上手な仕事の頼み方、部下への仕事の渡し方 - 丸投げは嫌われる

仕事を渡す

会社という組織で仕事をしている以上、多かれ少なかれ他の人に仕事を依頼する機会は訪れます。

しかし、仕事の依頼の仕方に課題を抱える人は多く、スムーズな業務進行のさまたげになることはめずらしくありません。

仕事を依頼した相手が、満足する成果物を上げてこないとき、それは相手側の落ち度なのでしょうか。相手が仕事を完遂するために必要な情報を、依頼する側がきちんと渡せていなかった可能性はないでしょうか。

今回は、職場で日常的に行われている「他者への仕事の依頼」について、注意点や最適解をご紹介します。

また、特別に注意が必要な、上司が部下へ仕事を任せる場合についても触れていきたいと思います。

他者へ仕事を依頼する際の注意点

他者へ仕事を依頼する際に注意すべきポイントは、以下の3点になります。

  1. 本当にその相手に依頼すべき仕事なのか考える
  2. 最低でも「経緯・目的・日程」を伝える
  3. 自分と相手の違いを意識する

それぞれについて、詳しく見ていきたいと思います。

1. 本当にその相手に依頼すべき仕事なのか考える

まず、仕事を依頼する前に、相手が多忙でないかを確認する必要があります。

職場では、当然ながら皆が自分の仕事を持っています。もし、依頼したい相手が、喫緊の仕事を抱えている場合は、当然、新しい仕事を引き受けてもらうことは難しくなります。

相手が多忙な場合は、他の人に依頼することにするか、チーム内で業務の優先度を話し合い、改めて担当業務を配分しなおす必要が出てきます。

また、人はそれぞれに特定の役割や得意不得意分野、専門分野を持っているものです。たまたま暇そうだったから、頼みやすかったからなどの理由で依頼するのは避け、仕事の内容と相手のことをよくよく考えた上で、依頼すべき人を選びましょう。

上司から部下へ仕事を渡す場合は

上司から部下へ仕事を渡す場合は、部下の得意不得意分野を考慮するだけではなく、将来的にどのような仕事を行っていきたいかの希望、キャリアプランを聞いて、可能なかぎりそれに近しい仕事を割り振ってあげることを考えましょう。

可能なかぎり部下の希望に近い仕事を任せることは、部下のモチベーションアップにつながり、最終的にはチームの生産性の向上へと結びつきます。

また、そのような方針を取ることは、部下に「上司は自分のことを考えてくれている」という思いを抱かせるなど、信頼感を醸成させる効果も期待でき、スムーズなマネジメントの助けとなります。

希望がない部下については、一緒にやりたい仕事を探してあげることで、キャリアプランを考えるよいきっかけになります。

2. 最低でも「経緯・目的・日程」を伝える

仕事をする上で必要な情報を与えられなければ、誰もその仕事をまともに進めることはできません。しかし、仕事を依頼される際に、ほしい情報がそろっていることなどほとんどないのが実情です。多くの場合、依頼された側は、依頼してきた側に足りていない情報を質問することから作業をはじめることになります。

そのような状況は、仕事を引き受けてくれた人に「わざわざ仕事を請け負ってあげているのに、必要な情報もよこさず、こちらに確認の手間まで取らせる」という腹立たしい気持ちさえ抱かせかねません。

