自主的に動かない部下と指示しない上司…どっちが悪い? 指示待ち是非

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「部下が指示待ち人間で、自主的に動かない」といった管理職の方の愚痴を聞くことがあります。一方で、部下の立場からは、「上司がちゃんと指示をしてくれないと動きようがない」といった声も聞かれます。

両者のすれ違いは、なぜ生まれるのでしょうか。そして、非はどちらにあるのでしょうか。

今回は、職場で発生しがちなこの問題について、考えていきたいと思います。

目次

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部下はどこまで自主的に動く必要があるのか

まず、部下はどこまで自主的に動く必要があるのでしょうか。「指示待ち人間になるなと言われたのに、動いたら動いたで勝手に動くなと怒られた」という話もよく聞きます。一見、理不尽にも思えるその判断の基準はどこにあるのでしょうか。

前提として知っておきたいのは、会社組織内におけるそれぞれの役割と権限です。それがわかれば、おのずと「自主的に動く」の正しい意味合いがわかるようになります。

「自主的に動く」の正しい意味合い

管理職は、ほとんどの場合、法律上、管理監督者と呼ばれる経営層と一体の存在であり、経営方針を決定して実行する一定の権限を有しています。

そして、管理監督者ではない、その部下である一般社員は、経営方針を決定して実行する権限を有しておらず、指示されていないことを実行してしまうと途端に越権行為となってしまいます。

そこで、管理監督者は、一般社員に一定の業務範囲における裁量権(自ら判断してよい権利)を業務指示として与え、一般社員はその与えられた権限の範囲内で業務を遂行するのです。

上司と部下の役割とまとめると以下のとおりとなります。

  • 上司の役割…部下に一定の業務範囲における裁量権を与える(指示を与える)
  • 部下の役割…上司に与えられた権限の範囲内で業務を遂行する(指示に従う)

そのため、「指示待ち人間になるな、自主的に動け」という上司からの指示は、「与えられた裁量権の範囲内で自主的に判断し、行動せよ」と解釈するのが正しい意味合いとなるのです。

「勝手に動くな」と注意されないために

会社組織的に正しく自主的に動くには、上司から与えられた裁量権の範囲を正しく理解することが重要です。もし、不明瞭な部分が少しでもあるようでしたら、自分にどこからどこまでの裁量権が与えられたのか、上司に具体的に確認することをお勧めします。

裁量の範囲について上司と認識の齟齬があると、せっかく遂行した業務が越権行為となり、冒頭で述べた「指示待ち人間になるなと言われたのに、動いたら動いたで勝手に動くなと怒られた」といった事態になりかねません。

与えられた裁量の範囲を正しく理解し、その範囲内で、指示内容を達成するための方法を自主的に考え、判断し、実行していくことが、部下に求められている働き方であり、役割だと言えます。

逆に、上司から与えられた裁量の範囲として、本来自分で考えて、判断して、実行しなければならない事柄についてまで、いちいち上司の指示を待ってしまう人材を「指示待ち人間」と呼びます。

上司はどこまで細かく指示をする必要があるのか

しかし、すべての上司が、部下に対して裁量の範囲が明確なきちんとした指示を出してくれるわけではありません。

むしろ、多くの上司が前述の自身の役割を自覚できておらず、部下にきちんとした指示もせずに、「部下が自主的に動かない、あいつは指示待ち人間だ」と愚痴をこぼしているのが現実です。

もし、あなたが部下を持つ上司の立場であるならば、以下のポイントに気をつけて指示を出すことをお勧めします。

  • 達成すべき目的、ゴールを明確に伝える
  • 部下が自身で判断してよい範囲と上司に相談してほしい範囲を具体的に伝える
  • 目的達成の方法、プロセスについては、部下の力量やキャリアに応じて可能なかぎり自主性に任せる

監督すべきところは監督し、自主性に任せるところは任せて成長を促す、メリハリが重要です。

上司が指示をくれないのなら指示待ちでいいのか

それでは、上司が自主的に動けるだけのきちんとした指示をくれないのならば、部下はただ指示を待っていればよいのでしょうか。

理屈上は、自らの役割をはたしていない上司が悪いので、指示待ちしていればよいのですが、会社が理想とする部下像はそれを許しません。たとえ上司の職務怠慢であったとしても、上司の至らぬ部分は、部下が忖度し、献身的に補うことが多くの会社組織では美徳とされています。

そのため、指示を受けていない部下は、自ら上司の指示をあおぎに行く必要があります。そのような、「仕事を自分で得る」、「仕事を自分で作り出す」社員が、会社や上司の求めている人材だと言えるでしょう。

実際のところ、自ら上司に対して裁量権を得に行くことまで含めて、「自主的に動く」だと考えている上司も少なくありません。

まとめ:部下と上司のすれ違いの原因とその責任

部下と上司のすれ違いの多くは、両者またはどちらか一方が、会社組織としての正しい仕事の進め方や組織の中での自身の役割をきちんと理解していないことから発生します。

今回の場合は、上司は上司で、部下に対して自主的に動けるだけの指示を与える必要があり、部下は部下で、上司から与えられた裁量の範囲内で自主的に業務を遂行する必要があることを、互いに理解していれば、すれ違いを未然に防ぐことも可能となります。

もし、部下がそれを理解できていないのならば、理解できるように指導するのは上司の責任であり、もし、上司が理解できていないのならば、それは上司自身の責任、役職に対しての能力不足だと言えるでしょう。

管理職は役職と給与額が高い分、責任が重いことを自覚する必要があります。