新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のために、テレワーク(リモートワーク)を大規模に導入、推進する企業が増えています。
そのような中で聞かれるようになったのが、テレワークを通じて、仕事ができない社員や仕事をしていない社員があぶり出される結果となったという話です。
なぜ、テレワークによって、無能社員があぶり出されてしまうのでしょうか。また、テレワークによって、無能社員のレッテルを貼られないためには、どのようにしたらよいのでしょうか。
目次
ご覧になりたい項目をクリックすることで、該当箇所に移動することができます。
なぜテレワークが無能社員をあぶり出すのか
テレワークの持つ以下の5つの特徴が、無能社員をあぶり出すことにつながっています。
- 仕事の過程は見てもらえず、成果だけが目立つ
- 自己解決能力が求められる
- いつもと違う労働環境で柔軟性や対応力が求められる
- ITリテラシーや各種ツール利用の応用力が求められる
- 管理職が管理することを思い出してしまう
それぞれについて、詳しく見ていきたいと思います。
1. 仕事の過程は見てもらえず、成果だけが目立つ
テレワークでは、上司や同僚に自分が仕事をしている様子を見てもらうことはできず、見てもらうことができるのは、仕事の結果である成果物になります。
そのため、日ごろ、なんとなく仕事をしている雰囲気を出しているだけで実は仕事をあまりしていない人や、他の人の成果を自分の手柄にしているだけの人などは、テレワークになった途端に成果を上げていないことが露呈してしまいます。
また、成果はあまり上げてられていないが、一生懸命がんばっているなどの評価を受けている人にとっても、その一生懸命がんばっている過程を見てもらえなくなるため、テレワークにおいては単なる「成果をあまり上げない人」という評価になってしまいます。
2. 自己解決能力が求められる
テレワークでは、オフィスで机を並べて仕事をしているときのように、気軽に他の人に相談したり、助けてもらったりすることができません。自己解決能力が求められるのです。
日ごろ、自分のミッションを達成するために、他の人の助けを借りて体裁を保っているような人は、テレワークにおいてはいつもどおりのクオリティの成果物を提出することは難しくなってしまうでしょう。
3. いつもと違う労働環境で柔軟性や対応力が求められる
テレワークとオフィスでの仕事では、あらゆる環境が異なります。
仕事に使うパソコンなどの機器の違いからはじまり、他の社員とのコミュニケーションの取り方、上司への報告の仕方、自分をよりよく見せるための見せ方など、細かいことまで含めるときりがありません。
仕事ができる人、優秀な人は、環境の違いにもすぐに順応し、いつもどおりに成果を上げはじめることでしょう。不器用な人は、なかなか環境の違いに慣れることができず、他の社員との差が目立ってしまうことになります。
4. ITリテラシーや各種ツール利用の応用力が求められる
労働環境の違いの中でも、特にテレワーク用のパソコンの利用に関しては、いろいろと勝手が異なり、業務をはじめることすらままならない人たちが出てきます。
多少ICT(情報通信技術)機器に慣れている人であれば、なんとなくで試して解決できるようなことが、ITリテラシーのない人たちにとっては、一人で途方にくれるか、会社のシステム担当に電話で助けを求めることしかできません。
外部から社内ネットワークに接続するためのVPNという仕組みが必要なため、少しパソコンの立ち上げまでのプロセスが違っているだけであったり、いつもは使わないWeb会議システムを使うだけの事態に混乱し、思考が停止してしまいます。
5. 管理職が管理することを思い出してしまう
ほとんどの日本の職場の管理職は、本来行うべき管理業務を普段行っていません。それは、現場での実務を兼ねているプレイングマネージャーが多くオーバーワークであることや、ほとんどの日本の企業にマネージャーを育成する能力がないこと、そもそも無能な管理職が多いことなど、様々な理由によるものです。
それでも、皆がオフィスで仕事をするかぎりにおいては、なんとなく目に入る範囲に部下がおり、なんとなく何をしているか知っているつもりになることができ、たまにそれらしい報告を受けることで管理ができていると勘違いすることができます。
