自社で全ての業務を完結できる会社はそう多くはありません。特に、プロモーション、ブランディングなどのマーケティングの分野では、多くの会社が電通を始めとする広告代理店に協力を依頼することになるのではないでしょうか。
しかし、多くの会社のマーケティング担当者は、広告代理店に仕事を依頼する際の注意点を知らないために、期待していた成果をあげられなかったり、予算を無駄に使ったりしてしまっています。
今回は、マーケティング担当者としての役割を全うするために必要な、広告代理店へ業務を外部委託する際の注意点についてご紹介したいと思います。
マーケティング担当者が抱えがちな問題
多くのマーケティング担当者は、以下の問題を抱えています。
- 実現したい目的、目標が明確になっていない「戦略性の欠如」
- 広告代理店の提案や制作物の良し悪しがわからない「専門性の欠如」
- 広告代理店を粗雑に扱ってしまう「人間性の欠如」
これら3つの「欠如」が、様々な判断を誤らせ、施策が成果をあげられず、ただただ予算を浪費する結果へとつながってしまいます。
施策を失敗に終わらせないためにはどうすればよいのか。3つの「欠如」について詳しく見ていきたいと思います。
戦略性の欠如
広告代理店との仕事の進行に悩むマーケティング担当者から、「広告代理店からの提案がいまいちピンとこない」、「広告代理店からの提案を実施したとして、具体的に自社にどのようなメリットがあるのかイメージがわかない」などの声を聞くことがあります。
そのような場合、広告代理店がきちんとした提案を行うのに必要な情報を、マーケティング担当者が渡せておらず、広告代理店がどのような提案をして良いのか迷子になっている可能性があります。
マーケティング担当者は施策を始めるにあたって、広告代理店にきちんとした提案を行ってもらうために、「ターゲットユーザー」と「KGIとKPI」を伝えておく必要があります。
ターゲットユーザーとは
「まずはインパクトだ!とりあえず新聞に広告を出そう!」、「時代はWeb動画だからYouTubeに広告を出そう!」など、戦略性もなしに印象と勢いだけでマーケティング費用を浪費する会社は後を絶ちません。
その広告は、誰に向けて、どのような効果を期待して出しているのでしょうか。
戦略的なマーケティング活動に必要な基本要素は、「セグメンテーション」、「ターゲティング」、「ポジショニング」の3つです。
市場や顧客を、性質やニーズによって分類し、グループ化することを意味します。マーケティング活動において、ターゲティングやポジショニングを行うために活用されます。
市場や顧客のセグメンテーションを行った後に、そのセグメントをもとにして、マーケティング活動の対象(ターゲット)を定めることを意味します。
ターゲット顧客に対し、自社の商品やサービスが、競合他社のものとは異なる魅力や価値があることを認知させ、顧客の頭の中に、独自の立ち位置を築くための活動を意味します。
訴求したい商品やサービスについて、これらのうち「セグメンテーション」と「ターゲティング」を行い、ターゲットとするユーザーの年齢、性別、趣味、年収、家族構成、生活様式など、様々な属性を具体化する必要があります。
ターゲットユーザーが定まって初めて、広告代理店は、どのテレビ番組、新聞、雑誌、Webサイトに広告を出稿すれば、ターゲットとしているユーザーに多く見てもらえるのか、より効果的なのか、具体的な提案が行えるようになるのです。
KGIとKPIとは
ターゲットユーザーが決まったとして、そのターゲットユーザーのうち、何人をいつまでに顧客とすれば、事業は成功と言えるのでしょうか。
黒字化することが目標であるのならば、いつまでに黒字化すれば良いのでしょうか。きちんと最終の数値目標と、途中途中でクリアしておくべき数値目標を定めておく必要があります。
その際に使われる指標が、KGIとKPIになります。
「重要目標達成指標」と訳されます。ビジネスにおける最終的な目標を、定量的に表した指標を意味します。英語の「Key Goal Indicator」を省略した言葉です。
