みなさんは、自分が所属している会社の組織が腐っていると感じたことはないでしょうか。
どのような会社も、多かれ少なかれ、組織に課題を抱えています。しかし、それらの課題は、多くの会社で同じように発生し、同じように解決を試み、同じように失敗しているものだったりします。
様々な会社で繰り返される同じような失敗は、人間という生き物が会社という組織を作り、運営する上での、共通する性質、傾向と言えるのかもしれません。そして、その傾向は、ほぼ全ての会社組織が同じように劣化し、腐っていくことも示しています。
今回は、ほぼ全ての会社で共通して発生、進行する組織の腐り方と、その中でどのように立ち回ることが自身のためになるか、そして、腐ってしまった組織の立て直し方について、ご紹介していきたいと思います。
目次
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会社組織の一生
ほぼ全ての会社は、以下のような過程を経て、生まれ、育ち、老い、終わりを迎えます。
- 創業期…新しいアイデアとやる気のある創業者により生まれる
→優秀な人材を集めることができるかの第一の壁を乗り越えた場合、次に進む - スタートアップ期…組織で自分の力を試したいやる気のある若い人材が集まる
→事業を財政面で安定させられるかの第二の壁を乗り越えた場合、次に進む - 頭打ち期…創業時のアイデアでの限界が見えてくる
→事業拡大の新しいアイデアを出せるかの第三の壁を乗り越えた場合、次に進む - 拡大期…組織が拡大し、スタートアップメンバーの目が組織全体に届かなくなる
→これ以降、会社は衰退へと進んでいく - 安定期…事業が安定し、会社が有名になり、安定志向の社員の入社が増える
- 停滞期…事業が守りに入り、官僚主義が見え始め、柔軟性、発展性が失われる
- 衰退期…時代の流れに対応できず、まだ発展性のある競合に太刀打ちできなくなる
- 終末期…財政面で限界を迎え、廃業か他社からの買収対象となる
それぞれの期がどれだけ続くかは、業界や会社によります。停滞期や衰退期で何十年も存続する会社もあるでしょう。しかし、確実に、終わりに向かって進んでいくことには変わりありません。
ごく一部の優良企業は、巧みな手段で意識的にイノベーティブな活気とやる気を創業期から持続させるか、停滞期や衰退期から構造改革によりそれらを取り戻すことに成功していますが、ほぼ全ての会社は死への歩みを止めることができていません。
ここからは、衰退へと歩み始める拡大期以降について、詳しく見ていきたいと思います。
「拡大期」に発生する問題とその影響
拡大期は、会社の組織が拡大することによって、様々な部署が設立され、業務が分業化、階層化、細分化し、経営層となったスタートアップメンバーの目が届かない範囲が発生していきます。その結果、今まで容易に行えていた社内の意思統一は難しいものとなってくるでしょう。
また、組織の細分化により、今までのようにコミュニケーションを頻繁かつ綿密に取ることが難しくなり、経営層の中でも、今後の会社の方針などについて齟齬が生じやすくなります。
個々人の才覚で仕事を行う体制から、マネジメントの概念を取り入れた、組織で仕事を行う体制へと、うまくシフトが行えないかぎり、その会社の衰退が始まります。
「安定期」に発生する問題とその影響
安定期は、人材の質の面で問題が発生していきます。事業が安定し、会社が有名になることによって、安定した給与を安定してもらえることを期待する、安定志向の人材の入社が増えていくのです。
安定志向自体は悪いことではありませんが、会社の発展性という観点では、そのような人材の増加は、次の停滞期につながる下地を作ることになります。
当然、会社の更なる発展を目指す経営層は、野心的でやる気のある人材の採用を目指すことでしょう。しかし、拡大した組織の中で、経営層が全ての採用を細かくチェックすることは現実的ではなく、そもそも、書類や面接などでその人物の本音や性質がわかるわけがありません。求人に応募する側も、採用されやすい、野心的でやる気のある人物を演じることでしょう。