しかし、部下の姿が見えないテレワークとなると、途端にマネジメント業務を意識せざるを得なくなります。一度意識したら最後、細かいことまで気になりだすのが人です。部下たちに細かい報告を求め、その仕事内容、成果に真面目に目を向けはじめます。
今まで、上司に対して、仕事の内容や成果の報告をなんとなくの雰囲気でごまかしていた人たちにとっては、厳しい状況だと言えるでしょう。
テレワークで無能だと思われないための対処法
仕事ができる人、優秀な人は、テレワークにおいてもいつもどおりの働き方をするだけで、無能と思われることはありません。彼らにとって、ここまでご紹介してきたテレワークの特徴により発生する懸念は、当たり前に対処できる事柄だからです。
それでは、仕事ができないことや仕事で手を抜いていることを、普段ごまかしている人たちは、テレワークに直面したときにどのようにしたら真実を露呈せずに済むのでしょうか。
その対処法をまとめると、以下の7つになります。
- 会社のテレワークのルールを熟読しておく
- 報告はわかりやすく具体的に定期的に行う
- わかりやすく納得感のある成果を用意する
- 上司に相談を行いマネジメントをさせる
- メールやチャットには即反応する
- Webカメラがある場合は身だしなみと背景に注意する
- 余計なことを言わない
それぞれについて、詳しく見ていきたいと思います。
1. 会社のテレワークのルールを熟読しておく
会社がテレワークを導入する際には様々なルールを制定するはずです。
そのルールは、出退勤時間の考え方からはじまり、機器の使用ルール、業務の報告方法、機密情報の取り扱い方など、多岐に渡ります。
ルールを事前に習熟しておくことで、ルール違反を犯すという大きな評価上のリスクを避けることができます。また、労働環境の違いを事前に想像し、ある程度シミュレーションができるため、異なる環境への適応を早めることが可能です。
2. 報告はわかりやすく具体的に定期的に行う
テレワーク時の報告は、上司に、「ああ、こいつはちゃんとやっているな」と思わせることが大切です。
仕事をしている様子を見てもらうことができないテレワークにおいては、メールなどでの報告をきちんと行っておくことが重要となります。
基本は職場ごとのルールに従ってきちんと報告を行っていれば問題ありませんが、業務内容の報告に関しては以下のポイントをおさえて行うことをお勧めします。
- 箇条書きで具体的かつシンプルに行う
簡潔にまとめることは心がけつつ、「何を目的とした業務で」、「いつまでに行う予定で」、「今の進捗はどれくらいで」、「課題はあるのか」など、上司が読んだだけで必要なことが全部わかるようにしましょう。 - 同じフォーマットで定期的に行う
同じフォーマットで定期的に行うことで、上司にわかりやすく、きちんと行っている印象と安心感を与えることができます。また、上司に慣れを生じさせ、安心感との相乗効果で、上司が徐々に報告の内容まで気にしなくなる効果が期待できます。
報告を定期的に行う際のモデルの一例をご紹介します。ご参考にしていただければ幸いです。
- 前日:翌営業日のテレワークで行う業務予定の報告
- 始業時:始業する旨の報告
- 昼休憩開始時:休憩を開始する旨の報告
- 昼休憩終了時:業務を再開する旨の報告
- 規定の終業時間後も業務を継続する時:継続する業務内容と継続見込み時間の報告
- 終業時:終業する旨の報告。翌営業日もテレワークの場合は翌営業日の業務予定の報告
3. わかりやすく納得感のある成果を用意する
テレワーク時の報告は、報告を受ける上司が読んだだけで理解することができ、納得感がある内容にすることが求められます。
例えば、データの分析業務は、最終的なレポートが完成するまでに、多くの時間が必要となります。様々なデータを抽出してみて、掛け合わせて、意味あるデータを生成するための膨大な破棄データのもとに、レポートが完成します。
そのことを理解していない上司に対して、完成したレポートを10営業日かけて作りましたとだけ報告しても、「何でこれにそんなに時間がかかるんだ」という反応しか得られず、テレワークではその理由を説明する機会もありません。
また、雑務とされがちなメールでの連絡業務に関しても、1通の作成に平均で5分かかったとして、1日に30通送れば、毎日2時間半の時間が必要となります。担当する顧客が多かったり、担当している案件の関係者が多い場合などは、メール業務が1日の業務時間の多くを占めることになります。
