出世を嫌がる部下の説得方法 - 管理職のメリットを言えますか?

NGを出すビジネスパーソン

「最近の若者は出世を嫌がる」と言われ始めてからときは過ぎ、各種アンケートの結果を見ると、今や出世を望む若者の方が少数派となっています。

優秀な若手を管理職に昇進させたいのに、当の本人が乗り気ではなく、お困りの管理職の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、若者が出世を嫌がる理由と、出世を嫌がる部下の説得方法について、ご紹介できればと思います。

目次

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なぜ若者は出世を嫌がるのか

若者が出世を嫌がるようになった理由をまとめると、以下のようになります。

  1. 多様性を認める価値観の台頭
  2. 現実主義的な価値観の台頭

それぞれについて、詳しく見ていきたいと思います。

1. 多様性を認める価値観の台頭

日本社会では、「結婚をして子を成すべき」、「女性は家庭を守るべき」、「恋愛は異性間で行うべき」などといった、「こうするべき」という画一的な価値観の押し付けが、強迫観念のように存在しています。

その中の一つに、「会社員は出世を目指すべき」という価値観もあり、皆が「そういうものだ」と疑問も持たずに(持つことすら許されずに)受け入れてきました。

しかし、1980年代序盤から1990年代中盤の間に生まれたミレニアル世代や、1990年代中盤から2000年代終盤の間に生まれたZ世代の人たちは、物心ついた頃からインターネットが存在しているデジタルネイティブな世代として、多様な価値観に触れて育ってきました。

また、多様性の受容を意味する「ダイバーシティ&インクルージョン」の考え方が日本の会社において一般化してきたこともあり、疑問を持つことすら許されない雰囲気にあった画一的な考え方に対して、それぞれが改めて自分自身の価値観で判断し、自分の考えを持つことが当たり前になりつつあります。

「会社員は出世を目指すべき」という固定観念に関しても、自分の人生にとって本当にそれが正しいのか、本当にそれで自分は幸せになれるのかと、一度自分の頭で考えてみるのが当然のことになったと言えるでしょう。

いまだに画一的な価値観を押し付けてくる人も大勢いるのが現実ではありますが、このような多様性を認める価値観の台頭という社会的背景が、若者が出世を嫌がるようになった理由の一因として挙げられます。

ミレニアム世代やZ世代については、下記の記事で詳しくご紹介しているのでご参照ください。

Z世代、ミレニアル世代とは? 意味とそれぞれの特徴や価値観を解説
Z世代とは、一般的に1990年代中盤から2000年代終盤の間に、ミレニアル世代とは、一般的に1980年代序盤から1990年代中盤の間に生まれた世代の人たちのことを指します。それぞれの特徴や育った時代背景について解説していきたいと思います。

2. 現実主義的な価値観の台頭

日本のZ世代の人たちは、不景気な社会しか経験していない人が大半なため、現実主義に育つ傾向が強いと言われています。

そのような若い世代が、多様な価値観を持つことが許された状況下で、「会社で出世すること」を現実主義的な観点で冷静に考えた結果、メリットよりもデメリットの方が大きいと判断したことが、若者が出世を嫌がるようになったことにつながったと言えるでしょう。

「会社で出世すること」のメリットとしては、よく以下の3点が挙げられます。

  • 大きな仕事ができる
  • 給与が増える
  • 肩書きにより自尊心が満たせる

しかし、大きな仕事ができる、難しい仕事にチャレンジできることを喜ぶような人は、実のところそれほど多くないのが現実です。上司への心証を考え、表面上はやる気を見せている社会人であっても、多くの場合、本音では、心穏やかに、楽に生きていくことを望んでいます。

また、給与が増えると言っても、管理監督者になれば残業代が出なくなるため、上限まで残業をしている部下よりも上司の方が給与が少ないといった事態すらあり得ます。たとえ多少給与が増えたとしても、難しくなった仕事に振り回され、大きなストレスを抱えて生きていかなければならないことを考えると、喜べない人が多いのではないでしょうか。

肩書きにより自尊心が満たせると考える人もいるかもしれませんが、冷静に考えればそのようなものに実利はありませんし、上司が部下に対して高圧的な態度で支配欲を満たそうとすれば、すぐにパワハラだと声高に叫ばれることでしょう。