このような事態にしないためにも、依頼する側は、最低でも「経緯・目的・期日」の3つの要件を相手に伝える必要があります。

経緯は、「その仕事がどのように発生し、なぜその人に依頼されることになったか」ということを指します。仕事を依頼される側は、仕事を増やされる立場です。負荷が増えることについて、不快感を持つ人も少なくありません。そのような人に対しては、きちんとその仕事の前提、背景を伝えて、丁寧にお願いをすることが、今後の人間関係のためにも重要です。雑に、適当な感じでお願いされると、やる気も失せてしまいます。
目的は、「その仕事は何のために行い、ゴールはどこにあるのか」ということを指します。資料を作るにしても、それを誰が見るのかで作り方は変わってきます。その仕事がもっと大きな仕事の一部分にすぎないとすれば、仕事の全体像を教えてもらうことで、より全体像に即した完成度の高い成果物を作ることができます。目的がなければ、依頼に満足に応えることはできません。
日程は、「いつまでにどの段階まで進めればよいのか、最終提出はいつなのか」ということを指します。単純な仕事であれば、一度の提出で済みますが、ある程度のボリュームの仕事になると、何度か確認と修正の工程が必要となります。依頼側は、どの完成段階でどのレベルの確認をしたいと思っているのか、それはいつ頃を見込んでいるのかなど、スケジュール感をしっかりと共有しておく必要があります。

上司から部下へ仕事を渡す場合は

上司から部下へ仕事を渡す場合は、上記に加えて、「その仕事が他のどの仕事につながっていて、どういう形で会社のためになっているか」を伝えることをお勧めします。それにより、会社全体の仕事への理解を深めさせると同時に、次に他の関連する仕事を任せる際に、前に行った仕事との関連性を理解していることで、新しい仕事概要のスムーズな理解を促すことができます。

また、「その仕事から得られる知見や身につけることができるスキル」を伝えることで、自分のためになる仕事であるという意識を植えつけ、モチベーションアップにつなげることが可能です。

3. 自分と相手の違いを意識する

仕事の依頼時の、仕事のやり方、進め方を伝える過程においては、自分と相手の前提知識や経験、価値観といったものの違いを意識することが大切です。

人間は、自分が知っていることを相手も当然知っているものだと勘違いする傾向にあります。また、相手を自分と同じ価値観を持った人間だと勘違いする傾向にあります。自分が当たり前だと思っていて、こんなことは言わなくても大丈夫だろうと思っていることは、本当に相手にとっても当たり前のことなのでしょうか。

例えば、

仕事を進める上で必要となるその基本的なExcel(エクセル)の関数は、社会人なら誰もが使えるものだと思い込んでないでしょうか。
「○○日まで」という期限は、その日の営業時間内まででしょうか、その日の23時59分まででしょうか、翌日の仕事がはじまるまででしょうか。
進める上で特定の部署への確認が必要など、その仕事で気をつけるべき注意点をその人は知っているのでしょうか。

もし、相手がわかっているはずだと思うようなことであっても、念のため自分と同じ認識でいてくれているのかを確認しておくことが、的外れな成果物が上がってこないようにするためには必要となります。

上司から部下へ仕事を渡す場合は

上司から部下へ仕事を渡す場合は、自分と相手の差異がさらに大きくなることを意識しなければなりません。

また、上司から説明を受ける際に、プレッシャーからわかってもいないのに「わかりました!」と言ってしまう部下が一定数います。上司に話しかけるのが怖くて、不明点があっても質問することができない部下も存在しています。

説明したことが部下には本当は伝わっていないのではないかという疑念を常に持ちつつ、部下が気兼ねなく質問ができる関係性を築くことを心がけましょう。

なお、逆に、必要以上に何でも質問をしてきてしまう部下に対しては、自分で考える力を養わせるために、「質問する際には、自分はこう思うという自分の意見を合わせて持ってくること」を条件として課すのがお勧めです。

仕事の依頼が下手な人は嫌われる

無責任な仕事の投げ方をする人、仕事を他人に丸投げする人は、職場において嫌われます。

多くの場合、そのような人は、「自分は忙しくて仕方がないんだ」、「丁寧に仕事を渡している暇もないんだ」という態度で、仕事を他の人に渡してきます。渡された方としては、「忙しいアピールが鬱陶しい人に仕事を雑に押しつけられた」という印象しか残りません。

お願いの仕方一つで、そういった印象も変わるものです。他の人に仕事を依頼する際は、この記事をご参考にしていただき、少しでもスムーズな業務進行につなげていただければ幸いです。