上司に想像力がない場合、そのようなことも理解できず、部下の1日の業務時間の使い方を聞いた際に、部下がテレワーク中にさぼっているのではないかとさえ思ってしまいます。
上司にその日の業務の成果を報告する際は、最終の成果だけではなく、途中途中の作業過程も必要に応じて報告し、細かい雑務も必要性を説明しつつ、積み上がることでたくさんの時間が必要となることを伝えるように心がけましょう。
4. 上司に相談を行いマネジメントをさせる
上司に相談することなど何もない場合でも、何かしらか相談事を作るのも有効な手段です。
上司は、テレワークで部下たちがさぼらずに仕事をしているのか常に気にしています。しかし、全員を疑い続けるのも疲れるため、気がつけば警戒すべき部下の優先度を決め、特に監視すべき要注意人物に狙いを定めているものです。
そのような状況下において、自分から仕事の相談をしてくる部下がいれば、その部下は仕事を積極的に行っているのだ、監視しなくても大丈夫なのだと警戒心をゆるめ、その分、疑いの目を何の音沙汰もない部下へと向けてくれます。
また、上司は、部下からの相談に応えることで、上司としてマネジメントをしている満足感に浸ることができ、その部下への管理職としての役割をはたしていると思うことができます。その分、管理職としての成果物などへの厳しい目をゆるめる効果が期待できます。
なお、相談事の内容があまりに稚拙なものだと逆に心配をかけてしまいます。上司の力を借りてもおかしくなく、それでいて上司に応えられるレベルの、適度な相談事が必要となります。それがどうしても見つからない場合は、無理に実行する必要はありません。
5. メールやチャットには即反応する
テレワーク中も、メールやチャットなどで連絡を受けることがあります。オフィスでの仕事中に連絡を受けた際は、「今は他の作業をしていて忙しいから」などと、返信を後回しにすることもあるかと思います。しかし、テレワーク中に関しては、すぐに何らかしらかの反応を行うことをお勧めします。
テレワーク中は、仕事で離席することはなく、常にパソコンに向かっていると相手からは思われています。そのため、メールやチャットを受信した場合はすぐに気づくはずだと考えられており、反応がないということは、意図的に無視しているか、仕事をさぼっていると悪い方向に受け取られるリスクがあります。
テレワークではお互いの姿が見えません。そのため、多かれ少なかれ、皆、「あいつちゃんと仕事してるのかな…」という思いを抱きがちです。疑いを持たれる要素はなるべく排除するに越したことはありません。
ただし、チャットの雑談ルームに関しては例外です。即時反応することで、逆に仕事をしていないと思われてしまいます。
6. Webカメラがある場合は身だしなみと背景に注意する
テレワーク時に、Web会議などでWebカメラを使用することがあります。テレワークにおいては、例外的に互いの姿が見られる機会です。かぎられた機会であるために、その際の印象は強く残ります。自宅であっても油断せず、会社に行くときと同じレベルの身だしなみを心がけましょう。(スーツを着ることはさすがにおかしいですが)
また、自身の後ろに映り込む部屋の様子にも気を配りましょう。散らかっている場所やマンガ棚などが映らないようにするなど、ビジネスシーンにふさわしい形に整えておくと無難です。
本来、自宅である以上、どのような内装でも文句を言われる筋合いはありませんが、今回は与える印象を考慮しています。
7. 余計なことを言わない
親しい同僚などに、ついついふざけて、「テレワークだと全然仕事できないわー」、「仕事してるふりして遊んじゃったよ」などと軽口を叩くことがあるかもしれません。
しかし、どこで誰が見ているかわかりません。その親しい同僚が他に人に言わないともかぎりません。
自分のマイナスになるようなことは、誰が相手でも、どのような場面でも言わないことをお勧めします。
周りに与える印象だけはよくしてみる
仕事ができる人、優秀な人に簡単になれれば、誰も苦労はしません。できないことはできないし、やりたくないことはなかなかやれません。そんな中で、ポイントをおさえて、周りに与える印象だけはよくすることも、人が幸せに生きるためには必要なことだと考えます。
シゴトコは、皆さまのテレワークを応援しています。