出世したくないときの断り方 - 人事発令や内示が行われる前に

断るビジネスパーソン

「出世は、給与は多少上がるかもしれないけど、仕事はたいへんになりそうだし、できればしたくない」という人も多いのではないでしょうか。

実際に、各種アンケートの結果を見ても、今や出世をしたいと答える人の方が少数派となっています。

しかし、出世したくないという個人の心情を、会社組織の人事発令にどこまで反映させられるかは、疑問の残るところです。

そこで今回は、そもそも出世は断れるのかという点から、出世したくない旨を上司に伝える際のおすすめの方法まで、ご紹介していければと思います。

目次

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なお、出世を嫌がる部下についてお悩みの管理職の方は、以下の記事をご参照ください。

出世を嫌がる部下の説得方法 - 管理職のメリットを言えますか?
優秀な若手を管理職に昇進させたいのに、当の本人が乗り気ではなく、お困りの管理職の方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、若者が出世を嫌がる理由と、出世を嫌がる部下の説得方法について、ご紹介できればと思います。

そもそも出世は断れるのか

まず、そもそも出世は断れるのかという点について、見ていきたいと思います。

結論から申し上げると、「人事発令やその内示が出された時点で、正当な理由がないかぎりは断れない」というのが基本的な従業員の立場です。

ただし、人事発令や内示ではなく、出世を打診された段階であれば、まだ出世を拒否する意向を伝えることは可能です。その意向を受け入れてもらえるかどうかは、また別の問題であり、伝え方次第となりますが、そちらは記事の後半でご紹介できればと思います。

人事発令と内示と打診の違い

人事発令とは、人事異動の辞令が公に発表されることを意味し、会社としての正式な決定がすでに下されてしまっている以上、正当な理由がないかぎり覆すことはできません。

内示は、公に発表こそされてはいないものの、会社として正式な決定が済んだ状態の人事異動の辞令を本人に個別に伝えるものであり、こちらも正当な理由がないかぎりは覆すことができません。

通常、断れる可能性が残っているのは、打診のときまでです。

打診とは、会社としてまだ正式な決定がなされていない人事異動の方針について、本人の意向を事前に確かめる段階となります。往々にして、その方針で進めることを本人に承諾してもらうための説得の場となりますが、拒否する意向を伝えること自体は可能です。

本人の望まぬ人事異動により退職されるリスクを考え、正式な決定前に打診を行うのが一般的ではありますが、一方で、打診を行わずにいきなり人事発令や内示が行われることもあります。

出世を望まないのであれば、あるかどうかわからない打診のときを待つのではなく、定期的に行われる評価面談などの上司との面談の際に、自身の考えているキャリアプランとして出世したくない旨を伝えておくことをおすすめします。

出世を断れる正当な理由とは

人事発令や内示の後であっても出世を断れる正当な理由とは、出世に伴う業務負荷の増大とそのストレスに持病の関係で耐えられそうにないといった事情や、介護などの家庭の事情で柔軟な働き方ができず、役割を全うできそうにないといったものが挙げられます。

また、会社との間の労働契約や就業規則の内容に反する転勤や職種の変更を伴うなど、会社側がルール違反を犯している場合も、出世を断れる正当な理由となります。

いずれも、出世の辞令により従業員側に無視することができない多大な不利益が発生する場合となっており、「管理職とかつらそうだからやりたくない」といった理由だけでは、発令された出世の辞令を断ることはできません。

人事発令や内示の後で、正当な理由を用いて出世を断るのは、あまり一般的なことではないと言えるでしょう。

出世したくない理由を整理しよう

上司との面談時などに、出世をしたくない意向を伝えるとしても、その理由をきちんと伝えられなければ、まともに取り合ってはもらえません。

まずは、自分がなぜ出世をしたくないのかを自問自答し、理由を以下のように整理してまとめてみることをおすすめします。

出世したくない理由の整理例

  • キャリアプランとして、マネージャーではなく、プレイヤーとしてスペシャリストを目指したいから
  • 上司の普段の働きぶりを見ていて、ワークライフバランスが仕事に偏重する危惧があり、自身の人生設計に合わないから
  • 会社が管理監督者を残業代の必要のない便利な労働力として酷使している実態があるから
  • 会社の将来に期待をしておらず、管理監督者として経営と一体の存在にはなりたくないから

また、部下から出世したくない旨を告げられた上司が、出世することのメリットを語り、説得を試みようとすることがありますので、それに対するカウンターも用意しておきましょう。

例えば、「出世することで給与がアップする」といったメリットの提示に対しては、自身の価値観として、前述の出世したくない理由のデメリットの方が上回る旨の説明ができるようにしておくとよいでしょう。

出世したくない意向の上司への伝え方

出世したくない理由の整理ができたら、実際に出世したくない意向をどのように上司に伝えるかを考えていきましょう。

タイミングは、前述のとおり、人事発令や内示が行われる前、打診や定期的に行われる上司との面談などの際に伝えておくことをおすすめします。

伝える際のポイントとしては以下のとおりです。

  • 部下の言葉にあまり興味を持ってくれない上司も多いので、面談などの機会があるたびに、自身のキャリアプランとして何度でも伝えましょう
  • 「出世したくない」という価値観はわりと新しいもののため、古い世界観に生きる上司には理解が難しいという前提で根気よく伝えるようにしましょう
  • 出世はできればしたくないレベルなのか、出世するくらいなら退職を検討するレベルなのかなど、自身の本気度は事前にはっきりとさせておき、伝えましょう

キャリアプランも多様性の時代です。自身の希望はきちんと言語化して、機会を見つけて会社側に伝えるようにしましょう。