「重要業績評価指標」と訳されます。ビジネスにおける最終的な目標であるKGIを達成する過程の、中間目標を定量的に表した指標を意味します。英語の「Key Performance Indicator」を省略した言葉です。
詳しくは、以下の記事でもご紹介しています。ご参照いただければ幸いです。
KGIとKPIが定まって初めて、広告代理店は、どの時期にどのくらいの予算を投下すればその数値目標を達成できるのか、具体的な提案が行えるようになります。
ターゲットユーザーやKGIとKPIを自社内で考えたり、決めたりする知見がない会社も多いことでしょう。その場合は、広告代理店に素直にそのことを伝え、調査、分析を共に行い、きちんと策定してから施策を戦略的にスタートさせましょう。
専門性の欠如
マーケティング担当者が戦略性を持って広告代理店と相対し、広告代理店から的確な提案があがってきた場合、今度はその提案が本当に的確なのか、提示された見積もり金額が本当に適正なのか、担当者が判断しなければなりません。
自社にマーケティングについての専門的な知見がないことから、広告代理店に外部委託をしているとしても、施策において最終的な決断を下すのは社内のマーケティング担当者です。担当者には、広告代理店が提示してきたあらゆることの良し悪しを判断する程度の専門性は必要となるのです。
もし、マーケティング担当者が勉強を怠り、全て広告代理店の言いなりに進めた場合、以下のリスクがあることを肝に銘じる必要があります。
- 自社の利益のみを追求しようとする広告代理店の食い物にされ、無駄な予算を無限に使わされる
- 商品やサービス、業界の知識が足りていない広告代理店の提案内容をそのまま延々と採用し、施策が失敗し続ける
- 電通クラスの広告代理店であっても担当者やチームによって能力はピンキリであり、無能な担当に当たった場合、最低でも施策が崩壊、最悪の場合、その手法が問題視され、炎上する
書籍やWeb上の記事からは基本的な知識が手に入ることでしょう。様々な広告代理店から話を聞くことで、流行などの生きた情報が手に入ることでしょう。
マーケティング担当者は、自社内におけるスペシャリストとして、業務に責任を持てる程度の専門的な知見を身につけておくことをお勧めします。
人間性の欠如
マーケティング担当者が戦略性と専門性を持って広告代理店と相対し、すばらしい施策案を作れたとしても、最終的に失敗に終わることがあります。
それは、マーケティング担当者に人間性が欠如していた場合です。
広告代理店担当者も人間です。雑に扱ってきたり、高圧的に指示してきたり、無理難題を頻繁にしてきたりする客の仕事に対して、常に100%のパフォーマンスが発揮できるでしょうか。
以下のような場合に、外部委託業者に対して態度が悪くなる担当者が現れます。
- 依頼主として逆らえない外部委託業者相手にマウントを取ることが気持ち良くて仕方がない
- 戦略性と専門性を持った自分に自信を持ち、専門家である広告代理店の担当者にマウントを取ってさらに自信を深めたい
- 専門家である広告代理店の担当者にマウントを取る様を自社内で見せつけ、社内での権威を高めたい
- 外部委託業者は締めつけて、追い込むことでパフォーマンスが向上するという勘違いをしている
- 外部委託業者に対して、依頼主として偉そうにするべきという会社の風土や上司の意向がある
広告代理店の担当者が本当に無能な場合などは、言うべきことを言うべきですが、外部委託業者を無駄に威圧してもパフォーマンスが上がることは決してありません。
マーケティング担当者は、広告代理店を仕事のパートナー、仲間として認識し、共に気持ち良く仕事に励むことをお勧めします。
広告代理店に仕事を依頼する際の注意点
ここまでご紹介してきた注意点をまとめると、以下の3点になります。
- ターゲットユーザーとKGIとKPIをしっかり決めてから戦略的に施策を始める
- 広告代理店が提示してきたあらゆることの良し悪しを判断できる専門性を身につけておく
- 広告代理店を仕事のパートナー、仲間として認識し、共に気持ち良く仕事に励む
会社にとって、広告代理店への依頼は、決して安くない買い物です。担当者として責めを負わないためにも、広告代理店と上手に付き合い、利用し、成果をあげることを目指しましょう。