及を促したAppleの「Apple II」
  • 消費者に音楽を持ち歩くという概念を提供したソニーの「ウォークマン」
  • 携帯電話の新機軸となり、人々のライフスタイルにも影響を与えたAppleの「iPhone」

2. 新しい生産方法の導入

「プロセス・イノベーション」と呼ばれる「新しい生産方法の導入」とは、それまで業界で行われていなかった、革新的、画期的な製品の生産方法を導入することを意味します。

新しい生産方法をゼロから生み出すだけではなく、他の業界で行われている方法を導入することも含まれます。

プロセス・イノベーションの事例

プロセス・イノベーションの事例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 生産工程において、あらゆるムダを徹底的に排除する「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」を柱としたトヨタ自動車の「トヨタ生産方式」
  • 自社で商品企画から製造、販売までを一貫して行うことで、消費者ニーズの商品への迅速な反映や効率的な在庫コントロールを可能とするGAPやユニクロなどが導入している「SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)」

3. 新しい市場や販路の開拓

「マーケット・イノベーション」と呼ばれる「新しい市場や販路の開拓」とは、これまで誰も参入してこなかった市場を開拓し、新しい消費者や販売先を獲得することを意味します。

マーケット・イノベーションの事例

マーケット・イノベーションの事例としては、スマートフォン向けゲームアプリ市場において、今までゲームをする習慣のなかった多くの消費者を取り込むことに成功したナイアンティックと株式会社ポケモンによる位置情報ゲーム「Pokémon GO(ポケモンゴー)」が挙げられます。

4. 新しい資源やその供給源の獲得

「サプライチェーン・イノベーション」と呼ばれる「新しい資源やその供給源の獲得」とは、製品を製造するために必要な原材料やその供給ルートを新しく確保することを意味します。

なお、サプライチェーンとは、製品の原材料や部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売までの一連の流れのことを意味します。

サプライチェーン・イノベーションの事例

サプライチェーン・イノベーションの事例としては、毎年、経済産業省が「サプライチェーン イノベーション大賞」として発表しており、表彰された各社が、製造メーカー、卸売業、小売業の各層が協力してのサプライチェーン全体の最適化を進めています。

過去の大賞受賞企業は以下のとおりです。

  • 2020年:株式会社PALTAC、株式会社薬王堂、ユニ・チャーム株式会社の連名
  • 2019年:キユーピー株式会社
  • 2018年:アサヒビール株式会社、キリンビール株式会社、サントリー食品インターナショナル株式会社、サッポロビール株式会社、日本酒類販売株式会社の共同提出事例
  • 2017年:三菱食品株式会社
  • 2016年:株式会社イトーヨーカ堂

5. 新しい組織の実現

「オーガニゼーション・イノベーション」と呼ばれる「新しい組織の実現」とは、組織を改革することで、企業や業界に影響を与え、新しい価値を生み出すことを意味します。

オーガニゼーション・イノベーションの事例

オーガニゼーション・イノベーションの事例としては、各社で行われている既存組織の構造改革や、社内ベンチャー制度の採用、持株会社制への移行、フランチャイズシステムの導入などが挙げられます。

イノベーションのジレンマとは

イノベーションに関する有名な理論として、アメリカのハーバード・ビジネススクールの教授であるクレイトン・クリステンセン氏が1997年に提唱した「イノベーションのジレンマ」があります。

イノベーションのジレンマとは、大手企業や優良企業が、顧客や株主のニーズに耳を傾け、自社の利益につながる合理的な判断を行っているにもかかわらず、新興企業に敗北を喫してしまう現象を意味します。

なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか。

イノベーションのジレンマに陥る3つのプロセス

正しい経営判断を続けているはずの大手企業や優良企業が、イノベーションのジレンマに陥ってしまうプロセスは以下のとおりです。

1. 破壊的イノベーションの軽視

すでに成功を収めている大手企業や優良企業は、顧客のニーズに応じて、既存の人気製品やサービスの改良を進めていきます。これを「持続的イノベーション」と言います。

一方で、顧客のニーズとは関係なく、既存の製品やサービスの価値をいったん破壊し、全く新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」に関しては、経営上の合理性を見出すことができず、軽視する傾向にあります。

2. 持続的イノベーションの顧客ニーズからの逸脱

持続的イノベーションによる既存の製品やサービスの改良は、いつしか顧客のニーズを上回るレベルへと達してしまい、顧客の望まない改良を進めるに至ります。しかし、今までの成功体験や、株主からの要求により、その改良をやめることができません。