そもそも、会社における役職、肩書きというものは、会社組織内での役割を示すものであり、人としての偉さを表すものではありません。「出世したら部下に偉ぶれる」などと勘違いしない方が身のためだと言えます。

現実主義的な価値観で「会社で出世すること」を考えてしまうと、出世を嫌がる人が多数派になるのも納得できるのではないでしょうか。

出世を嫌がる部下の説得方法

それでは、出世を嫌がる部下を上司として説得するにはどうすればよいのでしょうか。

まずは、自分自身も「多様性を認める価値観」を持ち、「出世は誰だって嬉しいもの」、「みんな出世したがっているはず」といった先入観を捨て、「出世したくない」という価値観を持った人間の存在を認めることから始めましょう。

その上で、「現実主義的な価値観」を用いて、部下に「会社で出世すること」のメリットを伝えることが重要です。

しかし、前述のように、「会社で出世すること」のメリットを現実主義的な観点で伝えるのは非常に難しいと言わざるを得ません。

この困難なミッションを前に進めるためのポイントをまとめると、以下のとおりとなります。

  1. 相手が会社や仕事に何を望んでいるのかヒアリングをする
  2. 自分自身が出世してよかったと思うことを言えるようにする
  3. 自分自身が日頃から楽しそうに仕事に取り組む
  4. 最終手段、心情に訴えかける

それぞれについて、詳しく見ていきたいと思います。

1. 相手が会社や仕事に何を望んでいるのかヒアリングをする

言葉で相手の心を動かそうとするときは、まず相手が求めていることを正確に把握することが重要です。

一方的に自分が考えるメリットを伝え続けても、相手には何も響きません。

部下が会社や出世に何を望んでいるのかをヒアリングし、その内容に合わせたメリットの提示と、デメリットに関する誤解の解消を行うことをお勧めします。

2. 自分自身が出世してよかったと思うことを言えるようにする

相手に何かをプレゼンするときには、自分自身がそのプレゼンするものをきちんと理解し、よい部分を自信を持って伝えられるようにしておく必要があります。

「会社で出世すること」のメリットをプレゼンするのであれば、実際に自分自身が出世してよかったと思うことを、自分の言葉で伝えられるようにしておくのがよいでしょう。

相手が会社や仕事に何を望んでいるのかをヒアリングできたとしても、思ってもいない表面的な言葉でプレゼンを行っては、相手の心を動かすことなどできません。

3. 自分自身が日頃から楽しそうに仕事に取り組む

部下は常に上司のことを見ています。

上司が毎日つらそうに、夜遅くまで仕事をしていれば、「出世すると大変そうだな…」、「ああはなりたくないな…」と思うのが必然です。

部下が自然と出世を望むようにするには、上司が部下に対して、日頃から楽しそうに、充実してそうに仕事に取り組む姿を見せる必要があると言えるでしょう。

4. 最終手段、心情に訴えかける

基本的に管理職はつらいものです。特に日本の会社においては、残業時間に制限のない便利な駒として組織の負担を一手に押し付けられ、限界まで酷使されることが多く、本当に管理職になるメリットがあるのか疑わしいのが現実です。

そのような中で、前述の2と3でご紹介したポイントについては、達成困難な人も多いことでしょう。

難しいのであれば仕方がありません。最終手段として、相手の心情に訴えかける方法をご紹介します。

まず、部下に対して、現実主義的な観点で、「会社で出世すること」のメリットがあまりないことは認めた上で、それでも出世をしてもらいたい旨を伝えましょう。

人は、他者に評価されることに関しては、素直に嬉しいと思う生き物です。説得する相手に対して、マネジメントの仕事を任せられる人材として高く評価していることを懇切丁寧に伝えることをお勧めします。

きちんと伝えれば、「気は進まないけど、がんばってみるか…」という気持ちにさせることは十分に可能です。

前提として、社員は人事発令の内容に逆らうことはできません。しかし、可能であれば気持ちよくその発令を受け取ってもらい、前向きにがんばってもらいたいものです。

人事発令を伝える立場である上司として、できうることはしていきましょう。