スメハラ(スメルハラスメント)とは、職場などにおいて、自覚、無自覚を問わず、体臭や口臭などのにおいで、周囲の人に不快な思いをさせ、迷惑をかける行為を意味します。
においを意味する英語の「smell(スメル)」と、嫌がらせや悩ますことを意味する英語の「harassment(ハラスメント)」を組み合わせた和製英語として、「smell harassment(スメルハラスメント)」という言葉は生まれました。省略して「スメハラ」と呼ばれています。
今回は、その主な原因と予防方法についてご紹介していきたいと思います。
スメハラは自覚が難しい
人間の感覚の中でも、嗅覚(きゅうかく)は特に適応性が高く、人は新しく出会ったにおいであっても、かぎ続けることで、すぐに慣れ、なにも感じなくなる傾向にあります。
そのため、常にかいでいる自分自身の体臭や口臭などに対して、人はとても鈍感なのが実情です。たとえ、かぎなれた自身のにおいに変化があったとしても、その変化後のにおいにもすぐに慣れてしまい、なにも感じなくなってしまいます。
マスクをした際に、自分の口臭に少し気になることがあっても、すぐに慣れて気にならなくなる経験をしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
周囲の人にとっては不快に感じるようなにおいでも、それを発している本人に自覚がないケースはめずらしくないのです。
また、人の発するにおいはデリケートな問題として認識されているため、他者が不快なにおいを漂わせていても、それを指摘することはひかえる傾向にあります。
自分で気づくことは難しい、他者から教えてもらうこともできない、他者から教えられるときには周囲の我慢は限界に達しておりほぼ取り返しがつかない…、スメハラはいかに早期に自覚することができるのかと、あらかじめ予防を行っておけるのかがなにより重要だと言えるでしょう。
スメハラを生む無臭社会
現代の無臭社会もスメハラを生む要因となっています。
とかく消臭、脱臭が叫ばれる昨今、人はにおいがない無臭の状態に慣れてしまい、他者の発するにおいに敏感になっているのです。
汗のにおいや加齢臭など、人間として普通に生きていれば当たり前に発するようなにおいであっても、昨今では対応が必要だと言われてしまっています。
我々は、常にかいでいる自分自身のにおいには鈍感でも、たまにかぐ他者のにおいには敏感になってしまう、厳しい世界で生きているのです。
スメハラの主な原因と予防方法
ここからは、スメハラの主な原因と予防方法についてご紹介していきたいと思います。
スメハラの主な原因としては、以下のものが挙げられます。
- 不衛生な生活
- 食事内容や嗜好品
- 汗や靴のむれ
- ストレスや睡眠不足
- 病気や体調不良
- 加齢
- 体臭や口臭を打ち消すための香りづけ
それぞれについて、詳しく見ていきます。
1. 不衛生な生活
風呂に入らない、歯をみがかない、服を洗濯しないなど、文明人として当たり前にしてほしい部分がおろそかになっている社会人は意外と存在しています。
予防方法は簡単で、毎日風呂に入り各部をきちんと洗う、毎食後に歯をみがく、毎日服を洗濯することです。
口臭が気になる際は、ただ単に歯をみがくだけではなく、舌をみがくことで改善されることもあります。ただし、舌をみがく際は、やさしく、やわらかい素材のものでみがくことをお勧めします。
服を洗濯する際は、生乾きに注意しましょう。
もし、今まで当たり前にできていたのに、突然これらのことができなくなってしまった際には、うつ病の前兆である場合もあります。周りの人も、顔をしかめるだけではなく、その人の心配をしてあげる必要があります。
2. 食事内容や嗜好品
ニンニクに代表されるにおいの強い食べ物や、コーヒー、お酒、たばこなどは、口臭や体臭の原因となります。
また、肉や脂質が多く、野菜が少ない食生活なども、腸内環境の悪化などをまねき、口臭や体臭の原因となります。