顧客たちは、次第に既存の製品やサービスの改良内容に対して、関心や特別感を持てなくなっていき、別の全く新しい価値に目が向くようになります。製品やサービスとして洗練されておらず、たとえ性能が低くても、破壊的イノベーションの方に関心が向いていくのです。

3. 破壊的イノベーションがもたらした新機軸への出遅れ

破壊的イノベーションにより生まれた新しい製品やサービスは、当初は、低価格で利益率が低かったり、市場規模が小さかったりするため、大手企業や優良企業は、合理的な判断として参入をためらう傾向にあります。

新興企業の努力により、新しい製品やサービスが新機軸として消費者に受け入れられ、市場が無視できない規模になったときには、既存の大手企業や優良企業は完全に出遅れた形となります。

イノベーションのジレンマの事例

イノベーションのジレンマの事例としてよく取り上げられるのは、「カメラ市場におけるスマートフォン搭載カメラ」の事例と「携帯電話市場におけるスマートフォン」の事例です。

それぞれについて、見ていきたいと思います。

カメラ市場におけるスマートフォン搭載カメラ

かつて、フィルムカメラを製造していた既存のカメラメーカーは、デジタルカメラの登場に際して、当初の画質の粗さなどをあなどり、注意を向けていませんでしたが、進化を続けたデジタルカメラに市場のシェアを大きく奪われることになりました。

その後、持ち前の技術力により、なんとかデジタルカメラ市場に対応した既存のカメラメーカーでしたが、今度は、スマートフォンに市場のシェアを大きく奪われることになります。

画質の粗さから既存のカメラと住み分けができると考えられていた携帯電話搭載のカメラでしたが、スマートフォンの登場による画質面の急速な改善や、手軽に写真データの交換が可能となるなど、各種アプリケーションによる多機能化といった新しい価値の創出により、消費者の心をつかんだのです。

携帯電話市場におけるスマートフォン

日本の携帯電話メーカーは、顧客のニーズに応じて、フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)の製造と改良を続けていました。

しかし、Appleの「iPhone」の登場と日本への上陸によって、フィーチャーフォンは、スマートフォンに市場のシェアの大半を奪われる形となります。

現在では、先行してスマートフォンの製造に力を入れてきた海外メーカーに追いやられる形で、多くの日本のメーカーが携帯電話市場から撤退する結果となりました。

イノベーションのジレンマへの対応策

そのようなイノベーションのジレンマに対して、企業はどのような対応策を取ることができるのでしょうか。

その対応策は、主に以下の3点にまとめることができます。

  • 今がどんなに好調であろうと、イノベーションのジレンマに陥る可能性があると知る
  • 持続的イノベーションだけではなく、破壊的イノベーションにも挑戦する体制を構築する
  • 将来的な顧客ニーズを想像し、他社による破壊的イノベーションの萌芽を見逃さない

人間は、自らに不利となる情報を認めたがらないものです。しかし、自分たちに都合の悪い未来予想図に正面から向き合い、将来に渡って安定した事業の継続を目指すことが、経営者としての役割なのではないでしょうか。

イノベーションのビジネスシーンでの使われ方

ビジネスシーンにおいて、イノベーションは、「今まで自社でやっていなかった革新的なことを実現したい」という意思を表明するときに使われることが多い言葉です。

しかし、中には、自身の発言に説得力を持たせるために、それらしいカタカナ語を利用しているだけで、具体的な中身もなく、ここまでご紹介してきた学術的な定義や背景もほとんど知らずに発言している人も少なからずいます。

オフィスでの日常的なコミュニケーションにおいては、定義や背景を知らずに、なんとなくで使っても問題が起こることなどほとんどありませんが、上長への提案時などにおいては、言葉の正確な定義や、今まで世の中でどのような議論がなされてきたのかなど、基本的な知識を身につけてから使用することをお勧めします。

中身がともなっていないにもかかわらず、イノベーションと連呼していると、逆に薄っぺらく感じられてしまうので注意が必要です。

イノベーションを使った例文

最後に、イノベーションを使った例文をご紹介します。

我が社の組織にはイノベーションが必要だ。
かつてイノベーションを起こした我が社の商品も、すでに市場で淘汰された。
イノベーションイノベーションと言うが、具体的な案はあるのか?
持続的イノベーションは行ってきたが、新興企業による破壊的イノベーションの前に敗れ去った。
イノベーションのジレンマの視点を持ち合わせていない企業は遠からず凋落するだろう。

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