上司が部下に言ってはいけない一言5選 - 部下のやる気を粉砕

説明するビジネスパーソン

日々の上司のなにげない一言が、部下のやる気を削いでいます。

今回は、上司が部下に対して言ってしまいがちな5つの言葉をピックアップして、その発言がなぜいけないのか、本当はどう接するべきなのかについて、ご紹介できればと思います。

上司が部下に言ってはいけない一言5選

今回ご紹介する上司の言ってはいけない一言は以下の5つです。それぞれの言葉をクリックすることで、その言葉について解説している場所まで移動することができます。

「なんでこんなこともできないの」

自分なら簡単にできることを、部下ができなかったり、手際が悪かったりした際に、上司は部下に対して「なんでこんなこともできないの」などと言ってしまいがちです。

しかし、部下を指導するという上司の役割を考えれば、部下がうまく仕事ができていないということは、上司の教え方、指導方法が悪いと考えるべきです。部下に責任転嫁をする前に、自身の指導方法を見直す必要があるでしょう。

部下も自分なりに悩みながら取り組んでいるのにそんなことを言われては、委縮してしまい、さらにうまくできなくなってしまう可能性があります。精神的なストレスも受けるでしょうから、パワハラと言われても仕方がありません。

もし、部下に対して、「なんでこんなこともできないの」と心の中で思ったら、まずは口には出さずに、「誰だって最初からうまくできるわけではない」、「できるようになる早さは人によって違う」と考え、心を落ち着けましょう。

その上で、なぜできないのかを部下と話し合い、一緒に原因を考え、解決方法を前向きに模索するようにしましょう。

話し合う際には、「部下は自分と同じではない」、「部下ごとに最適な指導方法は異なる」といったことを念頭に置いて、一方的に自分の考えを押し付ける指導にならないように気をつけることをお勧めします。

なお、パワハラにならない正しい部下の指導の仕方については、以下の記事でご紹介しています。ご参考にしていただければ幸いです。

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「勝手なことはするな」

自分が指示したつもりのないことを部下が行っていた際に、上司は部下に対して「勝手なことはするな」などと言ってしまいがちです。

上司は部下に対しての管理責任があり、部下の行動で問題が起こった場合には、上司の責任となることから、上司が部下の行動にセンシティブになる気持ちは理解できるものです。

しかし、部下の勝手な行動は、上司の指示に不明瞭な部分があったせいだと考えるべきです。上司として、部下にどこからどこまでの裁量権を与えたのか、部下が遂行すべき責任の範囲をわかりやすく伝えることができていなかったのではないかと、自身の指示の仕方を省みる必要があるでしょう。

会社では一般的に、指示待ち人間にならず、自主的に動くことが美徳だとされています。上司からしたら勝手な行動に見えても、部下からしたら指示された範囲内で前向きな気持ちで自主的に動こうと考えた結果なのかもしれません。

そんな中、いきなり「勝手なことはするな」と全否定されては、やる気をくじかれてしまい、今後の自主的な動きにも悪影響が出てしまうかもしれません。

まずは、その部下がどのように考えてそのような行動をとったのかをきちんと聞き、上司である自分としてはどこまでの範囲の業務を行ってほしかったのかを改めて伝えることをお勧めします。

人間であるかぎり、認識の齟齬は必ず発生します。齟齬が発生したら、頭ごなしに否定するのではなく、そのつど認識をすり合わせていくことが重要だと言えるでしょう。

なお、上司がどこまで細かく指示をする必要があるのかについては、以下の記事で触れています。ご参考にしていただければ幸いです。

自主的に動かない部下と指示しない上司…どっちが悪い? 指示待ち是非
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「もういい、あとは私がやる」

部下に指示していた仕事が予定どおりに進んでいなかった際に、上司は部下に対して「もういい、あとは私がやる」などと言って、仕事を取り上げてしまいがちです。

しかし、上司から部下への業務指示は、純粋な業務の進行の他に、業務遂行を通じて部下に仕事を覚えさせる、部下を成長させることを目的としているはずです。

一度部下に任せた仕事を、「自分がやった方が早いし、ちゃんとしたものができあがる」などといった理由で途中で取り上げていては、目的の半分しか達成できておらず、長い目で見たチーム全体のパフォーマンスの向上にも結びつきません。マネージャーとしての役割を放棄していると見られても仕方がないでしょう。

人の成長には、自分の力で最後までやり遂げたという成功体験が必要不可欠です。仕事を途中で取り上げられた部下は、どのようにしたら業務をきちんと遂行できたのかもわからないままになってしまいます。

大切なことは、業務を指示する際には、部下がうまく進められない場合のことも想定した余裕を持ったスケジュールを確保しておくことと、部下がうまく進められていない場合に、仕事を取り上げるのではなく、部下の横について指導し、部下自身の手でその仕事を成功に導くことだと言えるでしょう。

なお、上手な部下への仕事の渡し方については、以下の記事でご紹介しています。ご参考にしていただければ幸いです。

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「帰るの早いね」「もう帰るのか」

部下が仕事を終えて退勤する際に、「帰るの早いね」、「もう帰るのか」などととがめるように言う上司がいます。

もし、上司にとがめるような気持ちがなくても、そのようなことを言われた部下は、「早く帰っちゃいけないのかな…」、「うわ、帰りづら…」などと思うことでしょう。

そのような上司の発言は、部下の自分の仕事を早く仕上げようという意欲を減退させかねません。上司が「帰るの早いね」、「もう帰るのか」などと言わなくなるような時間までぐだぐだと残業する悪しき習慣がつきかねず、労働生産性の悪化につながる可能性があります。

そういった上司は、残業、長時間労働が美徳だという古い価値観を払拭することができていないために、そのような発言が口をついて出てしまうのでしょう。今の時代に合わせた価値観のアップデートが必要だと言えます。

なお、残業に対する価値観の変容については、以下の記事でご紹介しています。ご参考にしていただければ幸いです。

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「しょうがない」「仕方がない」

部下から相談を受けた上司が、その事案の解決を初めから無理だとあきらめた際に、「それはしょうがないことなんだ」、「それは仕方がないことなんだ」などの言葉を使うことがあります。

主に、会社の前例、ルール、予算、リソースなどを理由として、部下にあきらめて受け入れるようにさとす場面で使われます。

しかし、管理職の仕事は、一般社員では解決することができない、会社の前例、ルール、予算、リソースなどの問題に相対することです。一般社員にできない会社の枠組みの問題に立ち向かうことこそ、管理職の使命です。

基本的に、管理職は「しょうがない」、「仕方がない」といった言葉を使うべきではありません。せめて、「改善できるように努力する」、「上に伝える」、「検討する」と部下に伝えるべきです。そして、どうしても難しい場合には、部下に対して、なぜ難しいのかを論理的にきちんと伝えるべきです。

上司から常に「そんなことできるわけないよ」といった反応が返ってくれば、部下もいつしか何かとあきらめがちな人材となってしまうことでしょう。

上司の発言の一つひとつが、部下のモチベーションに影響を与えます。上司は、日頃からそのことを意識して、マネジメントに勤しむ必要があるでしょう。