自分の口から入れるものは、そのまま自分の口のにおいになるくらいの覚悟を持ち、日々の食べ物が自分の体のにおいそのものを作り出すと意識して生きるくらいがちょうどよいのではないでしょうか。
なお、においが少ないことからも昨今流行っている電子たばこですが、非喫煙者からするとその特有のにおいがやはり苦手だという声があります。今の時代、たばこを続ける利点はそう多くありません。禁煙をお勧めします。
日々の習慣が、その人のにおいと好感度を作り出しています。
3. 汗や靴のむれ
人は生きている以上、汗をかきます。それは防ぎようがありません。
夏場だけではなく、体を動かす仕事が予想される際などには、各種デオドラント、制汗剤でのにおい予防を心がけることをお勧めします。
また、むれた足のにおいにも注意が必要です。毎日風呂で足を丁寧に洗う、足の爪を清潔に保つ、替えの靴下を用意する、消臭タイプの中敷きを使う、ひそかに靴をぬいで換気をするなど、各種対策を行う必要があります。
中には、オフィスでは靴をぬいで、スリッパやサンダルで過ごすようにしている人もいるようです。しかし、それが規程で禁止されている会社もあるのが実情です。
4. ストレスや睡眠不足
ストレスを感じた際に人が発するストレス臭にも注目が集まっています。
ストレスを感じないように仕事をコントロールするのが一番の対策になるのですが、それができれば誰も苦労はしません。
仕事において、ストレスは避けがたいものです。緊張状態になると自分は臭くなるんだとあらかじめ覚悟し、各種デオドラントで対策しておくしかありません。
また、過度のストレスで、だ液の分泌が少なくなることにより、口内の細菌が増殖し、口臭の原因となることがあります。口内が乾く場合は、ガムをかむなど、だ液の分泌を促すことをお勧めします。
同様に、睡眠不足もだ液の分泌を減少させるので、口臭の原因となります。注意が必要です。
5. 病気や体調不良
病気や体調不良により、内臓の働きがおとろえ、代謝が落ちることにより、口臭や体臭につながる可能性があります。
食事や生活習慣に気をつかい、健康を維持することがなによりの予防になります。
また、女性の場合は、月経時や妊娠時などの女性ホルモンが変調するタイミングで、口内環境にも変化が起こり、各種細菌が増殖するなどして、口臭が強くなることがあります。ホルモンバランスが変化するタイミングにおいては、オーラルケアを意識することをお勧めします。
6. 加齢
中高年になると、加齢臭が気になることと思います。これも生きている上では仕方がないにおいなのですが、世間の目は厳しいと言わざるをえません。
多くの場合、男性の加齢臭の方が話題になりますが、女性にも加齢臭があることには注意が必要です。
加齢臭は、男女ともに、主に40代以降で目立つようになります。
場合によっては、各種デオドラントでの対策が必要になるかもしれませんが、ここまでご紹介してきたような普段の食生活やストレスへの注意で、軽減できると言われています。
7. 体臭や口臭を打ち消すための香りづけ
体臭や口臭を打ち消すために、香水や消臭スプレーなどを使う人もいるかもしれません。
しかし、不快なにおいを別のにおいで上書きしようとすることで、悪臭とよい香りが混ざりあった、あらたな悪臭を生み出してしまう恐れがあります。
また、いくらよい香りといっても、それが不自然に強い香りであれば、不快と感じる人も多くなるものです。
香水、整髪料、柔軟剤、消臭スプレーなどのよい香りも、スメハラの原因となるということを認識し、においがしないタイプか、さりげない香りのものを使用するのが無難だと言えるでしょう。
ときには寛容さも大切
スメハラは、加害側に非がないことも多い、悲しいハラスメントです。
生き物として仕方がない、誰もが加害側になる可能性のあるものについては、周りが寛容になることも大切だと言えるのではないでしょうか。