採用活動をよほど注意深く行うか、戦力となる人材を直接スカウトしてくるなどしないかぎりは、停滞期への歩みは止められないでしょう。
「停滞期」に発生する問題とその影響
停滞期は、安定志向の社員が現場の各所にしっかりと根を張り、管理職も一定の割合が浸食され、仕事の進め方に明確な影響を与えている段階です。
常にリスクを考え、新しいことへの挑戦は行わず、自身の仕事が変わることや増えることを嫌がり、優先度を考慮せず手続きを一律に厳格化し、会社の発展性や柔軟性は失われます。
しかし、会社の業績としては、今までの土台と蓄積があるため、その悪影響は、なかなか数字としては表れません。業績の数字に明確な形で表れ、組織に発展性がなくなっていることに経営層が気づいたときには、すでに手遅れとなっていることは少なくありません。
組織の劣化が業績に表れる前に、経営層がその危機に気づき、有効な改善策を打つことができないかぎり、会社の衰退を止めることはできないでしょう。
「衰退期」に発生する問題とその影響
時代は常に変わり続け、競合は新しいアイデアを生み出し続けます。
発展性と柔軟性を失った会社は、環境の変化についていくことができず、そのまま衰退期へと移行します。
特に昨今は、IT技術の発展、スマートフォンの普及などによるプラットフォームの急速な転換など、あらゆる事業に変化への対応がせまられています。今まで積み重ねてきた財産だけでは、とても生き残れないのです。
多くの会社の経営層が、この段階になってから危機感を持ち始め、打開策を指示し出します。会社にまだ体力があり、経営層に才覚があり、運に見放されていない場合は、巻き返すことができるかもしれません。
しかし、そのようなケースは稀であり、ほとんどの会社がここで死を決定づけられます。
腐った組織の中でどう生きていくか
前述のとおり、どのような組織も自然に劣化していく定めにあります。会社に勤めている人間は、自分が所属している会社や組織が永遠に続くとは考えないことが大切です。自分がその終わりに巻き込まれないとはかぎりません。
そのような状況の中で、会社員にできることは以下のことになります。
- 自社が今、どれだけ死に近い段階なのかを把握する
- 経営に近い層ならば、手遅れになる前に会社の構造改革に着手する
- いつ転職しても困らないようにキャリアを積み重ねる
- 紹介での転職がしやすいように他社の人脈を大切にする
キャリアの積み重ね方については、以下の記事を参考にしていただければ幸いです。
組織の腐敗自体を止めることは、一従業員にはどうしようもない問題だと言えます。恩義や愛着などの感情にまどわされることなく、自分の人生が台無しにならないように、冷静に、見切りをつける準備をしておきましょう。
腐った組織の立て直し方
もし自分が、腐った組織の経営層やそれに準ずる立場だった場合、当然のことながら組織を立て直していく必要があります。
その際に行うべきことは、以下の2点です。
- 実力のともなわない管理職を上から入れ替えていく
- 実力のともなわない管理職を徹底的に意識改革する
組織の要は管理職です。管理職が優秀であれば、部下の教育、モチベーションアップもはかどり、組織全体が活性化します。優秀な管理職がある程度そろえば、自浄作用が働きはじめ、組織は改善するサイクルに入ることでしょう。
逆に管理職が無能であれば、チームのモチベーションは下がり続け、優秀な社員は次々と離職していき、組織の未来は閉ざされてしまいます。
この組織改革を行う際に重要なことは、以下の2点です。
- トップダウンで強制的に進める
- ためらわない、迷わない
そもそも、経営層が「この組織は腐っている」と気づいた時点で、その組織はすでに末期状態であることがほとんどです。一刻の猶予もありません。
改革が本気であることを組織のトップが示し、情にとらわれずに推し進めることがなにより重要だと言えるでしょう。