九州の就職人気ランキングで常に上位に位置し、九州最大の地方銀行としても名高い「福岡銀行」。全国でもトップレベルの規模と収益力を誇る広域地域金融機関です。
そんな福岡銀行に10年以上勤務し、窓口業務から本社業務まで経験してきました。福岡銀行だけでなく、地方銀行に就職したいと考えている方々に向けて、赤裸々に生の声をお伝えしたいと思います。
「株式会社福岡銀行」の基本情報
英文社名 The Bank of Fukuoka, Ltd.
本店住所 福岡県福岡市中央区天神二丁目13番1号
設立年月 昭和20年3月
資本金額 823億円
上場市場 非上場
従業員数 3,568名(2021年3月末時点)
入社前に資格取得。入社式からすぐに研修スタート。息つく暇はありません
採用されると入社までに証券外務員資格試験に合格しなければいけません。そして約1ヶ月の研修が始まります。社会人のマナーや電卓の扱い方、お金の数え方、基本的な金融知識習得のための座学があり、息つく暇も無いカリキュラムをこなします。
研修後、ほとんどの方が本支店へ配属されます。基本である窓口業務や後方事務の見習いとしてスタートします。研修で勉強したことは現場で役には立ちません。まずは言われたことを出来るようになることが肝心です。
窓口業務のエキスパートの様な年かさの先輩があなたの指導にあたることになります。ほとんどの場合、女性です。
お金を扱うので、正確かつ速やかに業務をこなすことを求められます。まずはここで躓く方が多いようです。先輩や直属の上司である課長との相性が悪いと更に激しいストレスにさらされることでしょう。今のご時世では考えられないようなハラスメントも経験するかもしれません。
やっとの思いで自宅に帰り着いてもスキルアップや資格取得のため勉強しなければなりません。幸い、支店は働き方改革のおかげで残業時間は減っています。しかし、業務量は減っていないのでその分仕事をためこむことになります。
給与は手取りで16万円程度。1年目の年収はボーナス込みで250万円未満です。
やっと慣れてくる2年目! 窓口業務を卒業して新たな業務へ
銀行はお金が余っている個人や会社から預金としてお金を集めて、お金が足りない個人や法人にお金を貸出します。いまでも貸出利息による収益が銀行の一番の収入源です。しかし、低金利時代の到来は、銀行の収益力を大きく低下させることになりました。
そこで銀行は、更なる貸出金の積み上げ、個人や会社の預金を投資へ、デジタル化支援や人材紹介サービス、M&Aなどのフィービジネスを強化する方向に動いています。また、省人化も進めており、一人ひとりに求められる役割も多様化しています。
ですので、2年目以降は法人営業や個人向け資産運用、個人向けローンのいずれかの担当者に任命されるでしょう。個人や法人のお客様へ様々な提案をし、バリバリ仕事をするイメージをお持ちかもしれません。しかし、それは生半可なものではありません。目標と呼ばれる様々なノルマがあなたにのし掛かってくるでしょう。支店長やそれぞれの業務担当課長は必死です。次々と新しい知識や事務を詰め込まれます。
個人向けの業務であれば、一日に何件も電話を行い、来店誘致や訪問アポ取り、セールスを行います。電話口でお金の話をしなければいけません。こちらはお客様の預金状況を知った上で連絡をしています。いきなり、「預金を投資に回しましょう」と言っても当然のように断られます。そこで、雑談力を駆使し、まずは会ってもらうよう交渉します。そのためには、様々な知識や雑学、電話口でどんな人物なのか察知する能力が必須です。そこは場数を踏むしかありません。お金を貸したい場合も同じです。とにかく、新聞やニュースのチェックは当然ながら、読書も必要でしょう。ここで、心が折れる方も多いです。
法人のお客様への営業は更に厳しいです。相手は会社の社長です。百戦錬磨の社長を相手に営業セールスを行うことを想像してください。個人のお客様へのセールスとは訳が違います。より専門的な金融の知識やその会社の業界知識、社長の趣味やお酒の好みまでしっかり頭に入れておかなければ相手にされません。他の金融機関に出し抜かれるでしょう。
上司から受けるプレッシャーも相当なものです。でも給与は相変わらず低いです。しかし、取り組み姿勢を評価されています。これが後々の昇進に大きな影響を与えます。如何にはやく役職が付くか。役職が付くと、給与がグンと上がります。若いときに頑張っていれば、後から給与として跳ね返ってくるわけです。
3年目以降の銀行員生活
同期のなかでも、仕事が出来るやつ・出来ないやつの差がでます。転職する人もでてきます。平凡な銀行員は特殊な技能や知識、資格は持っていませんので、転職するにしても営業職がほとんどです。
また、銀行員は約3年周期で転勤することになります。銀行から辞令があり、だいたい2週間くらいで、お客様に挨拶を済ませ、引き継ぎを行い、引っ越しの準備をします。最初の昇進も見えてきます。銀行によって異なりますが、はやければ5年目以降に昇進します。30歳手前で年収は600万前後になるでしょう。
はやい人は30歳前半で課長クラスに昇進します。年収1,000万円が見えてくるでしょう。しかし様々なストレスに耐え、パワーハラスメントをやり過ごし、ノルマをこなし、接待やゴルフ、帰宅後や休日に勉強する日々が続きます。
就職/転職おすすめ度としては、ストレス耐性がない場合はおすすめできません。
本社勤務を希望する
「もう、支店で数字に追われる生活は嫌だ」もしくは「本社で企画や経営に関わりたい」と思うこともあります。そこで、本部トレーニー(見習い)制度の利用や勤務先の希望を出すことで、チャンスが巡ってくることがあります。たとえばトレーニーとして立候補することが出来ます。また定期的に本社から様々な部署へトレーニー募集があります。
トレーニーに選ばれ、見込みがありと評価されると、そのまま本社勤務となることができます。本社勤務は支店と全く違います。お客様相手に培った営業力は役に立ちません。重要となるのは企画力や事務能力でもありません。それは大前提です。
ではなにか。政治力が必要です。如何に「偉い人」に覚えてもらえるか。自分のやりたいことを通すにも、上から気に入られているかどうかで天地の差があります。
本部にいる行員は基本的に「仕事が出来る」もしくは「支店勤務に向かない」のどちらかです。常に上からの要求に応え続けるプレッシャーの日々です。「使えない」と思われれば、支店に逆戻りです。
部署によっては専門的な知識やスキルが身につきます。ちなみに本社勤務の場合は残業時間という概念がありません。大半が裁量労働制での雇用契約となっています。つまり、どれだけ働いても自由です。
銀行業界への就職・転職
安定・高給取りのイメージですが、今後の業界変動で勝ち組と負け組に分かれるでしょう。
役職があがれば給与待遇は良いですが、常にストレスを抱える生活です。しかし、やりがいはあります。お客様に喜んでもらえる、自分の企画が銀行の取り組みとして採用されるなど、報われる瞬間はあるものです。要はやる気と根性です。
就職/転職おすすめ度は3です。強いストレスへの耐性がない場合はおすすめできません。
【参考】就職/転職おすすめ度とその目安
- 5…ほとんどの人にお勧めできる会社です。
- 4…多少のストレスは許容する必要があります。
- 3…強いストレスへの耐性がない場合はお勧めできません。
- 2…過酷な労働を愛する人以外にはお勧めできません。
- 1…すべての人にお勧めできません。